第7話 真実の断片

 制御室での衝撃的な映像の後、ハルカとレイは静まり返った空間で互いに顔を見合わせた。


「幼い頃のハルカが映っていたな。」


 レイの低い声に、ハルカはゆっくりと頷いた。


「記憶には全くない。でも、映像の中の私…確かに私だった。」


 彼女は再びコンピュータの前に座り、手を震わせながらキーボードを叩いた。画面には膨大なデータが次々と表示される。


「被験者番号034…オーロラ計画に関与していた被験者の一人みたい。」


 データにはハルカに関する詳細な情報が記載されていた。出生記録、遺伝情報、さらには実験の目的や結果が詳細に記されている。


「ここには…『特殊な遺伝子配列による適応能力の実験』とある。」


 レイが画面を覗き込みながら内容を読み上げる。


「適応能力?それってどういう意味?」


 ハルカの問いに、レイも首を傾げた。


「おそらく、人間が極限状態でも生き延びる能力を研究していたんじゃないか。この廃墟のような世界で、適応するために…」


 ---


 さらに調べていくと、別のファイルが目に留まった。「被験者035」。


「これ、他の被験者のデータ?」


 ハルカがクリックすると、映し出されたのはレイの名前だった。


「俺が…被験者035?」


 レイの表情が凍りつく。


「そんな…俺も何も覚えていない。でも、ここに記されている情報は間違いなく俺のものだ。」


 二人は自分たちがただの観察者ではなく、物語の核心にいることを改めて思い知らされた。


「オーロラ計画は、私たちを作り変えるための計画だったの?」


 ハルカの声は震えていたが、その瞳には次第に怒りと覚悟が宿っていった。


「この計画を止めるべきだ。」


 レイが力強く言い切った。


 ---


 そのとき、制御室のドアが突然開き、黒い影が現れた。昨日から二人を追っていた防護スーツの人物だ。彼は銃を構え、冷徹な声で言った。


「動くな。」


 ハルカとレイは身動きが取れないまま、その人物を見つめた。


「お前たちがここに来るとは予想外だった。被験者034と035…生きていたとはな。」


「あなたは誰?」


 ハルカが問いかけると、防護スーツの人物はヘルメットを外した。現れたのは壮年の男性で、鋭い目つきが特徴的だった。


「私の名前はドクター・イチノセ。この計画を最初に提唱した者だ。」


 ハルカとレイは驚愕した。


「どうして私たちを追っているの?計画はもう終わったんじゃないの?」


 ハルカが詰め寄るように尋ねると、イチノセは冷笑を浮かべた。


「終わった?いや、計画はまだ進行中だ。君たちが生きている限り、この計画は成功へと近づく。」


「成功って、何のために?」


 レイが鋭く問い詰めると、イチノセは深い溜息をついた。


「君たちには理解しがたいだろう。だが、この世界が再生するためには、君たちのような存在が必要なのだ。」


 ---


 イチノセの言葉に反発するように、ハルカは叫んだ。


「私たちを道具みたいに扱うなんて許せない!私たちは…私たちの人生を取り戻すためにここに来たの!」


 彼女の声に驚いたのか、イチノセは一瞬動きを止めた。しかし、すぐに冷たい表情に戻る。


「残念だよ、ハルカ。君がそのような感情を抱くとは。」


 イチノセが再び銃を構えた瞬間、施設の奥から大きな爆発音が響き渡った。振動が制御室を揺らし、天井から粉塵が降り注ぐ。


「何が起きた?」


 レイが叫ぶ中、イチノセは急に無線機に手を伸ばし、何かを叫んでいた。


「侵入者がいる!全員警戒しろ!」


 その隙をついて、ハルカとレイは制御室から脱出を図った。混乱の中、イチノセの目をかいくぐり、二人は廊下へ飛び出した。


「急げ、早くここを出ないと!」


 レイがハルカの手を引き、施設の出口を目指して走り出す。その背後では、さらに大きな爆発音が響き、施設全体が崩壊寸前の様相を呈していた。


 ---


 なんとか施設を脱出した二人は、荒涼とした風景の中で息を整えた。遠くから見える施設は、すでに炎に包まれ始めていた。


「一体何が起きているの?」


 ハルカが呆然と問いかけると、レイも困惑した表情で答えた。


「分からないが、俺たち以外にもこの計画を知る者がいるのかもしれない。」


 ハルカはふと空を見上げた。そこには、不自然な光の帯が浮かんでいた。


「これが…オーロラ計画の痕跡なの?」


 その言葉にレイは黙って頷いた。


「ここからが本当の戦いだな。」


 二人は互いに視線を交わし、新たな決意を胸に歩き出した。

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