目は口ほどに物を言うといいますが 〜筒抜け騎士様は今日も元気に業務(ストーカー)に励みます〜
新羽梅衣
初恋泥棒は突然に
1
「どうしてその呼び名を知っているんだ!」
「近寄るな、このバケモノ!」
それは、そう遠くない過去の記憶。
目の前には、恐怖に怯えて震える男の子。
信じられない、そう言いたげな彼の執事。
ジュースを頭から被せられ、びしょびしょになってしまったドレス。
慌てふためいている周囲のメイドたち。
アメリアは、自分が何を言われたのか理解するまで固まることしかできなかった。
――バケモノ。
たった四文字のその言葉は、アメリアを殻に閉じこめるには十分すぎるものだった。
直接目と目が合ったら、その瞬間。
意思なんて関係なく、そのひとの考えていることを読み取ってしまう。
伯爵令嬢のアメリア・コリンズは、そんな能力を持って産まれてきた。
それがアメリアだけの特別なものだなんて、幼い彼女は知る由もなかった。
何の悪意もなく、考えていることを言い当ててしまって、突然バケモノ呼ばわりされたアメリアは酷く塞ぎ込み、それから人前に出る時は必ずベールを被るようになっていた。
彼女の秘密を知るのは、家族と限られた使用人、そして唯一の親友・エマのみだった。
アメリアが顔を隠し続けて、もう十年以上経った。十九歳になった今も変わらず、それは続いている。
「コリンズ家の娘の素顔、知ってるか?」
「なんでもとんでもない美人だって聞いたことはあるが」
「ああ、おとぎ話のお姫様も逃げ出すレベルだってな」
「いや、俺が聞いたのはこの世のものとは思えない程の醜女だって噂だぜ」
「ギャハハ、それなら顔を隠してるのも頷ける」
荒れくれ者の集う酒場では、下世話な話題がメインディッシュ。
時折、アメリアの素顔が話題に上がることもあった。
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