第12話

 貴族から依頼された「星の雫のランプ」を探すため、俺たちはふたたび情報収集に奔走する。

 魔導具を専門に扱う店や魔術師の集会所など、手当たり次第にツテを辿った。


「星の雫のランプ……確かに聞いたことはあるが、近年はほとんど見かけない」


「レアすぎて、存在自体が噂レベルなんだよね。こりゃ想像以上に難航しそうだ」


 そんな中、古物商を営む老人から貴重な情報を入手した。


「星の雫のランプなら、一度だけ見たことがある。だが、それを持っていたのは昔の大貴族で、廃墟の屋敷に眠っているともっぱらの噂だ。場所は、王都からだいぶ離れたラドン山脈の麓だったな」


「廃墟の屋敷、ねえ。そこに残されてるなら、行くしかねえな」


「でも廃墟なら、魔物や野盗が住みついてるかもしれないぜ?」


 ガルスの懸念も当然だ。

 しかし、このまま諦めるわけにはいかない。

 貴族の依頼だし、成功すれば俺の名声もがっつり上がる。


「よし、ラドン山脈まで行ってみよう。ガルス、お前は護衛兼パートナーとして同行してくれるよな?」


「当たり前だ。おれはお前の背中を守るのが仕事だ。んで、分け前はたっぷりもらうからな」


「もちろん。最高のビジネスはウィンウィン関係でなきゃ」


 こうして俺たちは廃墟の屋敷を目指すため、王都を出発する準備を整えた。

 冒険者ギルドで情報を収集し、馬や補給物資を用意する。

 道中は険しくなるはずだが、俺たちはやる気満々だ。


「エヘヘ、星の雫のランプなんて、すでに胸がときめくアイテムじゃない?」


「なんだか本当に星が降ってきそうな幻想的なランプらしいぞ。さすがにロマンがあるな」


 ガルスは大剣を手入れしつつ、楽しそうに笑う。


「でも、廃墟で見つけられなかったらどうする? 無駄足になるかもしれないぜ」


「俺は可能性がある限り、突っ込んでみるさ。商人は冒険心がなきゃ大きな利益は狙えない!」


「なるほどな。何だかお前のそういうバカみたいなところ、嫌いじゃねえよ」


「へっ、ありがとよ。バカだけどやるときはやる男、それが俺だからな!」


 準備が整い、朝早くに出発。

 王都を出たらしばらくは平原と森が続き、その先にそびえるのがラドン山脈だ。

 そこを越えた辺りに、例の廃墟の屋敷があるらしい。


「行くぞ、ガルス。星の雫のランプを絶対ゲットして、伯爵家の依頼を達成してやろうぜ!」


「おうよ。おれも腕がなるってもんだ」


 そうして俺たちは、またひとつ大きな取引の種を求めて旅立つことになった。

 廃墟の屋敷には何が待ち受けているのか……心配と期待が入り混じった冒険の始まりだ。

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