第18話 統合の光と闇
崩壊する空間に放り出された真奈とラザール、そしてイグナス。一行は、それぞれ異なる場所に散り散りとなり、不安と混乱の中で試練を迎える。闇と光が入り乱れる魔界の深部で、彼らの運命が大きく揺れ動く。
◇
真奈が目を覚ましたのは、不思議な空間だった。足元には透明な床が広がり、下には星々が煌めいている。まるで宇宙に浮かんでいるかのような光景だったが、空間には冷たい風が吹き抜け、不安を掻き立てる。
「ここは……どこ?」
周囲を見回すと、どこまでも続く闇と、その中に点在する光の柱が目に入った。それらが交互に輝き、まるで何かを訴えているようだった。
「真奈……?」
ラザールの声が遠くから響いてくる。彼の姿は見えないが、その声ははっきりと聞こえた。
「ラザール! どこにいるの?」
叫ぶ真奈の前に、一つの影が現れる。それは、自分と瓜二つの姿をした「もう一人の真奈」だった。
◇
「あなた……誰?」
もう一人の真奈は微笑みながら答える。
「私はあなた。けれど、あなたの中にある迷いや弱さそのもの。」
「迷いや弱さ……?」
「あなたはいつも怖がっている。周りの人が傷つくのが怖い、ラザールやイグナスに迷惑をかけるのが怖い。自分が『異世界の花嫁』としてふさわしくないのではないかと怯えている。それが、私。」
真奈は息を呑む。言い返したいのに、その言葉が図星だったからだ。
「でも、そんな私がどうしてここにいるの?」
「この空間は真実を映す場所。闇と光、どちらに傾くかはあなた次第。さあ、私を受け入れられる?」
真奈は震える手を胸に当てながら考える。この旅で得た多くの経験が脳裏をよぎる。恐怖もあったが、それ以上に支えてくれた仲間たちの姿が浮かんだ。
「私は……弱いかもしれない。でも、弱いからこそ、強くなりたいと思えるの。ラザールたちがいるから、私は立ち向かえる!」
真奈の言葉に応じるように、もう一人の真奈の姿が淡い光に包まれ、次第に消えていった。その瞬間、周囲の闇が一気に晴れ渡り、道が開けた。
◇
一方、ラザールは別の空間で孤独と戦っていた。そこは、かつての自分の記憶が再現された場所だった。
「……ここは、父上が亡くなられた日。」
目の前には、幼いラザールが王宮の玉座に立ち尽くしている光景が映し出されていた。周囲からは、王族としての責任を押し付ける声が次々と響いてくる。
「王族としてお前は何を果たした?」
「民を守る力もない癖に!」
冷たい言葉がラザールの心に突き刺さる。しかし、その中でふと、真奈の笑顔が脳裏に浮かんだ。
「……真奈なら、こんな時どうするだろうな。」
ラザールは剣を構え、自らの記憶の中にいる幻影たちに向かって叫んだ。
「俺は確かに未熟だ。だが、この力で仲間を守り抜く。それが王族の務めだ!」
ラザールの叫びに呼応するように、剣が紅く輝き、幻影を次々と打ち破っていった。
◇
イグナスもまた、試練を迎えていた。彼が目の前にしたのは、かつての仲間たちを失った戦場の記憶だった。
「また守れなかった……。」
その呟きに、どこからともなく現れた声が答える。
「そうだ、お前は弱い。だから何度も大切な者を失う。」
「ふざけるな!」
イグナスは剣を振りかざし、声の主を睨む。
「俺は……もう後悔しない! 仲間たちのために、俺自身が強くなる!」
イグナスの剣が輝き、声は消え去った。
◇
試練を終えた三人は、ついに再び一つの場所に集結した。
「ラザール、イグナス!」
真奈が駆け寄ると、ラザールは優しく微笑む。
「よくやったな、真奈。お前がいるから、俺たちはここまで来られた。」
「それはこっちの台詞だよ!」
イグナスも冗談交じりに返すが、その顔には満足げな笑みが浮かんでいた。
◇
ディアスの声が再び響く。
「よくぞ試練を乗り越えた。さあ、光と闇を統合するのだ。」
三人は手を取り合い、闇と光の力を合わせる。真奈の胸に眠る「鍵」が輝き始め、空間全体が眩しい光で包まれた。
◇
「これで裂け目が閉じる……?」
真奈が呟くが、ラザールは険しい表情を崩さない。
「いや、これで終わりではない。むしろ、真の戦いはここからだ。」
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