第7話 逆恨み

7話 逆恨み



 岩で出来た巨大な拳が振り下ろされ、爆発の様な土煙が舞い上がる!


「獲ったぁ!ヨシキさんのハンマーパンチの直撃!!ザマァみろってんだ!!!」


「いや、待てタクマ。感触がおかし………いいっ」


 土煙が晴れ、拳を受け止めて仁王立ちする俺の姿を見て驚愕する2人。


「てめぇ!なんの手品を使いやがった!合体を使える上級プレイヤーだったのか?!ますます気に入らねぇ!!ヨシキさん!そのまま抑えてて!その間に俺が!!」


 ここでしれっと他人のフリしてるカイトに目配せする。

 ちょっ!おま……てめぇでどうにかしろって言うのか!


「だぁぁぁ!」


 ズン!と上から抑えつけてくるヨシキの岩の拳、そしてこちらに突進してくるタクマ、うかうかしてたら無防備な背中から刺されてバッサリだ!


 俺は力を振り絞り岩の拳を跳ね除けるとタクマに攻撃されまいと距離を取る。


「いったい何がしてぇんだよてめぇは!こないだは相棒がツチノコだからってちょっかいかけて来て、次はそん時の逆恨みか?随分肝っ玉が小さいんだな!」


「お前に返り討ちにされてからコメント欄でバカにされっぱなしなんだよ!!このままじゃ俺のフラストレーションが溜まりっぱなしだ!何がしたいかだって?俺を負かしたお前に仕返しがしたいんだよ!!珍しいツチノコの相棒を見せびらかしてすみません!さらにツチノコと合体できてすみませんって俺のカメラの前で土下座させないと俺の気が収まらないんだ!」


 「本来はお前をボコした後により俺の強さを分からせるダメ押しの為に取っておいたんだが、お前も出来るなら話は別だ!合体!!」


 タクマがインプと合体してカラフルなレザーの上下に目元だけ仮面を付けた如何にも殺人ピエロみたいな姿に変身する。


「ヒャハハハ!ヨシキさん!挟み撃ちだ!アンタは左から!俺は右からぁ!」


「コウタと言ったか、お前に恨みは無いがコレもこの精騎士物語の中で己に課したロールプレイの一環だ。悪く思うな!」


 ズンズンとまっすぐ向かって来てパンチを繰り出すヨシキ。

 お前左からとか言ってたろうが!

 避けるのも気に入らないから向かって来る拳に向かってこちらもパンチする。


 武術や訓練なんぞ知らぬと言わんばかりのまっすぐなテレフォンパンチ同士がぶつかり、激しい衝撃波を飛ばす!


「ヨシキとか言ったか?チンケな用心棒で満足かよ?強ぇ奴は強ぇ奴なりの品格ってモンがあるんじゃないか?」


「そういうのがつまらないからこういうキャラをやってんだろ!!現実世界じゃあ気に入らない奴をぶん殴るとすぐに豚箱送りだが、ここじゃヒーローになれる!」


 ズン……と下腹部に衝撃を食らい俺はぶっ飛ばされる。ヨシキの股下を潜る様にしてタクマが俺に蹴りを食らわせてくれた様だな……


「嫉妬しちゃうなァ……許せないよなァ……ズルいよなぁ!!だから俺の再生数の為に死ね!」


 瓦礫に埋もれる俺に追撃するようにスタンピングしてくるタクマ、顔を中心にガンガンと踏みつけられる。


「勝手に俺を恨みやがって!こっちだってお前みたいな奴は気に入らないんだよ!!自分が目立つ為には何しても良いと思ってやがる!」


 俺のセリフにタクマは勝ち誇った笑みを浮かべて朗々と語る。


「逆だよ!!今までは何も出来なかったんだ!!だが、やっと何しても良い世界が出来たんだ!小言言ってくるクラス委員長や真面目クン!すぐにやめろやめろ言って来る教師連中、そして力ずくでいう事聞かせようとしてくる警察!そういう邪魔モノが居ないこんな世界がさぁ!!」


「モンスター相手ならゲーム感覚なのか戦えるが、人間相手にリアルな暴力は振るわないし振るえないんだ!大抵の奴はな!!だから好きな事が出来たのに反撃して来やがって!許せねぇんだよお前みたいな奴は!」


 黙ってオレのストレス解放のサンドバッグになれ、と。

 つまりコイツはそう言ってるんだな?そしてコイツの視聴者も少なからずそう思っていると。


 クソだな。


「だったら俺もお前を許さなくても良いよなぁ!!やり返される覚悟も無く暴れてんじゃないよ!!」


 踏みつけられる足を掴み、一気に立ち上がるとブンブンとまるでこの間ツチノコにそうしていた様に振り回す。


「精騎士物語ってゲームの中だからやり過ぎても死ななくて好都合なのはこっちも同じだよ!」


 すぐ近くで俺がタクマに踏みつけられるのをみていたヨシキにタクマをブラック・ジャック(革袋に砂を詰めた物を指す。某無免許医ではない)に見立てて叩きつける。


 コレが2対1で戦う時の俺の答えだ!


「お前が俺を気に入らないのは別に構わないが、だからといって俺に攻撃を仕掛けようとするんじゃないよ!!反撃しなきゃいけなくなるだろ!!」



 数分間、人間同士がぶつかる嫌な音がした後にヨシキとタクマのアバターが光となって消える。


「ふぅ……カイト、おまたせ。今日は何処に行く?」


 一仕事終えたと周りを見回すと上級騎士が俺に向かって武器を構えていた。


「ちょっと話を聞かせてもらおうか」

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山の精騎士〜ツチノコかと思ってたら何かやたらデカかった〜 コトプロス @okokok838

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