少年(6)

何気なく廊下を歩いている時だった。


俺はたまたま彼女を見かけた。


まだ心の準備ができてなかったから、すぐに引き返しそうになった。


でも、彼女の様子を見て、その足はすぐに止まった。


彼女はずっと上の空で目の前が見えていないようだった。


見るからにフラフラで今にも倒れそうだ。


嫌な予感がして駆け寄ると、やはり予想通り彼女はバランスを崩して倒れそうになる。


間一髪で走っていた俺の右腕が彼女が倒れる前に支えることができた。


大丈夫、と声をかけると彼女は驚いたような表情をした。


当然の反応だろう、ここ一週間ずっと避けていた人が急に目の前にいるのだから。


すでに嫌われていて、拒絶されるのも覚悟して彼女の次の言葉を待つ。


どうせ振られた身、彼女が無事なら何を言われても俺が傷つくだけで済む。


けれど、予想外にも彼女は「…うん、」と小声で返答して逃げ去ってしまった。


一瞬拒絶されたのかとも思ったけど、すぐにそれは違うと思った。


根拠なんてない、ただそう感じたんだ。

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