【仕返し屋SQATT】兄嫁に嵌められて実家を追い出され人生を破壊されたので
猫カレーฅ^•ω•^ฅ
第1話:依頼者の無念
「なぜ、今そんなに悔しいんですか?」
ここは少し特別な探偵事務所。俺はそこの所員……というか、雑務……いや、奴隷の……。
そんなことはどうでもよく、今日は目の前の依頼人の話を聞くのだ。彼女の名前は海野乙姫。
「あの兄嫁、私の猫を殺したんです! 絶対仕返ししてやりたい! あいつの弱みを見つけてほしいんです!」
どうやら【本業】の方でも話を聞けるかもしれない。
ここは探偵事務所。……と言ってもマンションの4LDKを事務所として使ってるような小さな事務所だ。ちなみに、所員は所長と秘書と俺の3人だけ。
【表向き】は探偵事務所。今は所長も秘書も出払ってる。とりあえず、俺が依頼人の話を詳しく聞くことになりそうだ。
「すいません。録音しながら話を聞いてもいいですか?」
「……はい、構わないです」
録音することで、有事の際あとで依頼人がその様に言った言わないの水掛け論を回避できる。
リビングのこの部屋で一番広い部屋にソファセットが置かれている。そのソファに依頼人が腰掛けている。テーブルの上にはボイスレコーダー。俺はローテーブルを挟んで彼女の前に座っている。
たしか、依頼人の彼女の名前は海野乙姫だったか。見た感じ20代半ばって感じか。話している感じでは、すごく怒っている。
「すいません。録音の関係もあって、さっき聞いた話をもう一度聞きますけど気を悪くしないでください」
「……ええ」
彼女の話を要約するとこうだ。
■回想1
彼女は25歳の会社員。父母は共に50代。兄30代で元々は4人家族だった。家族仲は普通だったらしい。
数年前に当時20代の兄が結婚した。兄は高校時代にひどいいじめを受けていたので人間不審なところがあった。それなのに彼女がいたことも驚いたが、結婚するなんて海野乙姫は予想もしていなかった。
そして、その兄は実家を出て行かず、夫婦で実家に住むことにしたらしい。彼女は当時高校3年生になったばかりだった。
嫁姑問題を心配したが、兄嫁も姑もお互い気を使い合ってそれもなかった。一見、平和に思えたが問題は兄嫁と海野乙姫の間で起きた。それも、かなり静かなところで。
最初は夕飯の時だったらしい。海野乙姫は部活をしているので夕飯が一人だけ遅かった。リビングで一人でご飯を食べていると、たまたま兄嫁がキッチンに来て彼女を見つけた。
「箸の持ち方が変だね。田舎の人はせめてそれくらいできるかと思った」
「……」
あまりのことに海野乙姫は言葉を失った。彼女は自分の箸の持ち方について完璧ではないけれど、人差し指がちょっと箸から浮いているくらいでそこまでひどくはないのだという。探偵事務所に箸は置いていなかったけれど、彼女は近くにあったボールペンを持って箸の握り方をしてみせてくれた。巧としてはたしかに指摘するほど変だとは思わなかった。その事実よりも彼女は、一見優しそうに見えた兄嫁がそんなことを言った事を受け止めきれないでいた。
さらに、兄嫁は大学時代には東京に住んでいたことを教えてくれた。なんでも兄とはその大学のときに知り合ったらしい。
最初はたまたま箸の握り方に厳しい人なのかと思ったらしいが、これだけじゃなかった。
廊下ですれ違ったら兄嫁は彼女にタックルしてきた。最初は貧血かなにかで倒れかかって来たのかと思ったらしいが、悪意100パーセントだと知って信じられなかった。こんな悪意を持った人間が現実に存在することを信じられなかった。現実とはとても思えなかったのだ。
しかし、彼女には相談相手がいなかった。兄嫁は彼女と2人きりの時のみ悪口を言ったり、嫌がらせをしてきていたのだが、母親に相談した時の反応はこうだった。
「兄嫁は私と2人きりの時だけ悪口をいうの!」
「何言ってんの、バカなこと言わないの! それより、霞さんのことを『兄嫁』とか呼ばないの! 失礼でしょ!」
父親に相談したときはこうだった。
「お父さん! 兄嫁が私のことを陰でいじめるの!」
「バカ言うな。霞さんは家事とかまでやってくれてるだろ!」
父も母もまるで信じてくれなかったらしい。それというのも兄嫁はみんなが見ている時はいじめをしなかった。それこそ、天使か菩薩の様に笑顔を絶やさない美人で控えめなお嫁さんだった。海野乙姫と2人の時だけ依頼人に嫌がらせをしていたからだ。
両親はあてにならなかった。しかし、兄は違うはず。兄妹としての関係も築いてきた。兄妹関係は悪くない。兄が力になってくれると考えていたのだ。そして、兄に相談した時の答えはこうだった。
「やめろよ、お前。そういうの良くないぞ。そういうのは小姑っていうんだ。あいつをいじめるな。俺の大切な嫁だ。嫉妬か? ちゃんとお前のことも考えてるから」
他にも、温めて出してくれた夕飯のコロッケがフォークでズタズタに刺されていたり、明日持って行かなければならないので干していた部活のユニフォームを濡らされていたり、シャーペンの替え芯だけ全部2つに折られていたり、通学用の靴下に穴を開けられていたり、家の廊下ですれ違った時は突き飛ばされて……。
とにかく、兄嫁の仕業だと言っても証明するのが難しいものばかりだった。そのくせ、それを見つけた時の兄嫁の反応は見下げるような冷たい視線で「やっと気づいたんだ。にっぶ!」とか「だっさ」とか、とにかく普段他の人間がいる時には絶対言わないようなことを言ってきたらしい。
依頼人にとって自尊心がめちゃくちゃにされた。しかも、悪いのはいつも依頼人ということにされてしまっていた。
ついでに兄からは頭を小突かれるほどだった。
■回想1終わり
□
@yumeaki0129さん、なべやまさとしさん、ギフトをありがとうございます♪
今年も応援いただき心強かったです。来年もまた新しいのを書いていきます!
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