第2話 全能の書


「オラ、此処で降りな!」


 僕は南の果て、見習い冒険者が旅立っていく所で有名のナーシャ村の近くの草原で馬車を降ろされた。


「うーん……ここからどうすれば良いんだろう?あいつらの元に戻るには此処から歩きで8日は掛かるぞ……。しかもこの世界にはワープ魔法なんかないし……」


 幸いにもナーシャ村付近では低級モンスターしかいないから殺られる心配はない。一番強いモンスターでもレベル5のトリンプルスライム程度だ。補助役の僕でもレベル10あるから直ぐには倒せる。ただ……あいつらの所に戻るのに相当の時間がかかる。


「あーあ……復讐してやるとか思ったけど案外しんどいなぁ〜。なんか楽になる方法とか無いかな〜、あるわけ無いか〜」


 そう言っていた時、空が暗くなり光の柱が突然現れた。そして、僕の元に年齢が7歳くらいの少女が空から落ちてきた。


「ああ……なんて可哀想なアスタ様……。でももう大丈夫ですよ――!女神様であるルビナスさんがお助けに来ましたからね――!」


「女神って君が……?助けに来たってどういう事?」


 そう僕が聞くと彼女はハイテンションにまくし立てた。


「私はずっと貴方を見ていたの!仲間が貴方を役立たずと揶揄したり、ボロ雑巾のように扱ったり、挙句の果てには追放されたり……きっと辛かったわよね?だから女神様ね特別に貴方だけの為に手助けするの!」


 彼女はある物を渡した。表紙にひらがなでぜんのうのしょと書かれている本だ。


「あの……君はもしかして女神様ごっこでもしてるの?」


「まっさかー!それはね全能の書だよ!君がそれを持っていたらなんでも魔法が使えてね!しかも裏コードを使ってチートまで出来ちゃうの!女神様奮発したんだからね!」


 そう言うと彼女は自慢げな表情をしながら僕に抱きついた。


「さあアスタ!マルクトを救いに行くんでしょ?私と一緒にレッツゴーしましょ?」


 そうして僕の冒険は再び始まった。草原を彼女と手を繋ぎながら歩いて5分程でナーシャ村に辿り着いた。しかし、そこには馬車に乗せられようとしている16歳位の女の子とグラサンを掛けた3人組の男がいた。


「離しなさい!この私をパレット王国の王女と知ってやってるならただじゃ済まないわよ!」


「黙りやがれコラ!俺達は早急に金が必要なんだ!お前さんを人質にとって王からお金をとってウハウハしてやんだよ!」


「止めろ!」


 僕はこの状況を見逃す事は出来ない。こんな奴らなんかやっつけてやる!


「なんだテメェ?」


「兄貴見てください!こいつの鑑定結果レベル10ですってwwwwwwひゃははははwwwww」


「まぁじかよ!俺達グラサン隊全員レベル40なのになぁ――!まあいいや死にやがれ!」


 レベル40だって?そんな奴らがこんな所にいるなんて!勝てっこない!そう思っていると耳元でルビナスが囁いた。


「アスタ様、アルカニックブレイカーて言ってみて?ほーら?」


「あ、アルカニックブレイカー!!!」


 彼女の言う通りにした途端馬車と共に奴らが燃え上がり、とてつもない爆発が巻き起こった。


「うぎゃああああああ!ママー!熱いよ!死んじゃうよ――」


「ママ――助けてよ――!」


 その火が燃え尽きた後、奴らは灰になっていた。冗談半分だと思っていたけど……この全能の書って本物!?


「アスタ様!やりましたね!全滅おめでとうございます!」


「ははっ……!この力があれば僕でもやれるぞ!」


 そんな中、グラサンの奴らに襲われていた王女が僕達の元に近づいてきた。彼女は一言。


「かっ、かっこいい……まるで1500年前に現れたと言われてた伝説の勇者様みたい……♡」


「あ――……どうも……」


「私は王女アナスタシア♡アスタ様宜しくね!」


 


 


 


 


 


 

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