第2話 まずは武器
私は、勇者に変な首輪のようなものをつけられた。
「何、これ?」
「俺が召喚することができるようになる首輪。」
なるほど。
勇者(クズ)は私をたびたび召喚したいようだ。
「どっか行っていていいぞ。」
勇者はそう言って、しっしっと手を振った。
腹立つなあ。
絶対楽には殺してやらない。
さんざん苦しませてから殺してやる。
私は、『変装』魔法で見た目を変えてから、『転移』で武器屋に行った。
すると、武器屋にはちょうどよさそうな剣があった。
それこそ、勇者の剣に匹敵しそうな。
値段を見てみると、飛び切り安かった。
「あの~、どうしてこの剣、こんなに安いんですか?」
「あー、それな。実は、なんだけどよぉ、その剣を買ったやつは三日以内に死ぬんだよ。だから、呪いの剣って呼ばれているんだが~、買うのか?」
それって、もしかしてこの剣の威力が強すぎて、努力を怠った結果、強い魔物に遭遇した時に負けちゃったってことじゃないの?
つまり、努力を怠るようなアホが今まで持っていたからそんな風に呼ばれているってこと、だよね。
よし、買うか。
私が、その剣を買います、と言うと武器屋のおじさんは驚いたような表情でこちらを見ていた。話、聞いていたかい?と言わんばかりに驚いていた。
聞いてたけど、それが何か?、と心の中で思っていた。
私は、その件を腰に下げて、武器屋を出ると、突然足元が光った。
「え?」
次の瞬間、私は知らない場所にいた。
「えっと?」
「お前、なんで剣持っているんだ?」
目の前に勇者がいた。
やばい。言い訳しないと。
「あ、えっと。少しでも、勇者様の役に立ちたいな、と思いまして。それで、少しでも戦闘力になるために、剣を買った次第です__。」
どうだ!
これで言い訳できているだろう。
我ながらにとても良い言い訳だと思う。
このクズで馬鹿な勇者ならこれでだませると思う。
「なんだ。そうか。それならいい。」
勇者はニマニマと笑ってそう言った。
今に見てろよ。
その気色が悪い面をたたき割ってやる。
私がそう思っていると、勇者は近くにいるパーティーメンバーと楽しそうに話していた。パーティーメンバー相手には、勇者は全然クズではなかった。クズな性格をうまく隠していた。なんだこいつ。
敵相手にだけクズな本性を見せるのだろうか。
いや、そんなことはどうでもいい。
私の目的は、こいつを殺して両親や仲間の魔王軍たちの
それだけなのだ。
――――――――
「へっ死ね。」
俺はそう言って剣を振り上げた。
魔王の仮面がその瞬間、割れてとれた。
な、何だこの可愛い物体は!!
それが、俺の仮面を取った魔王に対する第一印象だった。
ど、どうしよう。
可愛すぎて直視できない。
どうしてさっきまで仮面付けていたんだよ。
仮面割って、今最後のとどめを刺そうとした瞬間だったのに。
ど、どうしよう。
殺したくない。
でも、勇者だしなあ。
仲間たちが見てるし。
どうしよう。
「あ、でもてめえ綺麗な顔してるよな。魔王名乗るのやめたら生かしてやってもいいぞ?」
しまったぁぁぁぁ!
なんかちょっと偉そうに言っちゃった。
ど、どうしよう。
魔王が少し考えるようなそぶりを見せた。
どうしよう。
普通に殺したくないだけです。
魔王を名乗るのをやめてください。お願いします。
殺したくない。
「どうする?生きるか、死ぬか?」
そう言って、俺は笑って見せた。
スマイル、スマイル。
笑えばきっと何とかなる。
人に何かを聞くときや、会話をするときは笑っていると物事がプラスの方向に動くって誰かが言っていた気がする。
あ、でも俺の笑顔って気持ち悪いってみんなから言われてたっけ?
どうしよ。
笑っちゃった。
にこってスマイル笑顔しちゃったよ。
そんなことを思って固まっていると、
「生きる。」
と、魔王が言った。
よっしゃあああああ!
ありがとう。
神様。
魔王にこの選択をさせてくれて!
ありがとう!!
これで殺さずに済む。
「そうか。」
俺は、思っていることがバレないように、冷静な声でそう言った。
っしゃああああああ!
その後、俺は魔王に首輪をつけた。
魔王には、いつでも自分が召喚できるようにする首輪、と言っていたが、本当は首輪にそんな機能なんてない。単なる監視カメラ付きの鉄の塊である。そんな首輪なんてつけなくても、召喚は可能なのだが、勇者として、魔王を野放しにするのは流石に
本音としては、可愛い魔王がガラの悪い奴らなどに絡まれても監視カメラでわかってすぐに助けに行けるようにしたい、とか、自分の者だという印がつけたかった、とかいうものがあったのは誰も知らない。たぶん。
魔王、勇者に復讐する 藍無 @270
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