【ショート版】ギルド移転物語~ギルマスの俺、交渉でウエメセ貴族にさんざん足元を見られてきたので、ギルドを隣町に移転することにした。うちの経済効果のでかさを舐めんなよ?

マナシロカナタ🐈‍⬛ネコタマ3巻発売決定

第1話「嫌なら出て行ってくれてもいいんじゃよ? どうぞご自由に」

 元S級冒険者のフィブレ・ビレージは、今はポロムドーサという地方都市で、冒険者ギルドのギルドマスターをしていた。


 魔獣討伐や遺跡探索など、冒険者の需要増もあって、冒険者ギルドは数あるギルドの中でも安定した収益を上げ続けている優良ギルドの1つだ。


 よってそのギルドマスターともなれば、たいした苦労もせずにギルドを運営していける――はずなのだが。


 ことポロムドーサ冒険者ギルドに関しては、事情が違っていた。

 というのもここの冒険者ギルドは、ギルドの施設の全てをとある貴族から借りて運営していたからだ。


 今もギルマスのフィブレと、施設所有者である商人あがりの準貴族サー・ポーロ士爵――金で爵位を買った――との交渉が行われていたのだが。


「それでは施設利用に関する定例協議を始めるとするかのぅ。なにやらギルドから要望があるのだとか? 言うてみい」


「では当ギルドからの要望をお伝えします。最初に――」


 高そうな椅子にふんぞり返るサー・ポーロ士爵を前に、フィブレは手に持った羊皮紙を読み上げていく。


1、施設利用料の減額


人口が100倍以上違う王都の地価で使用料を計算するのは、あまりに高すぎる。


2,老朽化した施設の改修


資金はギルドが全額出すので改修させて欲しい。

訓練場も手狭なので拡張したい。


3.ギルド内食堂の運営権のギルドへの委託


現在は指定された業者を使っているが「高い、少ない、まずい」と長年クレームが出ている。しかしどれだけ伝えても改善されない。


4.周辺の飲食店の出店規制の緩和


指定業者のみしか出店できないため競争が起きず、高い、少ない、まずいとクレームが出ている。


「――以上となります」


 読み終えたフィブレはサー・ポーロ士爵へと視線を向けた。

 するとサー・ポーロ士爵はコンコンと机を指で叩きながら言った。


「なるほど、改修するための費用はそちらが負担をする、と。つまり金があるんじゃの。君たち冒険者ギルドは、十分すぎるほど儲けているというわけじゃ」


「改修のための費用は何年も積み立てたものであって、決して儲けているわけではありません」


 儲けているのは高い使用料で暴利をむさぼるお前の方だろうが――というセリフを、フィブレはなんとか飲み込んだ。


 事実、冒険者ギルドの利益はほとんどサー・ポーロ士爵によって吸い上げられており、手元に残るのは雀の涙ほどの金額に過ぎない。


 それを何年もコツコツと積み上げて、なんとかまとまった額にしたのだ。

 儲けているなどと言われるのは、心外もいいところだった。


「なるほどねぇ。要望はわかった。では結論を伝えよう。来年からは、施設使用料を2倍に引き上げることとする」


「なっ! ちょっと待ってください!」


 信じられない言葉を告げられ、フィブレは思わず大きな声をあげた。


「なんじゃ、うるさいのぅ」


「申し訳ありません。ですが既に施設使用料は超が付くほどの高額です。要望にも使用料を下げて欲しいとあったはずです。なのにさらに高くするなどと――」


「嫌なら出て行ってくれてもいいんじゃよ? 他にも借し先はいくらでもあるでのぅ。どうぞご自由に。ま、出ていく先があるならだけどのぅ」


 クックックとサー・ポーロ士爵は下卑た笑みを浮かべる。


「く……っ」


 完全に足元を見られているのだが、大所帯の冒険者ギルドをそのまま受け入れられる大きな施設は、近隣に存在しないのもまた事実だった。


 つまり冒険者ギルドが出ていくことができないと分かったうえで、サー・ポーロ士爵はさらに利益を巻き上げようとしているのだ。


「ではこれにて今日の議論は終わりじゃ」

「ま、待ってください」


「待たぬ。君と違ってワシは忙しいのだ。グダグダ言うなら、使用料を3倍にしてやってもよいのだぞ?」


 サー・ポーロ士爵はニマニマと笑いながら、フィブレを追い払うようにシッシと手を振る。


「……失礼しました」


 フィブレは忸怩じくじたる思いを噛み殺しながら、サー・ポーロ士爵の屋敷を後にしたのだった。


―――――

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