第11話 ラパス

「ハーヴェスト!!助かった!!」

目の前に現れた男はハーヴェスト・レストラル。

四天王のひとりであるが関わりができたのは2週間前。


沖縄上空。


「ラパス??」

ラパスとは、クロや俺が中学生頃に世界的に流行った都市伝説である。

ラパスの血を引く物はこの世界の全てを握る存在になりうるというひとつの宗教的なサイトが急速にネットなどを使い広がっていった。

ラパスは約260メートルある巨体で、頭の形はまるで花のように開いていて、花の真ん中にはまるで雌しべ化のように巨大な目玉がひとつ存在している。

いわゆる化け物というやつだ。

「都市伝説なんて急に言い出してどうした?これが今から会うハーヴェストと何か関係があるのか?」

今はクロと仲の深いハーヴェストと交流し、仲間に引き入れようと沖縄に向かっている最中だったのだ。

「お前は、この都市伝説が本当に世の中に存在していたらと考えたことは無いか?」

このUnlimited Worldは現実世界ではなくいわゆる異世界なのだ、化け物がいてもおかしくは無い。

待てよ?今思うと都市伝説や御伽噺として伝わっていたルミナスの指輪も、この異世界に来た途端にあることが明らかになった。

「察しがいいお前なら気づくだろ、お前らの世界、いわゆる現実世界で伝わっている話は、このUnlimited Worldに存在するものがなんらかを通ってそっちに行ったってことだ。」

ギリシャ神話などのように古くから伝わる話ではなくあくまで御伽噺、別世界の話が伝わってくることなんてあるわけないはずなのだ、だが、実際に伝わりこんな経験をしてこんな話を聞いている。その時点で信じる信じないの次元を超えて言ったのだ。

「ハーヴェストは、ラパスの血を引く真なる人間だ。」

「ラパスの血を引くものって事はこの世界を握る存在なのか?」

「いいや、そんな大層な存在では無い、とあいつ自体は言ってる。」

そうなのかと安堵しようとした瞬間だった。

「んなわけないだろ、、あいつは自分の重要な存在から逃げようとしているんだ、重荷が嫌いなんだよ、あいつはな」

「重要な存在なのか?だったら説得しないといけないだろ!具体的に何が重要なのかはまだ知識不足な俺には分からないが、何か動かないとやばいんだろ?」

クロの眉間にシワがより、あからさまに機嫌が悪くなったような気がした。

「やばいなんてもんじゃない、あいつはいわゆるラパスの檻の鍵だ。あいつがラパスを操って止めないと来る日、ラパスが暴走してこの世を終わらせる!」

なんだって!?とても重要な役目じゃないか。重荷が嫌いなんて言い訳で逃げられる存在じゃないはずだろ。

「俺がルミナスの指輪を欲しい理由を教えたことは無かったな、、、今がその時らしい」


パドが異世界に召喚される時のUnlimited Worldの話だ。

「ハーヴェスト!!!まずいんだ!!早く逃げろ!踏み潰される!」

ラパスが暴走し、日本の本州は壊滅的な状態、建物は焼け、森は地獄、火の海になっていた。

ラパスは花のように割れた頭から火を吹き出し火の玉を地に落とすような攻撃方法をする

「沖縄だからまだ時間はある!!唯一の弟を亡くす訳には行かない!あいつはまだ5歳なんだ!!」

ハーヴェストはクロやラインハルトの止める声を聞きもせずに走り続ける、皆は飛行機に乗り海外逃亡や被害を受けない北海道をめざして飛びだしていた。

「お前ら、、、俺のわがままに付き合って死ぬのか?そんな人生は良くないだろ?」

「そんなんだったらお前だって!」

「俺は唯一の弟を助けるために命を落とす覚悟をしている!!お前らはなんなんだ!なんのために命を落とす!」

ラインハルトやクロ、サイコアクスは言い淀んだ。俺らにとっては止める資格もないし理由もない、ただ友達に死んで欲しくないだけなのだ。

「いいから行けよ!死ぬのは俺だけでいいんだ!」

「死ね!死んじまえ!その代わり、死ぬなら弟を救え!!何もせずに弟と2人で死んだらただじゃ置かねぇぞ!!」

ハーヴェストは口元が緩み感謝を伝えた

「ありがとう、、ありがとう、、」

「ただ!ギリギリまではいる!弟を救ったのに飛行機が居なかったら元も子もないだろ!?だから早くしろ!少なくてもあと10分だ!」

ハーヴェストは言葉を発さずに手を使い親指を突き立てて走り去ってゆく

「、、、、死ぬなよ、、」

ラパスは260メートルある、もちろんその巨体では歩くだけで震度5程の揺れが起こるのは必然である。

「おい!!大丈夫か!?クルゴー!!!!!!!!!!!!」

瓦礫の下にいたのはクルゴー・レストラル、ハーヴェストと血の繋がった完璧なる弟だ。

母親と父親は死んだ、死因は明らかになっておらず、死体も見つかっていない。

「兄ちゃん!助けて!!!」

「待ってろ!!いま、、助ける!!」

瓦礫をどかそうとする腕は力み、血管が浮きでている。

必死のあまり指先から血が出ているのも気付かずに瓦礫をどかすために力を入れていた。

「よし!どかせたぞ!!捕まれ!」

瓦礫をどかし2メートルほどの穴から弟を引きずり出し、手を掴み走り出す。そこまでの時間約8分。

「あと少しだ!!あと、、、、、、!?」

飛行艇の滑走路には何ひとつ飛行機はなかった。8分も使ったのだ、見捨てられて当然だ。


2分前。


「あと少し待つことは出来ないんですか!?あと少しだけ!」

ラインハルトが飛行機の機長に向かって訴える。

「ダメだ!!これ以上は全員死ぬ!!」

クロがラインハルトの肩をつかみ話す。

「見捨てたんだろ、、覚悟は出来てたはずだ。行くぞ」

「あんまりだろ、、、、こんなの」

頭を抱えた。


「兄ちゃん??どういうこと?」

「もう逃げれないの!!ねぇ!!」

クルゴーは泣きながら走り出し5メートル離れたところで石につまづき転んだ。

「大丈夫か!?クルゴー!!」

「兄ちゃ、、、」

頭上から火の玉が降り注ぎクルゴーに直撃し肉血肉も見えずに焼けて焦げる。

ハーヴェストは放心した、膝を落とし絶望した。この世に絶望した。

「クルゴーを死なせ、俺だけ生きてるなんてことは絶対にない!」

ハーヴェストは走り出し死ぬ前の足掻きというのをし始めた。

「ふざけんなクソラパス!!!!!!!!!!!!俺たちが何したって言うんだよ!お前らは俺らになに差せられたんだよ!!!!!!!!!!!!ふざけんな!!」

すると体に電流が走った。

ラパスは大声を上げ太平洋側に消えていった。

この世の地獄を表したかのような空の色は青空に変わり、ハーヴェストは放心と安堵で気を失った。


「その後ハーヴェストに言われたのはこうだ」

「俺が弟を死なせた。俺なんか生きてちゃいけない、でも何もせずに死ぬのはもっとダメだ!!!!俺はラパスに復讐を誓う!!」

でもあいつは1年経つと何もしない人物になっていた。

この世の全てに楽しさを感じ、生きてる誇りのある前とは違った。

なんのために生きているのか、自分の使命はなんなのか、何をしなきゃ行けないのか

考えることを放棄したかのように沖縄のひとつの民家に閉じこもっている。

やはり弟を亡くした反動は大きいようだ。両親をなくして1人で育てた唯一の弟を。


「だから殴ってやるんだ。あいつの頭を」


目を覚まさせてやる

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