このっ……裏切りもんがぁあああああ!!!

「まさかヒロインが敵に真っ二つにされて主人公が闇堕ちするとは……」

『ははっ、そこ書くのめっちゃ楽しかったわ〜』

「サイコパス??」


 栄華から送られた小説を読んだ。

 あんなに可愛かったヒロインが死んで新ヒロインが出てくるとは……!


『オマエの小説も面白かったわ〜。まさかあのキャラがあんなにデレるとはな〜!』

「そこ書きたかったんだよねー」

『サイコパス?』

「いや、なんでだよ」

『あははっ、冗談冗談っ!』


 栄華も小説の感想をくれるのだが、彼女の口からマイナスの感想が出ることはない。俺からすれば改善点も知りたいんだが……。


「なぁ、俺の小説の改善点は……」

『いやぁ、考えてみたけどないなぁ!』

「無いかぁ……」


 ありがたいが、それはそれで不安だな……。


『そういえばアタシ、オマエに一つ謝らなくちゃいけないことがあってさ』

「なんだよ……?」


 改まって言うものだから、少し身構えてしまう。


『今MINEで送ったの、アタシのqixivアカウントなんだけど……』

「……どれどれ?』


 URLを開く。ユーザーネームは『えいみん』と書かれており、数作の二次創作小説が置かれていた。


 その中の一つを読む。

 内容としては、大人気ソシャゲ、プリンスユナイトの喧嘩部が怪物に捕らえられ無理矢理仲良しさせられるポップな二次創作ギャグモノで……。


 ん? 投稿日……四年前?

 ……は?

 なんだこの閲覧数と評価数。

 俺はqixivに小説を掲載してはいないが、かなりの数だということはわかる。


「なんですか? これは」

『アタシの、アカウント……』


 思わず敬語になった俺に若干気まずそうな声色になる栄華。


「このっ……裏切りもんがぁあああああ!!!」

『あっはは〜……』


 思わず某巨人が出てくるアニメの主人公みたいな台詞が出た。


「言ったじゃん! 俺の小説を読んで自分も書き始めたって言ってたじゃん!」

『……ごめーんね!』

「なーにが『ごめーんね(裏声)』じゃ!」

『いや、小説って知り合いに見せていいものなんだってオマエのおかげで自覚できたんだよ。全裸って知り合いに晒してもいいんだって』

「全裸は晒しちゃダメだろ、全てに対して」

『それに、オリジナル小説を書き始めたのはオマエの小説を読んでからだし!』

「俺恥ずかしいよ!! えいみん先生ェ……!」

『うわコイツ人の話を聞いてない』


 聞いていないのではない。

 これほどの評価を得ている人に対して自信満々にエタった小説を読ませたり小説の書き方のコツを教えていたり、今彼女が書いている小説の改善点を挙げてたりしていた自分を思い出して、なんかもう、うわああああああぁぁぁ〜ッ!! ってなっているのだ。


「殺してくれ〜〜〜!!! でも書きかけの物語を残して逝けねぇ〜〜!!」

『まあ、落ち着けよ……』

「だってよ……! 栄華……ッ! 評価がッ!!」


 某海賊王になりたい少年の真似をしてみたが伝わるだろうか。


『運だよ。運。それにアタシもソレは二次創作。元のソシャゲの人気あってのものだ』

「そう、かなぁ……お前の小説の評価、同じタグが付いてるソレの十倍くらいあったけど」

『……』

「黙んないで気が狂いそうになる!!!」


 このあと俺が平静を取り戻すまで一週間の時を要したらしい。

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