第18話 統合の光と闇

崩壊する空間に放り出された真奈とラザール、そしてイグナス。一行は、それぞれ異なる場所に散り散りとなり、不安と混乱の中で試練を迎える。闇と光が入り乱れる魔界の深部で、彼らの運命が大きく揺れ動く。

真奈が目を覚ましたのは、不思議な空間だった。足元には透明な床が広がり、下には星々が煌めいている。まるで宇宙に浮かんでいるかのような光景だったが、空間には冷たい風が吹き抜け、不安を掻き立てる。

「ここは……どこ?」

周囲を見回すと、どこまでも続く闇と、その中に点在する光の柱が目に入った。それらが交互に輝き、まるで何かを訴えているようだった。

「真奈……?」

ラザールの声が遠くから響いてくる。彼の姿は見えないが、その声ははっきりと聞こえた。

「ラザール! どこにいるの?」

叫ぶ真奈の前に、一つの影が現れる。それは、自分と瓜二つの姿をした「もう一人の真奈」だった。

「あなた……誰?」

もう一人の真奈は微笑みながら答える。

「私はあなた。けれど、あなたの中にある迷いや弱さそのもの。」

「迷いや弱さ……?」

「あなたはいつも怖がっている。周りの人が傷つくのが怖い、ラザールやイグナスに迷惑をかけるのが怖い。自分が『異世界の花嫁』としてふさわしくないのではないかと怯えている。それが、私。」

真奈は息を呑む。言い返したいのに、その言葉が図星だったからだ。

「でも、そんな私がどうしてここにいるの?」

「この空間は真実を映す場所。闇と光、どちらに傾くかはあなた次第。さあ、私を受け入れられる?」

真奈は震える手を胸に当てながら考える。この旅で得た多くの経験が脳裏をよぎる。恐怖もあったが、それ以上に支えてくれた仲間たちの姿が浮かんだ。

「私は……弱いかもしれない。でも、弱いからこそ、強くなりたいと思えるの。ラザールたちがいるから、私は立ち向かえる!」

真奈の言葉に応じるように、もう一人の真奈の姿が淡い光に包まれ、次第に消えていった。その瞬間、周囲の闇が一気に晴れ渡り、道が開けた。

一方、ラザールは別の空間で孤独と戦っていた。そこは、かつての自分の記憶が再現された場所だった。

「……ここは、父上が亡くなられた日。」

目の前には、幼いラザールが王宮の玉座に立ち尽くしている光景が映し出されていた。周囲からは、王族としての責任を押し付ける声が次々と響いてくる。

「王族としてお前は何を果たした?」

「民を守る力もない癖に!」

冷たい言葉がラザールの心に突き刺さる。しかし、その中でふと、真奈の笑顔が脳裏に浮かんだ。

「……真奈なら、こんな時どうするだろうな。」

ラザールは剣を構え、自らの記憶の中にいる幻影たちに向かって叫んだ。

「俺は確かに未熟だ。だが、この力で仲間を守り抜く。それが王族の務めだ!」

ラザールの叫びに呼応するように、剣が紅く輝き、幻影を次々と打ち破っていった。

イグナスもまた、試練を迎えていた。彼が目の前にしたのは、かつての仲間たちを失った戦場の記憶だった。

「また守れなかった……。」

その呟きに、どこからともなく現れた声が答える。

「そうだ、お前は弱い。だから何度も大切な者を失う。」

「ふざけるな!」

イグナスは剣を振りかざし、声の主を睨む。

「俺は……もう後悔しない! 仲間たちのために、俺自身が強くなる!」

イグナスの剣が輝き、声は消え去った。

試練を終えた三人は、ついに再び一つの場所に集結した。

「ラザール、イグナス!」

真奈が駆け寄ると、ラザールは優しく微笑む。

「よくやったな、真奈。お前がいるから、俺たちはここまで来られた。」

「それはこっちの台詞だよ!」

イグナスも冗談交じりに返すが、その顔には満足げな笑みが浮かんでいた。

ディアスの声が再び響く。

「よくぞ試練を乗り越えた。さあ、光と闇を統合するのだ。」

三人は手を取り合い、闇と光の力を合わせる。真奈の胸に眠る「鍵」が輝き始め、空間全体が眩しい光で包まれた。

「これで裂け目が閉じる……?」

真奈が呟くが、ラザールは険しい表情を崩さない。

「いや、これで終わりではない。むしろ、真の戦いはここからだ。」

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