おれのサーキッチョ

しょもぺ

第1話 『ポケバイって今売ってるの?……の巻き』

ショ太がポケバイにのったのは

このレースが最後だった。


あれから18年後。

モータースポーツ業界は激変し、

そして、それは、日本経済までも変わってしまった……


「ハァ…ハァ…

つらいよ、重いよ。なんでこんな物を引きづらないといけないんだ。」


『風巻ショ太 30歳』

小学生時代はポケバイのレースでトップを君臨していた彼だったが、いまではその影もなく、重労働に勤しんでいるのだった。


「ハァハァ……まったく、このアタッシュケースには何が入っているんだよ?」


愚痴を言うショ太だったが、それは、以前、たったひとりでレースを行っていた

『屁室了(へむろりょう)』と自分を重ね、懐かしい気持ちになっていたのかもしれない。しかし、その中身を知ることで、彼の人生は大きく揺れていく事に、彼はまだ知らない。


「石森くん…この荷物の中身って…」

「は? ウッセーなショ太。テメェは黙って言う事聞いてりゃいいんだよ! このウジ虫が!」


小学校の同級生の石森くんのいう通りだ。僕は、ポケバイしか取り柄のないダメ人間なんだ。いかに早く走ろうが、それが世の中の何の為になる? 

いやならない。全くならないのだ。


それに気付いてしまったこの世界にボクの居場所はない。

早く走る、相手をぬく事に、何の意味があるのだろうか?


すべてが無意味で、すべてが無気力だ。

神様もない、仏もない、理想もない、気力もない。

ただ、だらしなく生きるだけ。走らずに、歩かずに、そっと歩を進めるでもない。

停滞した世に、自分自身を浸しておくだけの存在。それが今の自分なのだ。


「ヤベェ! ショ太逃げるぞ!」

突然の石森くんの叫び声に反応するように、無意識に僕は逃げ出してしまった。

まるで人生を逃げ出すかの如く。


警察官に捕獲されてしまったのは数十分後だった。

そう、僕の行っていた『闇バイト』は、アタッシュケースに入れた死体を運ぶ仕事だったのだ。


それから3年の月日が過ぎた。


懲役刑を終えた僕は、刑務所内で、とんでもない人生のライバルに出会うことになる。


はたして、ショ太のライバルとは?


そして、ポケバイへの執念はよみがえるのだろうか?


次回、おれのサーキッチョにご期待下さい!

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