第27話 魔王

 実は私はこの世界に2度来ている。1度目は1500年前。その時は目的を達成する事ができず敗走し、力の大半を失ってしまった。……そう。目の前の男こそが神である私を追い詰めた張本人であり、この世界の魔王……ディアボロス。

 このタイミングで私をここに呼び寄せたという事は……。そういう事でしょう。……まあいいか!相手も1500年前の戦いで力の大半を失ったという事は同じ。オルゴールももう少し聞きたいですしね!


「まあ何だ……。まずはティータイムと行こうじゃないか。ゆっくりと話をしよう」


「わっかりました〜!」


 私は案内されて椅子に座る。ディアボロスも私に向き合う様に座った。


「今日は蜂蜜入りの紅茶を作ってみたんだ。お口に合うかな?」


 トクトクと音を立て、彼はカップに紅茶を入れる。そして私へと手渡した。



「さぁどうぞ。大丈夫だ。毒とかは入っていない」


 彼の言葉を信用し、遠慮なく私は紅茶を頂いた。もし毒入りでも効果は消せるし。まあそれ以前に彼は毒殺なんてやり方は……やらない。確信できる。

 私は紅茶を飲もうとした。しかし……。


「アッツ!流石に熱すぎますー!」


 猫舌なのが災いして、火傷してしまった。もう少しゆっくり飲むべきだった。


「フッ……ププ……ハハハハハハ!」


 そんな私の様子を見て、彼は笑う。


「ちょっとー!笑わないでください!」


 女神にして火傷で笑われるなんて流石にちょっと恥ずかしい。私はつい顔を隠してしまった。


「まあそんなに焦るな。ゆっくり飲めばいいさ」


 そうして暫くの間紅茶を飲みながら会話を楽しんだ。内容としては昨日のご飯の事だったり、最近面白かった事だったりそんな普通の会話だった。そうしてカップの中が無くなった時,彼は次なる話題を出す。


「所でこの世界に来たという事は……また初めたのか?神様作りごっこ」


「そうですー!」


「よく飽きずにするもんだ。神になった者の末路がどうなるか一番良く解っている癖して……」


「ウフフ……」


 ……そろそろですか。準備しておくに越した事は無いですねー。


「そう言えば最近聞いた話なんだが……一ヶ月前位にある森が焼き払われたらしくてな。そこには俺の娘の獣人がいるんだ。名はルミアという可愛い奴なんだ」


「え――!娘が出来たんですか?おめでとう御座います!」


 私はわざとらしくリアクションを取る。


「だが……その事件から消息不明になってしまってな。だからどうなっているのかすぐに調査をした。どうやら死んでしまったらしい。今一生懸命に犯人を捜しているんだが知らないか?」


 その瞬間、一気に空気が一変した。

 ……多分知ってますねこれ。でももう少し遊ぼっと。



「さぁ……私には全然わっかりませんけどー?」


 その言葉を皮切りに楽しいティータイムは終わりを迎えた。カップが割れる音が開戦の狼煙となり、彼の大剣と私のチェンソーが激しい火花を放つ。


「……では本命と行くか」


「そうですね!」


 


 


 


 


 


 


 


 


 

 

 

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