湯けむり立て直し大作戦!
めがねあざらし
第1話
王さまの国は、いつもどこかが賑やかだった。理由は簡単。王さまがあまりにも気前が良すぎるからだ。
「お祭りか!よし、国中に金貨を配れ!」
「道行く旅人が疲れているのか?ならば宮殿の宝石をやろう!」
そんな調子で、王さまが国の財宝をどんどん配るものだから、財務官長のレオンは頭を抱えていた。
「王さま!これ以上財宝を配っては国が破産します!」
「大丈夫、大丈夫!金は天下の回りものだろう?諫言をしてくれたお前にも金貨をやろう!」
王様、それです。そう思いながらレオンは額を押さえ深いため息をつく。
いくら直言しても、この王さまの気前の良さは止まらない。
しかし、レオンは知っていた。この国には、伝説の『湯の泉』が存在するということを。
その泉は、どんな病も癒やし、疲れを吹き飛ばす奇跡の湯だという。
もしそれが本当に存在するならば、大浴場を作り観光資源にすれば、財政難を立て直せるかもしれない。
「よし…探しに行くか。」
王さまが頼りにならない以上、レオンは自ら動くしかなかった。
◆◇◆
旅の同行者としてレオンが選んだのは、王宮の騎士団長であり幼馴染のグレンだった。
「お前、俺に温泉探しを手伝えって言うのか?」
「頼むよ。お前しかいない。」
グレンは腕を組み、レオンをじっと見つめる。
「俺は魔物退治のために剣を振るうんであって、温泉探しのためじゃない。」
「もし温泉を見つけられなかったら、次にお前の給料を削られることになるけど?」
「よし、行くぞ。」
◆◇◆
二人は旅を続け、森の中を進んでいた。
「レオン、この辺り、何か妙な気配がする。」
グレンが足を止めた瞬間、小さな河童が木陰から現れた。
「助けるだよ!あっちで仲間がモンスターに襲われてる!」
河童の声は必死だった。レオンは「いや、関わらない方が…」と小声で呟いたが、グレンはすでに剣を構えていた。
「行くぞ。」
小さな河童が先導するように進むに従い、グレンも歩みを進めた。
「お前、話聞いてないな……」
仕方なくレオンはグレンについていく。
森の奥で、大きなオークが河童の仲間を追い詰めていた。グレンは颯爽と駆け出し、一瞬でオークを切り伏せた。
「助けてくれてありがとうだよ!」
河童たちはぴょんぴょん跳ねながら感謝の意を表した。そして一匹の河童がレオンに近寄る。
「あんたたちは、なにしてるだ?」
「温泉を探している」
「おで、知ってるだよ!お礼に温泉の場所を教えるだよ!」
「本当か!」
しかし、その言葉を遮るように、別の河童が前に出た。
「待て待て、そんな簡単に教えちゃダメだ!相撲を取らねえと、教えられねえ!」
「はあ?」
レオンは呆れ返ったが、グレンはもう準備運動を始めていた。
「河童と相撲を取ればいいんだな?」
「ええ、そうだ!」
「まて、グレン。お前……スモウを知っているのか?」
「知らん。が、どうにかなるだろう」
グレンは相撲が分からない中で果敢に戦った。そして河童を相手に次々と勝利していく。
河童たちは「こりゃ強い!」「参った参った!」と笑いながら倒れていった。
「よし!教えるだよ!」
◆◇◆
レオンとグレンがたどり着いた泉は、まさに伝説そのものだった。霧が立ち込め、湯から立ち上る蒸気はすでに体を癒やしてくれるような感覚があった。
「これを観光地にすれば…国の財政は救われる!」
レオンは興奮し、大浴場の建設計画を立ち上げた。
やがて国中から観光客が押し寄せ、王国の財政は回復していく。
王さまも温泉を訪れ、豪華な湯船につかりながら呟いた。
「ふふ…また財宝を配っちゃおうかな?」
「やめてください!!」
レオンの絶叫が湯の中に響き渡るのだった。
湯けむり立て直し大作戦! めがねあざらし @megaaza
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます