第17話 録音日時2023年5月15日 録音データ     

【男の声】

もう時間の感覚がない。

工場の中に潜入をして、ずっと彷徨い続けている。

こうして録音をしているが

こうでもしないと、発狂してしまいそうだ。

いや、もう俺は狂っているのかもしれない

一体何日歩いているんだろう。

この場所はとてつもなく広い

外観では、とてもそんな広くは見えなかったのに。


倉庫の番号、『15687222588165452223番』と書かれている。

もはや意味をなさない数字だ。


それでも、この場所を出るために、抗うしかない。

水も食料も取ってはいないが

なぜか体は平気だ。

いや、むしろ平気であることのほうが地獄なのかもしれない。

この状況だと、ある意味死んだ方が幸福なのかもしれないからだ。


ずっと同じ道であり

外に出れる場所もなく窓もない。

たまに通りかかるやつと言えば……


【???】

すみません!すみません!!

ここどこですか??

ずっと出口を探してるんですけど、どこにもないんです!!

スマホの充電切れちゃって、連絡取れないんです!!

ずっと出口、ずっと出口探してるんです!!

僕、家に帰らないといけないんですよ!

家に、家に、家に

帰りたい!!帰らせて!!帰る!!帰りたい!!

なんで無視するんですか??無視しないでくださいよ!!

無視しないでよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

話聞いてよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお



【男の声】

話しかけたら終わりな奴だ。

きっと死ぬことよりも恐ろしい目に合ってしまう。

なんでこんなことになってしまったんだ。

興味本位で、来るべきではなかった。

後悔しても遅いのだろう。

雑誌記者の話を聞いて、金目当てで来てしまった。

こんなところ、金があっても出れないんじゃ意味がないじゃないか。


録音の電池もそろそろ限界だ。


この録音もできなくなったら

俺はどうなってしまうのだろう。


声が、声が聞こえる。

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