これドッキリじゃないの!?〜元特撮ヒーロー、異世界で再びヒーローになる!?〜
宇部 松清🐎🎴
第1話 元特撮俳優のその後
ほんの三年前まで、俺はヒーローだった。
毎週日曜日の朝八時半。テレビをつければ、俺はその中にいた。
防衛省特殊戦闘課。
それは世界征服を目論む悪の秘密組織から日本を――ひいては世界を守るために発足された極秘機関である――。
そんなナレーションから始まるのは、一応、小学生男児以下をメインターゲットとしている特撮番組『特命ソルジャー』シリーズである。
第一作の『特命ソルジャー』が放映されたのはいまからちょうど四十年前のことで、基本的に一年を一クールとし、数年の空白期間を挟んだものの今年で三十五作となる。視聴者を飽きさせないようにと手を変え品を変え設定を大幅に変え――まではしなかったが、デザインのモチーフやアイテムをその時代時代に合わせながら、子ども向け特撮番組としての確固たる地位を築いてきたのだ。
そしてその主演を張るのは、かつては、アクション俳優と呼ばれる人達だった。けれど昨今では、男性向け有名雑誌『
――で、いまから三年前、俺は『それ』だった。
闇に溶け込む黒と紫の忍び装束をモチーフにしたパワードスーツに身を包み、手裏剣などの暗器を駆使して戦う正義の味方。それが俺だった。そこでの俺の名前は、『
多くの特ソル作品がそうであるように、HAYABUSAもそりゃあ大ヒットした。変身アイテムはもちろん、それから、それに追加するパワーアップアイテムも売れに売れまくった。九字切りをアレンジした変身ポーズを真似するキッズもたくさんいた。
だけど、それも放送時のみだ。
HAYABUSAが終わればまた新しい特ソルが始まる。キッズ達の興味はあっという間に新ヒーローに向けられるのだ。どんな能力がある? どんな敵が相手? 変身アイテムは何? 決めポーズは?
俺はあっという間に過去の人になった。
新ヒーローの劇場版にはゲストってことでお声がかかるけど、それくらい。
大抵の場合、主役を張った特ソル俳優は――所属する事務所の力にもよるが――その後数年は引っ張りだこだ。ドラマに映画、CMなんかの仕事もじゃんじゃん入る。ここでうまいこと波に乗ってブレイクすることが出来れば、特撮出身の肩書がつく『人気俳優』になれる。
でも、その数年がパッとしなかったら? 波に乗り切れなかったら?
ベテラン俳優だって羨むくらいにお膳立てされたそのドラマが、映画が、もしもコケたら? そもそもの脚本に問題があったのかもしれない。同時上映作品が化け物だったのかもしれない。出演している俳優がやらかしたのかもしれない。それはそうかもしれないけど、それでも印象は最悪だ。嫌でも巻き添えは食う。こちらに一切の非がなくとも、所詮は顔で選ばれた特撮俳優、気付けばそういう評価になる。
そしてたぶん、俺はいま、そうなっている。
仕事がない。
いや、ないわけではない。
まぁ細々とはある。
だけど、波に乗って、乗りまくって、朝ドラや大河出演まで決めた先輩方には遠く及ばない。
「HAYABUSAは面白かったのにね」
「主演の俳優、あれ、名前なんてったっけ。顔は良かったよね」
「善明寺君のイメージが強くて思い出せないや」
「何かドラマとか出てた? あれ? なんか大ゴケした映画に出てなかった?」
「あーそうそう、何だっけ、なんかさ、原作改変で酷かったやつだよね。やっば、その印象しかないや」
それが俺の評価だ。
役名は覚えてるよ、善明寺君だよね?
ドラマも出てたけど、映画で大ゴケした元特撮俳優。
で、名前は何だっけ?
それが俺、
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