夜空に棲む

南雲虎之助

夜空に棲む

 夜空を見上げてはいけない。

 星を見つめてはいけない。


 光り輝く星々は、こちらを爛々と見つめている。

 見ている。

 見ている。


 見られているんだ。


 遥か昔、黒い膜に浮かぶ光を人々は星と呼んだ。

 しかしそれは目だ。

 夜、野生動物の目が怪しく光り輝くように。

 あの広く大きな夜空にあるのは、夥しい数の目なのだ。


 恐ろしいな。

 恐ろしいだろう。


 我々は、宇宙に棲む怪物たちに監視されている。

 彼らは待っているんだ。

 この地球というものが壊れる瞬間を。


 それが永い時を生きる彼らの、最高の暇潰しなんだ。


 だから、夜空を見上げてはいけない。

 星を見つめてはいけない。


 見つかってしまうから。

 悟られてしまうから。


 こちらの存在に気が付いている、そう思われてしまった時点で終わりなのだ。


 彼らは地球にもいる。

 流れ星というものがあるだろう。

 あれは彼らが外から地球に飛来してきた証拠だ。


 彼らの存在に気付いた者は皆、いなくなってしまった。

 跡形もなく、綺麗さっぱり。

 だから、君達だけはどうか。



 すまないね


 私はとうに手遅れのようだから


 星に願うなよ

 食われてしまうぞ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夜空に棲む 南雲虎之助 @Nagumo_Tora_62

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ