異世界転生２度目の俺『スキル創成』を駆使して異世界転移者養成学校の『のじゃロリ』教師をお手伝いする

のじゃロリ教師物語

プロローグ

1話 くまさんパンツを見たら防犯ブザーを鳴らされた

　三年前、そう。中学一年の時だ。

　俺は異世界に転移し、激しい戦いの末に魔王を倒した。

　日本に帰ってきたら、時間はまったく経過していなかった。だから、長い夢でも見ていたのかと戸惑ったんだが……。異世界で覚えたスキルは、現実世界でも使えるようになっていた。

　そう、夢ではない。

　俺は確かに異世界でスキルを覚え、魔王を倒したのだ。

　共に旅をした女魔法使いや聖女から「異世界でいっしょに暮らそう」と誘われたが、俺は日本に帰ることを選んだ。

　ふたりとも美人で俺にベタ惚れだったし、断る理由はない気がするんだけど、なんで俺は帰ってくることを選んだのだろう。

　ああ、そうだ。

　ハッキリとは覚えていないが、やり残したことがあるような気がして帰還を選んだんだ。

　――異世界から帰還しての三年はあっという間だった。

　俺は、たまにスキルで楽をしつつも平凡な高校生を演じている。

　何で今、そんな三年前のことを思い出しているのかというと、まさに俺が転移する切っ掛けとなった交通事故現場で、暴走トラックが小学校低学年くらいの女の子をはねようとしているからだ。

　アイスを買ってコンビニから出たら、直ぐ目の前で、事故寸前の光景だったのだ。

　いかんいかん、スキル『思考加速』でゆっくりと思い出に浸っている場合ではない。

「周囲に他の人間はいないか。まあ、見られても問題ないがな」

　俺は常人の領域を超えた速度で駆けだす。

　常時発動型のスキル『身体強化』によって、俺は二十メートル級のドラゴンと素手で殴りあうこともできる。トラック程度に怯む理由はない。

　俺はガードレールを掴み、体を地面と水平にするようにして飛び越える。

　別に格好つけた飛び方をしたかったわけじゃない。急加速してジャンプしたら体が遠くへ飛んで行ってしまうから、ガードレールを掴んだに過ぎない。

　俺は路上の女の子をそっと抱えて元の位置に戻る。その際の風圧で女の子のスカートが捲れて子供っぽいしましまパンツが丸出しになってしまった。

　トラックが通り去るのを確認してから女の子を下ろしてやり、俺は腰を落として視線を低くし、改めてパンツを鑑賞する。へへっ。役得だぜ。

「可愛いしましまパンツを穿いているんだし、ちゃんと横断歩道を渡るんだぞ」

「……?!」

「怖かったけど、お漏らししなかったな。偉いぞ！」

　捲れたままになったスカートを戻してあげた。

　ぽんぽん。

　頭を撫でてあげると、女の子はビクッとして一歩下がり、俺の顔と道路を見比べてから……防犯ブザーを鳴らした。

　ピルルルルルッ！

　卵を奪われたコカトリスの激怒ボイスのような、とんでもなくけたたましい音が周囲に響く。

「おい待て。なにその不審者を見るような目は。ん？」

　しまった！

　日本だと、この子の反応は正しい！

　パンツを見られて「はきゅぅぅんっ、お兄ちゃん大好き」なんて言うのは、異世界の少女くらいだ。

「すまん！　悪気はなかった！　お兄ちゃん、外国暮らしが長くて、つい！」

　俺はぺこぺこと頭を下げながら、常時発動スキル『知覚強化』で周囲の状況を把握し続ける。逃走経路は……あっちだな。

「ほんとごめん！」

　最後にもう一度大きく頭を下げると、その時の風圧でスカートが捲れたらしく、俺が顔を上げるときにまたしまパンが見えた。

　俺は人目を避けながら走ってその場を離れた。

　すぐに、自宅近くの、ベンチしかないさびれた公園に到着した。

　――ふう。

　身の安全のために一部のスキルを常時発動状態にしているせいで、やっちまったぜ。

　ハッキリ言って、異世界で習得したスキルを持て余し気味だ。

「この世界は平和すぎる。魔王軍と戦っていたあの頃が懐かしい……」

　また異世界に転移したら、数々のスキルを役立てることもできるんだろうか……。

　こんなことを考えていたからじゃあるまいし、まさか翌朝、本当に異世界に転移することになるとは、この時は思いもしなかった。