世界最強の魔術師が転生し世界平和を願ったならば

ゆすらぎ

プロローグ

「レスリム様!お逃げください!」


 側近のルースの声が聞こえる。

 これまでか……

 敵国との戦争中、奇襲部隊として出発した俺たちは目的地に着く前に、敵の攻撃を受けていた。

 視界の端で、仲間が魔法を受けているのが見える。

 あぁ、死ぬのか。

 今まで、世界最強の魔術師になれると言われてきた俺の人生は悪くはなかった。


「ぼーっとするな!レスリム!」


 赤髪の少女、ユイの声が現実に引き戻す。

 ユイの魔術のセンスは俺にも劣らないだろう。


「ユイ、お前も逃げろ」


 そういったつもりだが声にならなかった。

 死の恐怖が全身を襲う。

 嫌だ、死にたくない。そういった思いが湧き上がってくる。

 しかし、そういう俺の目の前でルースは魔術を受けていた。


「ルース……」


 良い側近だった。

 立場上、ルースは俺に敬語を使わなければならないが俺は親友みたいなものだと思っていた。


「死ねない」


 手を振りあげ、力を振りしぼる。


「行くぞ、お相手さん」


 そう呟き目の前にいる敵に向かって魔術をぶっぱなした。

 敵が吹き飛ぶ。

 しかし、俺は右から近づく敵に気づくはずもなく俺の体に剣が刺さった。

 歯を食いしばり、体の中に入ってくる冷たい感触に耐える。


「まだ、死なない」


 刺してきた敵の眼を見つめて、俺は呟いた。

 そうした所で目の前が真っ暗になり、俺は気を失った。

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る