後輩の橘くんが彼氏になったら。
@yuzunoka
第1話
「ん…みず…」
寝ぼけたままベッドから起き上がった私は、ドアに向かって歩くと床に散らばったコートやスーツを踏んだ事に気がついた。
昨晩は職場の忘年会。
同期の市村博美の隣で
ちびちびと烏龍茶を飲んで終わるはずだった。
ほんの少し飲んだだけでも顔は真っ赤に染まり、頭がくらくらして呂律が回らなくなるほどアルコールに弱いからだ。
烏龍茶しか飲んでいない筈…
なのに困ったことに
どうやってアパートに帰ってきたのか記憶がない。
「何かあったら私が責任持って送り返すから安心して。」
確か博美はそう言って私に烏龍茶を渡してきた…
あれ、烏龍茶じゃなくて烏龍ハイだったのか。
「もー。博美…だからアルコールは無理だとあれほど…」
歩くたび目が回るように頭がぐらぐら揺れて倒れそうになりながら、なんとか扉に手をかけようとした私を後ろから誰かが支えた。
「え?博美?」
「じゃなくて、橘です。」
低くて心地いい声が背後で響いて
私の体は硬直した。
橘 裕孝。彼は職場の同僚で入社したての後輩で…好きな人。
足元に散らばる服にもう一度目を落とし、自分の体を恐る恐る見るときちんとパジャマを着ていて、私は心底安堵した。
いるわけない。
幻聴?妄想?お酒のせいか…だってここは私の部屋で、橘君がいる訳ない。
「気のせいか。だよねぇ。」
安堵したせいで気が抜けた私は、足がもつれて床にふにゃふにゃと座り込んだ。
「だめだ…あるけないやぁ。」
もう、床で寝てしまってもいいか。そう思った瞬間、ふわりと体が軽くなったかと思えば、ゆっくりと布団に置かれた感触がして顔を上げた私は、驚いて硬直した。
「橘くん!?え…?」
「先輩大丈夫?お水持ってきたから飲んで。ほら。」
されるがままに水を喉に通すと、冷たい水が頭をすっきりさせ、血の気が一気に引く。益々私は混乱した。
「え…え?…何で?」
唇から少しだけ溢れた水を親指で優しく拭った橘君は優しく笑った。
「酔って寝ちゃったから僕が送ってきたんだけど、ダメだった?」
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