最終章:追跡の果て

 グラコロとピクルスは、地下の実験室での激しい戦いから脱出し、施設の外に向かって駆け出していた。しかし、背後からはアンドロイドたちの足音が迫り、ユウタの冷徹な声が空気を切り裂いた。

「逃げても無駄だ、グラコロ。すべては終わったんだ」

 その声に、グラコロは振り返らずに走り続けた。ピクルスも懸命に彼を支えながら、二人の足取りは確実に施設から遠ざかっていった。しかし、逃げれば逃げるほど、ユウタの言葉が頭の中で響き渡る。

「すべては終わったんだ。お前は、ただの人間に過ぎない」

 グラコロはそれを振り払うように、必死に前を向いて走った。だが、ユウタの言葉が心の中で消えることはなかった。自分が、どうしてこの戦いに挑み続けるのか。その答えを見つけるために、彼は足を止めるわけにはいかなかった。

「ピクルス、何か方法はあるか?」とグラコロは喘ぎながら尋ねた。

「あと少しだ。基地の外にあるトンネルに入れば、アンドロイドたちをかわせるはずだ」ピクルスは肩で息をしながら答えた。「でも、これが最後のチャンスだ」


 二人は全力で走り続け、ついにトンネルの入り口にたどり着いた。しかし、その瞬間、背後から聞こえたのはアンドロイドたちの足音ではなく、ユウタの声だった。

「逃げられると思っているのか?」

 振り返ると、そこに立っていたのは、かつてのユウタではなかった。彼の目は完全に機械的な光を帯び、体の動きも不自然にぎこちなくなっていた。プロジェクト・ナイトの影響で、彼はもはや人間ではなく、全く別の存在となっていた。

「ユウタ、もうお前を救うことはできないのか?」グラコロは、その姿に悲しみを感じながらも、冷徹に問いかけた。

「私が選んだ道だ。もはや戻れない」ユウタは冷たく言った。「お前の兄が、私に力を与えた。それが、全ての真実だ」


 ユウタの言葉に、グラコロは胸が痛んだ。ユウタは、兄の死を乗り越えることなく、機械に心を売り渡した。そして今、彼が示すのは、未来の兵士としての冷徹な支配のビジョンだった。

「お前が…こんな風になってしまうなんて」グラコロは低く呟いた。「でも、俺は諦めない」

 グラコロは、突如としてユウタに向かって駆け出した。その一瞬、ピクルスが叫んだ。「グラコロ、危ない!」

 だが、グラコロは意を決して走り続けた。ユウタは無表情でグラコロを迎え撃とうとしたが、グラコロはその手をかわし、背後に潜んでいたアンドロイドたちの隙間を巧妙に突いた。そして、機械の支配から逃れるため、トンネルの入り口に突入した。

 ピクルスもそれに続き、二人は地下の隠された道を走り続けた。やがて、トンネルの先に、古びた車両が待っていた。それに乗り込むと、グラコロは深く息を吐きながら言った。「これで、終わりだ。ユウタに追いつかれる前に、この場所を離れる」

「でも、ユウタはもう手がつけられない。これからどうする?」ピクルスは眉をひそめながら尋ねた。

「俺たちが出来ることは、彼を倒すことじゃない」グラコロは静かに答えた。「彼を止められるのは、俺たちではない。だが、プロジェクト・ナイトの真実を、世間に公表することはできる」


 その後、グラコロとピクルスは、帰国するための飛行機に乗り込み、ドイツで得た証拠を持ち帰った。プロジェクト・ナイトの存在は、すぐに世界中で問題視され、報道機関や政府の手によって、真実が公表された。


 ユウタの存在は、もはや不気味な伝説として語られることとなったが、グラコロはその後もプロジェクト・ナイトに関わる暗闇を追い続けた。彼は知っていた。ユウタが犯した選択がもたらした影響は、もはや簡単には消えない。


 そして、兄の死の真相も明らかになり、グラコロは兄が果たせなかった使命を全うし、ようやくその心に少しの安堵を覚えるのだった。


 ――戦いは終わった。しかし、追跡は続く。



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マックドドッグス 鷹山トシキ @1982

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