片思いしていた山田君は夢の中なら優しい

壁児ラナ

第1話 プロローグ

 中学・高校時代を通して好きな同級生の男子がいた。名前は山田君。山田君はとても美しい男の子だった。きめの細かい白い肌、サラサラの薄い茶色ががった髪、大きすぎない切れ長の二重瞼の目、形の良い鼻、薄い唇。

笑うと、細めた目がキラキラ光っていた。


 この描写が恋の色メガネのなせる技ではないのは、高校3年生の時、下級生にファン・クラブができていたことでも分かってもらえると思う。山田君はとにかくモテた。モテたけど硬派で、休み時間はいつも男友達と楽しそうにしていた。


 そんなイケメンが私の想いに応えるはずなどなく、でも、身のほど知らずの私は、「さりげなさ」を装い、それとは程遠いアプローチを何度も試みた。


 妙なペアのマスコットをフェルトで作り、その一つを手渡したり、バレンタインデーには「手作り」と称して、溶かしたチョコを型に流し込んでチョコスプレーなどをばらばら振りかけただけのやつを渡したり。

 その時はトキメク乙女のつもりだったが、いま思い返すと、山田君にとっては迷惑このうえないイタギモいだけの存在だったに違いない。マスコット人形に至っては特級呪物並みの恐怖を与えたのではないだろうか?


 だから当然、片思いのまま卒業した。


 10年ぶりの同窓会で会った時も、山田君の私に対する態度はとても素っ気なく、冷たくさえあった。もしかしたら、また呪物を渡されるのではないかと警戒していたのかもしれない。その時は、私も山田君もすでにそれぞれ結婚して子どももいたのだか。

いや、単に気味悪い女に近づきたくなかっただけか。それも納得である。


 そんな山田君の夢を見るようになったのは、それから5年ほど後のこと。不定期で何度も見るようになった。そして、夢の中で私と山田君の恋は少しずつ、少しずつ進展していった。

 

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