二蹴 サクマヒメ

「まるで夢みたいな~、激情のバレット~。もっと速く、もっと強く、撃ち抜け~」

 サクマヒメは歌うようにシノブや平にパスを出す。サクマヒメはパスの名手で、ドリブラーシノブやシューター平にアイデアを与えるパサーサクマヒメである。小柄なシノブよりさらに小柄な、ギャグみたいな頭身をしている彼女だが、そのパスの技術には目を瞠るものがある。

「サスガヒメだぜ‼」

「サスガだヒメ‼」

 平やシノブが褒めるものだから、サクマヒメは得意になる。

「もっと速く、もっと強く、撃ち抜け~」

 サクマヒメのパスが加速し、シノブのドリブルや平のシュートも連動的に加速する。加速して初めて、彼女らは彼女らの先へ行けるのだ。

「調子に乗るなヒメ‼」

「ノルナヒメ‼」

 そう言われると、サクマヒメのパスは減速する。加速しすぎていたから少し減速させるくらいが丁度良い。この三人が牛尾中学校の攻撃的三角形であり、デルタドレアムと呼ばれる。このデルタドレアムを止められるものは殆どいない。まさに無敵の人達だ。中学生離れしたその連携に、中学生達は往々にチビっていく。

「すんげ、バケモン」

 七瀬虹子も例外ではなくチビっていく。七瀬は牛尾中学校のDFで、下手だがなかなか根性のある奴だ。デルタドレアムばかり注目されがちだが、この七瀬のような縁の下があってこそデルタドレアムも輝けるのだ。

「タイラーインパクト‼」

「シノブストリーム‼」

「激情のバレット‼」

「七瀬レインボー‼」

 四者が四様の必殺技を出し、鯨田中学校を追い詰めていく。鯨田中学校は有り得ないほど点差を開かれ過ぎて、全員めちゃくちゃチビってしまっていた。そしてあの台詞を呟く。

「すんげ、バケモン」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る