3 最大の罠 〇〇が多すぎる! 下

 というわけで、よくある機動戦士的ロボット作品のロボットの部分を戦車に置き換えたらどうなるかですが。


 まずは、戦車がどういう代物かを考えなくてはなりません。戦車乗員には、基本的には次のようなポジションがあります。



・車長

 戦車の頭脳担当。この人が他の乗員に指示を出す、要は船で言う艦長さんです。いわゆる"隊長"として、他の戦車を率いる場合もこのポジションです。


・砲手

 大砲をぶっ放す人。この人がポンコツだと、当然射撃が当たりません。国や時代によっては車長と兼任です。


・操縦手

 戦車を走らせる人。運転が下手だと事故るわ行きたい場所に行けないわで戦うどころじゃないです。こちらも車長が兼任することがありました。


・装填手

 主に大砲に弾を込めてる人。自動装填装置がある戦車だと必要なし。

 しかしながら、車長と一緒に周囲を警戒したり、一時的に車長を代行し得る唯一のポジションだったりと利点も多く、自動装填装置とどっちが良いかは未だに議論の的になっています。


・通信手(車体機関銃手)

 二次大戦の頃、無線機は現代と違い操作が複雑で、高度な専門知識が必要でした。というわけで、無線機の取り扱いを担任する専門家。無線機がない戦車も、車体の機銃を操作する為にこのポジションがいることがあります。

 いろいろ洗練された現代戦車にはないポジション。


・その他

 車種によっては、大砲がデカすぎて装填手が2人以上とか、大砲がいっぱいついててその分人数追加、予備操縦手とかいう大祖国的なお仕事等、更なる人員を必要とする場合も。ちょっと特殊なケースなんで今回は割愛。




 さて、これらは何を意味するか?


 要はですね、"主人公機"なり"ライバル機"なりをただ動かすだけでも、最低3人、多くて5人の人間が必要なのです!!


 これは非常にやべーです。前回語った設定でお話を作るなら、「〇〇、行きます!!」「✕✕、出るぞ!!」「□□、発進する!!」って1機がカッコよく出撃して活躍する度に、それだけで毎回1機ごとに3〜5人のキャラ描写を必要とする訳ですよ!!


 ライバルが通常の3倍な速さで迫りくるだとか、頼れる仲間たちとの背中合わせ的共闘も詳細に描くなら、当然最低限必要なキャラはもっと増える訳です。


 しかも一人や二人ではありません。日曜日の朝にやってる、スーパーな戦隊レンジャーやプリティでキュアキュアなヒロインたち一作品ぶんにおけるメインキャラ並の人数が、です。


 つまり、そいつらだけでお話作れる人数だよぉ……


 アニメや映画なら、声優さんや俳優さんが増えちゃいますよね。万が一、"超豪華キャストで贈る!!"とかやると採算取るの更に大変でしょう。唯でさえ需要ないジャンルなのに。


 よほど面白いと確信してもらえなきゃ、ゴーサイン降りないのは想像できますよね。


 声が要らない漫画も、それだけキャラデザが増えます。どう考えても書き分けめんどくせぇ……


 そして更にやべえのが小説ですよ!!

 映像媒体じゃない都合上、ちゃんとしっかり描写しようとすると、とにかく場面が複雑化していきます。


 小説を書くのによく言いますよね。登場人物は増やしすぎるなと。誰が誰だか分からなくなると。視覚でぱっとキャラを見分けるができない小説の不利点がクリティカルヒット!!


 車長が禿で、砲手がリーゼント、操縦手はアフロとかキャラ付けしたところで、地の文でそう言った特徴を毎回書くわけにもいきません。


 おっと!! "そんな描写省いちまえ"って思いました? 私もそう思う。


でも、戦車だとこれが厳しいです。


 軍艦だと、「各セクションでなんかやってんなあ……」でも大丈夫かもしれません。いや、書いたことないですけど、たぶんいけます。


 何故って、彼らは艦長と直接やり取りする描写は無くても、戦闘シーンが成り立ちますよね?


艦長「なんかすっごい主砲、発射!!」


副長的な人とかオペレーター的な人

「了解!! なんかすっごい主砲、発射用意!! 目標、敵の戦艦!!」


艦長「主砲、ッてぇー!!」


 このやり取りと大砲なんかが動いたりしてガッチャンガッチャンするシーンは描写されても、弾込めるなりエネルギー充填作業する人たち、狙いを定める人、実際に発射ボタンをポチッとな♪をする人とかに、一人一人に詳細なキャラ付けがされていて、めちゃくちゃ細かく描写される作品、あまりないのでは?


 少なくとも、私には覚えがありません。


 でも、戦車はそうは行きません。同じ戦闘ユニットに乗る一蓮托生の仲間なのは同じはずなのですが、これはなんなのか?


 いざ描写してみると分かるのが、"距離感"的なのが全然違う。これがたぶんその原因です。


 この辺り、次回により詳細を書いてみますね。

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