白く、柔らかく、ひんやりと。
なかばの
1。予報、午後から雪かも…?
××××××××××××××××××××××××××××
「俺、おまえのこと、好きだ」
月が出ていない真っ暗な夜に。
ふんわりふんわりと降っていた雪は、いつしかやんで…。
あいつの言葉だけが雪の羽にのってふわりわりと積もっていく。
シーンという音が、まるでそこにあるような空間で、
あたりは昼間とは違う顔付きで、夜の10時に同級生と二人きりで、公園にいることなんか、中学生の私にはあるはずない出来事。いつもはあれほど賑やかなこの公園も、周囲に立つ樹木が濃い影のように見えて…少し怖い。雪が降っているせいか、風がない。
この世界で息をしているのが2人だけのような、そんな孤独感。
私はどうして、栄と二人で、夜の公園にいるんだろう?
×××××××××××××××××××××××××××
「マジか…」
スマホを見つめながらため息をつく私。
「なになに?どしたの
本日、終業式。
1時間ほど登校した後、放課になる。終業式を終えた後、通知表と冬休みの宿題、注意事項等のプリントを渡される。その後は3者面談が始まる。2~3日かけて行われるが、私は今日ではない。顧問が面談で不在ためこの時期は部活動も停止となり、みんなが下校する。
「うーん…、なんか雪が降るっぽいよ」
今日は夕方から塾に行く。
今は中学2年生。来年の今頃は高校受験が待ち受けていて、大人たち曰く、「今が一番大事な時」だそう…。
確かに、なんだかとても忙しい感じが否めない。
勉強では、今、この時期の成績が大事なんだと毎日のように担任が口にする。去年も「最初が肝心」だと言って、「大事な時期」だと強調された記憶がある。中学で入部した演劇部では先輩たちの杞憂を見守りながら不安になった。今、2年生になって、後輩ができて、来年には先輩とする人たちがいないという現実に戸惑ってもいる。
そう…こころが忙しい…。
「ええ!」
「…びっくりした。何、
突然の感嘆表現にドキッとする私。そんな私の反応など、どこ吹く風の比呂佳。
「雪?雪って言った?」
「言った言った。雪、降るらしい」
きゅるんとした瞳で私を見つめる比呂佳。
「な、に…」
「ねえ、積もるかな?」
「え?どう…かな?」
「え、積もってほしいでしょ?」
「え?いや…それはちょっと…」
「え、嬉しくない?」
「えー…、嬉しくないよ。だって、寒いし…」
「えー…?真織~、ほんとに中2?」
「え、失礼しちゃう」
比呂佳はにっと笑うと「ごめんごめん」といった。
「だってさ、一面真っ白になるんだよ?浄化された気がしない?綺麗じゃない?」
比呂佳はとてもかわいい。ふんわりとした髪もにっこり笑った八重歯もどきっとする。話し方も柔らかい。マスコットのような存在の彼女は、クラスの中でも“可愛いあの子”だ。
私はというと…、まあ、少々、身長が伸び気味で、「でかいな…」と言われてしまう170㎝。中学2年生では大きめなのだろうなという自覚あり。制服を購入する時に店員さんが「あっ…少々お待ちください」といって随分帰って来なかった記憶がある。その場に試着用のサイズがなく、カタログを見て、だいたいで注文した。袖を通すことなく店を後にした時、なんだか複雑な思いにとらわれたものだ。
比呂佳が“綺麗”と言えば、きれいなのだろうけれど…。
「うーん…、そうかもしれないけどさ、私、今日、塾があるから、雪が降ると帰りがちょっと…ね」
そう、雪が嫌いってわけではないのだけれど、現実的に考えるとちょっと面倒ではあるのだ。今日は4時ごろから塾へ行く。帰る頃に雪が降るとなると防寒対策+雪対策をしていかなくてはいけない。
私の返事は比呂佳にとっては理解しがたかったらしい。
「ええ…、雪の降る中、帰ってくるのって楽しそうじゃない」
「ええ?そう?寒くて、靴は濡れちゃって、テンション下がるよ?」
「もう、真織ってばネガティブ」
「比呂佳はポジティブね」
二人でナゲットを頬張る。
比呂佳のように“雪”を見ると、確かにファンタジックで綺麗かもしれない。でも、どうしても“雪”には冷たいイメージしかわかない。
私は、雲一つない空を見上げた。
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