『金持ちの部下に貧乏人の上司はやっかいである』
やましん(テンパー)
『金持ちの部下に貧乏人の上司はやっかいである『逆も真なり』』
金一郎は、大富豪の子息であるが、お勉強はあまり出来る方ではなかった。
ただ、やたら気位は高く、高貴である。
一方、実家の家業を継ぐ気はなく、わりに大きな全国規模の複合法律事務所に事務員として入ったのである。
出世する積もりはなく、いまさら弁護士とかは取れる見込みはないから、税理士と司法書士でがまんしていた。
まあ、難しいこと言わなければ充分だった。
まして、実家は富豪であり、巨大な邸宅がある。未来に不安などない。(うらやましい。……作者)
が、本人は自宅からは出ていってしまって、街の小綺麗なアパートに入居していたのであった。
さて、この度の人事異動で、なにがあったのか、わりに仲良しだった課長は、なぜだかスペインに飛ばされ、新しい人が来た。
貧しい中から、苦学惨学地獄行脚をして、ここにたどり着いた、まさに地獄から這い上がってきた人である。
その実家は崩壊状態らしい。
嫌というほど、貧乏を知り尽くしていた。
だから、飲食は質素を旨とし、二次会には行かない。
余計なものは買わず、真に必要なものしか購入しない。
趣味はなく、仕事以外にはまるで興味がない。
一方、金一郎は、クラシック音楽狂いで、そこは富豪の子息であるから、ピアノ、ヴァイオリン、フルート、クラリネットを巧みにこなす。
管弦楽団にも所属し、合唱団にもいた。
新しい上司は、絶対的にそれは、気に入らなかった。
もちろん、金一郎とても、職場に配慮はしていたのではある。
しかし、『配慮』は無用であった。
上司はある日、所長室に金一郎を呼んだ。
『きみね。きみの仕事は、この事務所にある。音楽は辞めたまえ。直ぐにだ。いいね?』
『いやです。いくら、あなたでも、そこまで命令する権限はない。』
『いや、ある。いやなら、辞めろ。仕事を。』
『なるほど。いいでしょう。』
ま、くびである。
金一郎は、実家には報告しなかった。
口を挟んで欲しくなかったのである。
べつに、辞めても、すぐには困らないし、まあ、仕方がないだろう。音楽を辞めるというのは、人生を辞めるようなものである。
ちょうど、作者が手持ちの大切なCDを泣きながら抱えて、いそいそとリユースCDショップに駆け込んで行く脇を、金一郎は会社から出ていったのである。
しかし、その情報は、さっそく金一郎の父親の耳に入った。スパイがいたのである。
父は、べつに、なにをするわけでもなく、電話を一本掛けた。
その会社の資産運営を支えていた出資者が、突然、いなくなったのである。
まったく、迷惑な話である。
どっちもどっちだ、と、作者は、他人事だし、もはや生活が成り立たないことで、ひどく悩んでいる。
おくさまもつっけんどんで、行く先がないのである。
🙉🙊🙈
『金持ちの部下に貧乏人の上司はやっかいである』 やましん(テンパー) @yamashin-2
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