第13話 暗闇の中の微光
ハルカが通信塔を後にしてから数時間が経過していた。夜の冷たい風が彼女の頬を撫でる中、彼女の頭の中はレイの犠牲でいっぱいだった。
「無駄にしない…絶対に。」
荒野を歩き続ける彼女の手には、レイが持たせてくれたデータが入った端末が握られていた。それはニュードーン計画の全貌を暴露するための鍵だった。だが、そのためには信頼できる場所と人が必要だ。
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夜明けが近づく頃、ハルカは小さな町にたどり着いた。町の中心には古びたカフェがあり、まだ開店準備中のようだったが、中に人影が見える。疲労と空腹が彼女の足をそのカフェに向かわせた。
「ごめんなさい、もう少しで開店だけど…」
カフェの奥から現れたのは、年配の女性だった。優しげな顔つきに、ハルカはつい安心してしまった。
「すみません、水を少しだけ分けてもらえますか。」
女性は驚いた様子だったが、すぐににっこりと微笑み、ガラスのコップに水を注いで差し出した。
「こんな朝早くに珍しいわね。何かあったの?」
ハルカは言葉に詰まったが、嘘をつくのも難しかった。
「少し、追われていて…安全な場所を探しています。」
女性の表情が一瞬硬くなったが、すぐにそれを隠すように笑顔を浮かべた。
「大変だったわね。ここで少し休むといいわ。」
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カフェの裏手に案内されたハルカは、ソファに腰を下ろした。女性が温かいスープを差し出してくれると、その香りが彼女の疲れ切った身体に染み渡った。
「あなた、名前は?」
「ハルカです。」
「私はマリア。この町でずっとカフェをやっているの。」
その穏やかなやり取りの中で、ハルカは自分の置かれた状況を簡潔に説明した。ニュードーン計画、通信塔での出来事、そしてレイの犠牲。
「そう…そんなことが。」
マリアは静かに耳を傾けていたが、やがて深く息をついた。
「ここに長くいるのは危険ね。でも、信頼できる人に心当たりがあるわ。」
ハルカは目を見開いた。
「本当ですか?」
「ええ。この町の外れに住むエリックという男性。彼は昔、政府の情報分析官をしていたの。でも、ある事件をきっかけに身を隠すようになったのよ。」
ハルカは迷ったが、他に頼る場所がない以上、その提案に賭けるしかなかった。
「連絡を取ってみます。少し待ってて。」
マリアは奥の部屋に姿を消した。ハルカはその間にスープを飲み干し、気力を取り戻そうとしていた。
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30分ほど経った頃、マリアが戻ってきた。
「エリックは協力してくれると言っているわ。ただ、ここから彼の家までは少し距離があるから、車で送っていくわね。」
「ありがとうございます、本当に…。」
マリアの車に乗り込み、二人は町外れの道を進んだ。外はまだ薄暗かったが、東の空がわずかに明るみ始めていた。
「ハルカ、あなたのような若い子がこんな大きな問題に立ち向かっているなんて、本当にすごいと思う。でも無理はしないでね。」
その言葉に、ハルカは心が軽くなるのを感じた。
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エリックの家は、森の中にひっそりと佇む小屋だった。車が到着すると、ドアが開き、中から背の高い男性が現れた。
「君がハルカか。話はマリアから聞いた。」
エリックは短く挨拶すると、彼女を中に招き入れた。小屋の中は驚くほど整頓されており、壁には古い地図や書類が貼られていた。
「これが例のデータか。」
ハルカは端末を取り出し、エリックに手渡した。彼はそれを慎重に受け取り、机の上に置いた。
「解読するのには時間がかかるが、急いで取り掛かる。」
「お願いします。」
エリックが作業を始める間、マリアがハルカに温かい紅茶を淹れてくれた。ハルカは久しぶりに少しだけ落ち着きを取り戻した。
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数時間後、エリックがデータを分析しながら顔を上げた。
「このデータ、本物だ。これだけの情報があれば、ニュードーンの計画を止めるきっかけになるかもしれない。」
ハルカの胸に希望が灯った。
「でも問題は、この情報をどうやって広めるかだ。ニュードーンの監視網は厳重で、普通の通信手段はすべて遮断される。」
エリックは深く考え込んでいたが、やがて口を開いた。
「一つだけ方法がある。古い衛星通信システムを使えば、監視網を回避して世界中に情報を広められるかもしれない。ただ、そのためには危険な場所に行かなければならない。」
「どこですか?」
「ニュードーンの主要基地の近くだ。そこに衛星通信設備が残っている。」
ハルカは躊躇したが、レイの犠牲を思い出すと、覚悟が決まった。
「行きます。」
エリックは彼女の決意を見て、静かに頷いた。
「では準備を始めよう。」
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その夜、ハルカは再び旅立つ準備を整えた。マリアとエリックの協力に感謝しつつ、彼女は次の目的地に向けて足を踏み出した。星空の下、彼女の心には新たな希望が灯っていた。
「絶対に真実を伝える。」
彼女の決意は、これまで以上に強固なものとなっていた。
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