第12話
ある晩のこと。
工房で残業気味に鍛造の仕上げをしていた俺は、外の異様な雰囲気に気づいた。
月明かりの下、黒装束の集団が村の外れを歩いているのが見えたからだ。
「なんだ、あれ……夜中にあんな団体さんがうろついてんのか。まさか、盗賊か何か?」
俺はハンマーを置き、外に出る。
そっと距離をとりながら、彼らを尾行してみると、森の中の開けた場所で奇妙な儀式のようなことをしているのが見えた。
「闇商人とはまた違う感じだな……。これは何かの魔術か?」
それとなく物陰から観察していると、彼らが口々に呪文のようなものを唱え始め、紫色の怪しい光が集まっていく。
その中心には、どうやら魔鉱石のような塊が祭壇に置かれていた。
「おいおい、こんなとこで魔鉱石使って何やってんだ? あいつら、まさか魔物でも呼び出そうってのか?」
すると、突然紫色の光が閃き、辺りに不気味な波動が走る。
俺は慌てて耳を塞ぐが、頭の芯をえぐられるような違和感が襲ってきた。
「ぐっ……何なんだ、この感覚。まるで脳みそを直接掻き回されてるみたいだ」
集団の中心で、一際大柄な男が声を張り上げる。
「もうすぐだ。魔鉱石の力で封印が弱まる。そうすれば、我らの主が再び目覚めるのだ」
「主だと? 何かヤバい存在を復活させようってのか……最悪だな」
勘弁してくれよ。俺がここで魔剣を作って有頂天になってる間に、こんなわけわかんねえ連中が暗躍していたとは。
「やっぱり、魔鉱石にはいろんな使い道があるんだな。武器だけじゃなく、魔術的な儀式にも使えるのか……」
俺はとりあえず、このまま傍観していいのか迷った。
だが、ここで俺一人が突撃しても状況がわからないし、下手したら殺されかねない。
「くそ、今はまだ情報が足りねえ。ひとまず引き上げて、父さんに報告だ」
俺は息を潜めてその場を離れる。
村の近くであんな怪しい結社が儀式をしているなんて、聞いたことがない。
こいつらが“魔術結社”と呼ばれる類の組織なのかもしれない。
鍛冶屋に戻り、父さんに夜の出来事を話すと、彼は難しい顔をした。
「確かに、昔から魔術結社という噂は王都周辺にチラホラあったが、こんな田舎まで来てるとはな。しかも魔鉱石を使った儀式……危険な香りしかしねえ」
「何か大きな陰謀に巻き込まれちまう予感がする。俺の魔剣が目をつけられてもおかしくないかも」
「そうだな。あの連中は力あるものを利用しようとする。お前も気をつけろよ」
「わかってる。だけど、もしこいつらが村に危害を加えるなら、俺が全力でぶっ飛ばしてやる。魔術だろうが何だろうが、俺の武器に勝てるわけがねえ」
自信満々に言う俺を見て、父さんは半分心配しながらも頷いてくれた。
王都の監査、闇商人、そして魔術結社。
次から次へと厄介な勢力が絡み合うが、守るべきものがあるなら、俺は全力で戦うだけだ。
「この村を守るために、もっと強い武器を作らなきゃな。魔術に対抗できるような、特別な仕掛けも考えてみるか」
そう考えた瞬間、俺の血はまた熱く燃え上がる。
何だかんだ言って、俺はこういう緊迫感が嫌いじゃない。
もっと技術を高めて、どんな相手でも叩き潰す最強の鍛冶師になってやる。
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