第2話:葡萄月の4日に来た手紙への返事

 この手紙は対象A(自称トゥードル・ゲンジー)がクレメリア革命暦648年9月21日(葡萄月グレーペスの4日)に送った手紙に対してベーデン・モンバドゥール氏が送った返事である。


 お手紙ありがとうございます。右も左も分からない状況だった貴方が手紙を出すまでにクレメリアの言語を上達されたことに驚きと共に喜びを感じます。今、教えている言語は「イスティアン言語」と呼ばれているものです。この街、クレイマリーポートで話されている言葉ですので、覚えていけば覚えていくほど皆様と会話をすることができるようになりますので、一緒に頑張って覚えていきましょう。

 それにしてもトゥードル。あなたが別の世界からこちらへやってきたという話を聞いて驚きました。最初は皆異界からやってきた魔神ではないかと怯えていましたが、困惑する貴方の姿を一目見て、「ああ、これは本当に予想外の出来事がこの人物にも起こってしまったんだな。」と思ったわけです。話す言語もコチラでは全く分からず、困惑したものです。

 ただ、見た目こそこの世界に多くいる開拓フロンターの民に近いので、言葉を覚えればきっとこの世界にも馴染めると思います。そうそう。貴方の世界では開拓フロンターの民をニンゲンと発音するようですね。貴方がいた世界についても大変興味深いです。貴方のいた世界のニンゲンというものも、我々のようにパンや肉を食べ、畑を耕し、本を読み、道具を使用する民族だということだけはよく分かりました。実験も兼ねて箒を渡して玄関を掃除するジェスチャーをしたところ、君は難なく箒を用いて玄関を掃いてくれましたね。異界学の研究においてこの動作は大きな発見となりました。我々の住む世界クレメリアとは別の世界に、我々と同じような生活をする別世界の存在があるということです。君に出会えた事を幸運に思います。これからも、お互い良い関係である事を祈っています。

ベーデン・モンバドゥール

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