15秒

幸原。

光り落ちて刹那

薄鈍うすにびの雲の隙から光が落ちてきた。


光は空で羽を広げ、町を包み込むが、そこにとどまることを彼は知らない。


光は私を一瞥して、遥か後方へと去ってゆく。

いくつもの鳥の影が大きく空を裂き、光を追いかける。


別れを告げる鐘が鳴り、その音が私に届くまえに、鐘は砂金となって吹き崩れた。


遠くの屋根の上の鶏が、気まぐれに、せわしなく顔を動かし、錆び付いた足枷から逃れようとする。


ガス灯は花開き、満足げに零れた。


鳳凰の群れが空高く飛び上がり、景色が揺らぐ。


やがて鳳凰達は形を変え、橙の逆巻く龍となって太陽を覆う。


ああ。


龍はまた形を変え、残像となって目の中に残り、消えた。


先ほどまで光がいた場所を埋めるように、見えない何かが広がるのを感じる。


木戸が肩を揺らして私を嗤う。


消え去った鐘の音が今更私を包み込む。

背後で花瓶と写真立ての落ちる音が聞こえた。


───ああ。

─────

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15秒 幸原。 @take_tanutake321

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