第2話
月曜は祭日だった。明日は学校。久しぶり過ぎて色々忘れているが大丈夫だろうか。
三年前、どんな生活をしていたんだっけ?
「お兄ちゃん、お買い物付き合って」
朝、ゆかりに言われる。俺が驚いていると。
「前に一緒に行ってって言ったじゃない。忘れたの?」
ごめんすっかり忘れていた。なにせ三年も経っているから。
「忘れてた」
「しょうがないな。許してあげる」
ニコッとゆかりは笑った。ツインテールの黒髪が揺れて可愛い。
異世界にいる時、義妹のゆかりの事が唯一の気がかりだった。両親は海外にいるので一人ぼっちになってしまう。無事に戻って来れて良かったと思う。
*
俺たちは近くのショッピングモールに来ていた。買い物なら、友達と来ればいいと思うのだが。何で俺と一緒に来たのだろう。
「お兄ちゃんさ、カッコ良くなったよね」
「え?」
何言ってんだこいつは。ゆかりは、急に俺の腕に自分の腕を絡ませてきた。
「へへー。こういうの夢だったんだよね」
「こういうのは彼氏にするものだろ」
「じゃあ、彼氏が出来るまででいいから」
「……」
小さい胸が腕にあたっている。ドキドキして変に意識してしまう。
「彼女が出来るまででいいから」
「ん?」
「だって、お兄ちゃんカッコいいから直ぐに彼女出来そうだもん」
「そんなわけないだろ」
自慢じゃないが、俺は今までモテた事ないんだが。学校ではもっぱらイジメられていたからな。今思うと…イジメも大した事なかったな。異世界の戦いに比べれば、遊んでいるようなものだったが。
「この色どうかな?」
可愛いフリルの付いたワンピースを持ってきて、俺に見せてくる。薄い黄色と茶色の二つを持ってきた。
「どっちも似合うから良いと思うぞ」
「えー。じゃあ、両方買う」
よく見たら丈がめっちゃ短いな。足が見えてエロい。
ゆかりは会計を済ませ、袋を俺に預けた。
「ちょっと、おトイレ行ってくるね。ここで待ってて」
*
「遅いな」
トイレが混んでいるのだろうか。ここから一番近いトイレはどこだっけ?トイレ前の通路に行くと、ゆかりが二人の男に絡まれていた。ナンパだろうか。
ガラの悪そうな二人組。大学生だろうか?気崩した服を着て、金髪に髪を染めている。前の俺だったら、逃げ出していただろうけど、今なら。
「ゆかりどうした」
俺は声をかけ近づく。ゆかりは怯えてるみたいだ。
「彼氏か?何だ、ひょろひょろしてるじゃねえか。こんな奴ほっといて遊びに行こうぜ」
男が、ゆかりの肩に手を回す。
「嫌がっているのが分からないのか?」
俺は、男の腕を掴み引っ張った。
「痛って!何しやがる」
俺の手を振りほどこうと、男がもがく。もう一人の男が俺に殴りかかってきた。俺は、無詠唱で風魔法を使い、相手を吹き飛ばす。多分、殴られて飛んだように見えるだろう。とっさに使ったが、魔法は問題なく使えるみたいだな。
「凄い…」
ゆかりが呟いた。バタバタと警備員が走ってくる。喧嘩していると思われたのだろう。
「逃げるぞ」
「え?」
俺はゆかりを抱えて、二階から一階へ飛び降りる。まるでアクション映画のワンシーンのようだ。
「ひゃっ!」
そのまま、ショッピングモールから出た。思わずゆかりを抱きかかえてしまったけど。腕の中のゆかりは頬が赤くなっていた。
「ちょっと!説明してほしいんだけど!!」
抱えていた彼女を降ろし、街中を一緒に歩き始めると、ゆかりが興奮気味に俺に食ってかかる。
「え?何が?」
俺、何かしたか?ナンパ野郎から助けたのだから、感謝されるべきところなのだが。
「昨日までと、全然違うんだけど?助けてくれたのもそうだけど、普通二階から飛び降りたりしないからね?」
あれ?そうだったっけ?
「んんん?」
少し感覚がズレているのかもしれないな。
「何でこうなったのか説明してくれるよね?」
怖い顔で、ゆかりが睨んできた。俺は思わず後ずさった。
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