オタクに優しいのはギャルだけで十分です
池田亜出来
第1話 オタクに優しいギャル
「オタクに優しいギャルは本当に存在するのか」
これについて真剣に考えるようになってしまえば、もうすべての終わり、オタクの最終定理だ。
オタクに優しいギャルとは、『なにかとオタクに風当たりが強いこのご時世の中、逆に優しく接してくれる、ギャルのこと』(◯クシブ百科事典より)を言う。
クラスにに友達がおらず、1人でお弁当を食べているオタクにとって、仲間で楽しそうに過ごしているギャルは遠く、真反対な人種だ。
そうした相対するものだからこそ、オタクに優しいギャルという言葉が生まれたのだろう。
オタクなら誰でも一度はオタクに優しいギャルとの出会いを願った事があるに違いない。
僕にもそういう時代があった。
だが、もうこの際明らかにしておく、そんなギャルは絶対に存在しない。絶対に。
理由は簡単、そもそもオタクに優しい人がいないのにオタクに優しいギャルがいるわけないからだ。
これを読んでいるオタクに違いない皆様にも思い当たる節があるだろう。
趣味の話が全く合わず、話も続かなくて気まずい空気になってしまったこと…
話を聞いてくれるから、と調子に乗って喋ってしまえばもう手遅れで、たいてい、「ふーん、そうなんだ、すごいね」みたいな棘のある優しさに心をえぐられることになる。(実体験ではない。決して。)
普通の人でさえこうなのに、ギャルなら尚更だ。
派手なメイクと髪型で最新の流行りを網羅し、クラスではカースト頂点に君臨する彼女たちと深夜アニメやら際どい漫画・ゲームやらに没頭する僕らでは話が合うはずもない。
だから「オタクに優しいギャル」は夢のまた夢。
オタクの願望を詰め込んだただの偶像に過ぎない。
そう思っていたのに…
僕、瀬戸拓海は、いわゆる正統派のオタクだ。
オタクに正統派もクソもないが、ここではみんながオタクと言われて想像する人、で十分だろう。
高校に入学してから1ヶ月たった今でも、まだお弁当は1人だし。
学校に向かいながらオタクやらギャルやらについて1人悶々と考えているくらいだし。
珍しく寝坊してしまったので、いつもの早い便には乗れず、人が一番多い時間帯の便に乗らなければならなかった。
そのせいで、駅から学校までの道はとてつもなく混んでいて、慣れない自分にとっては地獄だ。
今日もだるいな、早く家に帰って新作ゲームの続きしてー…と思いながら歩いていると、前方に一際目立つ女の子が友達と楽しそうに話している。
つい眺めてしまっていると、後ろの先輩たちの会話がふと耳に入ってきた。
「いや〜あの子すっげえかわいいよな。彼氏とかいんのかな。」
「噂によればいないらしいけど…絶対他校にいるよな」
「でもなんかこの前男と歩いてたって話もあったぞ。あの可愛さかつギャルでいないほうがおかしいだろ。てかお前らちゃんと見たことある?あの子、顔だけじゃないぞ。」
先輩にも知られているあの子の名前は日野明里。
見て分かる通りギャルだが、ギャル特有の濃い感じは無く、清潔感があり、透き通っている。
いわゆる清楚系ギャルだ。(この単語にも議論の余地がありそうだが)
学校の恋愛事に疎い自分でさえ彼女がモテているのは予想がつくし、実際そうなのだろう。
ルックスやスタイルはさることながら、彼女はとても性格が良い。
オタクの僕がなんでそんなことを知っているのかって?
そう、彼女こそがオタクに優しいギャルだったからだ
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