実験の余波から数日が経過し、解析は一向に進展しないままだ。陳は「そもそもこれは本当に意味のあるデータか?」と冷静に疑問を呈している。有村は量子ゲートのさらなる改良案を考案し始め、「次のパルスまでに完成させてみせる」と意気込む。


「まだ次のパルスがいつ来るかわからないけど……」


玲奈は有村の研究室を訪れ、開発計画書を見ながら笑みをこぼす。


「やれるときにやるしかないのよ。今回の実験は成功とも失敗とも言えない結果に終わった。でも何か得体の知れないものを観測できたのは事実。あきらめるには惜しいわ」


玲奈もうなずく。


「次回はもっと上手くやってみせます。フォトンの制御技術を上げれば、もっとクリアな信号が取れるかもしれない」


その夜、研究センターの屋上に出た玲奈は、深い藍色の空を見上げた。銀河系の向こう側に思いを馳せると、自分がいかに小さな存在かを実感する。でも同時に、だからこそ知りたいという欲求も高まるのだ――あの広い宇宙のどこかに、地球の存在を知る知的生命がいるのだろうか。量子もつれによって結ばれた奇跡のようなコミュニケーションは、本当に可能なのか。


諦めたくない。


玲奈は心の中で誓う。絶対にこの謎を解き明かしてみせると。

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