星降る湘南の約束 あらすじも含めて9万字以上12万字以下 短編連作、オムニバスOK

鷹山トシキ

第1話 湘南

 1980年11月、湘南の海岸は、冬の訪れを感じさせる肌寒さで包まれていた。

 この地にやってきたのは、赤城和真と佐藤貴恵の二人。都会の喧騒を離れ、静かな場所で新たな生活を始めようとしていた。

 湘南は、和真にとって特別な場所だった。幼い頃、家族でよく訪れていた思い出の地。青い空、白い砂浜、そして波の音。そのすべてが、彼にとって安らぎの場所だった。

 貴恵にとっても、湘南は初めての場所だったが、和真と一緒にいること、そしてこの美しい海を見ているうちに、次第に心が開かれていった。


 二人は、海が見える小さなアパートを借り、新しい生活をスタートさせた。

 最初は、慣れない環境に戸惑うこともあったが、少しずつこの街に溶け込んでいく。近所の小さなカフェでコーヒーを飲んだり、サーフィンの練習をする人たちを眺めたり、二人の時間はゆっくりと過ぎていった。

 そして、この湘南で、二人は様々な人たちと出会う。気さくな地元の人々、個性豊かなサーファーたち、そして、同じように新しい生活を始めた若者たち。


 波の音と、焚き火がパチパチと音を立てる音が心地よく響く。赤城和真と佐藤貴恵は、砂浜に腰を下ろし、満天の星を見上げていた。

「きれいだな」

 貴恵が呟くと、和真は彼女の横顔に視線を向けた。月の光に照らされた彼女の横顔は、いつもより柔らかく見えた。

「うん、いつもより星が多い気がする」

 和真がそう言うと、貴恵は微笑んだ。

「きっと、特別な夜だからだね」

 二人はしばらく無言で夜空を見上げていた。静寂の中、二人の距離は少しずつ近づいていた。


 和真は、幼い頃からずっとそばにいた貴恵に、特別な感情を抱いていた。それは、友情を超えた、もっと深くて切ないものだった。しかし、その気持ちをどうすれば伝えられるのか、ずっと悩んでいた。

貴恵もまた、和真に対して特別な感情を抱いていた。一緒にいると心が安らぎ、どんな悩みも打ち明けられる。でも、それは友情の範囲を超えているのか、自分でもよくわからなかった。


「貴恵、実は…」

 和真は深呼吸をして、覚悟を決めたように口を開いた。

「ずっと言えなかったことがあるんだ」

 貴恵は、和真の言葉にドキドキしながら、彼の顔を見つめた。

「…実は、貴恵のことが好きなんだ」

 和真の告白に、貴恵は言葉を失った。しばらくの間、二人は何も言わずに、ただお互いの顔を見つめていた。

「…私も、和真のことが好きだよ」

 貴恵の言葉に、和真の顔が輝いた。二人はゆっくりと顔を近づけ、静かにキスを交わした。


 夏の夜、二人の気持ちは一つになった。これから二人は、どんな未来を築いていくのだろうか。

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