お酒とタバコ

今回はちょっと人格を変えてお届けします。


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 おばちゃん若いころね、いろいろ悪いことに手を染めてきたわ。

 酒とタバコも20歳になる前に手を出していたの。

 これ大っぴらになると色々とまずいからここだけの話にしてね、おばちゃんとの約束。


 お酒はね、初めて口にしたのは小学生のころだったわ。

 ジュースみたいなお酒でね、一口二口飲んで頭がガンガンしてそれ以上は飲めなかったの。

 それからしばらく口にすることはなかったんだけど、次に飲んだ記憶は大学に入ったあとの新歓コンパってやつよね。

 その時も一杯飲めないうちに頭が痛くなって体が拒否をしたの。

 そこではそこまで無理やり飲まされることはなくて無事に終わったのだけれど。


 おばちゃんが大学生の頃の大学って一年に一回ぐらい急性アルコール中毒で救急車を呼ぶぐらいお酒を強要されるのが当たり前の時代でね、おばちゃんお酒飲むと少量で気持ちが悪くなっちゃうんだけど何度も一気コールで無理やり飲まされたわ。

 会の途中からトイレから離れられなくなっちゃうぐらい嘔吐しちゃって、大変なことになっていたの。

「吐けば吐くほど酒には強くなる」なんて言われていたのよ。

 でもね、お酒に強い弱いは体質なの。アセトアルデヒドを分解できるかどうかなの。生まれつきなんですって。無理して飲むと肝臓を壊すわ。弱い人は絶対無理して飲んじゃダメ。

 じゃないとおばちゃんみたいに卒業式の謝恩会をトイレで震えて過ごすおバカさんになってしまうわ。

 

 それでも大学時代はそんな与太話をみんな信じる情報弱者ばかりだったから、ウーロン茶を飲む奴は非国民と同然の扱いを受けたわ。ウーロン茶飲みながら「これはウーロンハイです!」と言い張らなきゃならなかったの。

 本当に今思うと謎文化よね。

 飲み会をできるだけ避けていたから病院送りは逃れられたけど、おばちゃんが社交的なタイプだったらやばかったわ。

「救急車に乗って一人前」とか医療機関関係者に刺されても文句言えない標語があったもの。

 言って笑っていた奴に、飲酒したあとのあの気持ち悪さや震えが止まらなくて死んでしまうかもしれないと感じる恐怖を味わせてやりたいわ。今からでも。


 

 だからね、おばちゃんここ数年年単位でお酒を嗜んでいないの。

 でもお酒を飲んでいる人の楽しそうな様子はうらやましかったから、酒飲みの小説を書いて楽しさを疑似体験してるのよ。

 ふわふわと現実と夢の境目みたいな世界、楽しいわよね?

 

 大学の強制飲み会しか知らなかったらお酒なんて猛毒と同じと忌み嫌っていたでしょうけど、楽しい世界だって思えたのは友人との飲み会が楽しかったからよ。

 居酒屋に行っても飲まなくても誰にも非難されないって大事ね。美味しそうにお酒を飲む友人とおしゃべりするのは楽しい時間だったもの。

 「三十路女は楽しく飲みたい」はあの時間があったからこそ生まれたのよ。


 飲まない分食べる楽しみっていうのもあったから、今でも居酒屋の料理がものすごく恋しくなる時があるわ。

 職場の飲み会はコースだから、気ままに食べたいものを頼むことができないのよね。

 若いころのおばちゃん、飲めないくせにいろんな店を飲み歩いていた気がするわ。

 あの頃本当にワルい小娘だったわ。


 中でも今でも印象に残っているのは「たまごとたまごとたまごのサラダ」かしら。

 鶏卵とカペリンの卵と、あともう一つなんだったかしら? タラコではなかった気がするのよ。お気に入りで定番メニューだったの。あとはとろろ昆布が乗った揚げ出し豆腐ね。真似して作ってみるけど、揚げ出し豆腐がうまく作れるわけがないのよ。揚げ物苦手なの。


 「三十路女は楽しく飲みたい」で日本酒自慢のお店を書いたんだけど、あれは実在するお店をモデルにしているの。亜由美先生と飲んでたお店よ。頼子が一時的な味覚障害から立ち直ったお店。

 大根カツが美味しすぎて思わず頼子にも食べさせちゃった。

 こういう居酒屋さんの料理をまた食べに行きたいのよね。

 お酒を飲めないから一人じゃいけないし、付き合ってくれるような友人がいないのよ。

 会社の飲み会はコースだから、料理はほぼ定番でしょ。

 メニューを見て食べたいものを食べるってことができないのよね。残念。

 

 と、まあちょっと脱線したけど、そんな感じでおばちゃんとお酒は相性が悪いの。

 でもお酒の楽しさを知っているから嫌いにはなれない、おわかりいただけたかしら。

 今は飲み会に参加しても最初からウーロン茶よ。

 それを許してくれる文化がとてもありがたいわ。

 


 煙草については、そうね、こっちも大学に入って一本もらって吸ったのが煙草デビューよ。

 その後、就職した後ちょっと荒んだ時代があってね。もう自分なんてどうなっても構わないと思ってたころに吸っていたわ。

 自傷行為の一環だったのかしら?

 

 転機はいつだったのかしら? 時期は覚えていないんだけど、煙草を吸った後って体中が煙草臭くてたまらないの。

 指にも煙の臭いが染みついて洗っても取れないし、髪の毛も服も、全部が臭くてたまらなくて、それがストレスだって気づいちゃったのよね。

 吸うのを辞めたら臭いに煩わされることもなくなってとってもすっきりしたの。

 それっきり。


 禁断症状は? って思うでしょ。それがね、全然なかったの。

 本当に臭いが嫌いだったんだと思うわ。

 あの臭いがまとわりつくと思うと絶対に吸いたくないって思うもの。


 多分煙草も合う合わないがあるんだと思うわ。

 おばちゃんは酒に加えて煙草も合わない体質だった。それだけ。

 無駄にお金を使わなくてよかったわ。って今は心から思えるの。



 そんなお酒と煙草のお話よ。

 中年の悪自慢よりつまらない話はないって言うけど、ここまで付き合ってくれてありがとう。次も色々赤裸々に語りたいけど、そんなに面白い話はないかもしれない。

 それでも読んでくれたら嬉しいわ。

 それじゃあまたね。


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