邪神転生 ~ 邪神となった女子高生、ダンジョンのある現代で無双する ~
柑橘ゆすら
第1話 普通の女子高生に転生する邪神
ある世界に最強の座を恣(ほしいまま)にする生物がいた。
その生物の名前はイブリーズといった。
イブリーズは邪神と呼ばれて、周囲から恐れられる存在であった。
彼は、とあるダンジョンの奥に隠された『宝箱』を守るために配置された存在であった。
一体、自分が何時から生きているのか?
その期間は定かではない。
とにかく、長く、1000年、2000年という月日をイブリーズは生きていた。
彼の中にあったのは『宝箱を守る』という使命だけだ。
どうやら、この『宝箱』は、人間たちにとっては、渇望されているものらしい。
忙しい時は、毎日ように人間たちが押し寄せて、宝箱を奪おうとしていた。
(ワシは強くならなくてはならん……。この宝を奪われないために……)
イブリーズはダンジョンの中で、魔術を極めて、戦闘能力の強化を行い続けた。
だが、今、彼は自分の選択を後悔しつつあった。
強くなればなるほど、彼に挑戦しようとするものは減っていったのだ。
今となってはもう、誰も、この宝箱を奪おうとは思ってもいない。
ここ数百年の間、イブリーズに挑もうとした人間はゼロ人である。
どんな力を得たとしても、挑戦する人間が現れないのであれば、虚しいだけだ。
最強の座を恣にするイブリーズの名前は、世界中に轟きすぎていたのである。
(ああ……。もう、ワシは我慢の限界じゃ……。退屈で頭がおかしくなりそうじゃ……)
次にイブリーズの取った行動は、自らの存在意義を否定するものであった。
退屈に耐えきれなくなったイブリーズは自ら守っていた『宝箱の中身を開く』という禁忌を犯したのである。
次の瞬間、ダンジョン全体を眩しい明かりが照らし始める。
(汝……。願いを言え。さすれば、1つ叶えよう)
イブリーズが数千年の時をかけて守ってきた宝箱の中身――。
それは『何でも願いを1つ叶える』という神話級の効果を秘めた魔石だったのだ。
「ワシは、こことは違う世界で、人間として生きてみたい」
願うのは、次の人生が、退屈とは無縁の、波乱に満ちたものであることだ――。
イブリーズが呟くと、宝箱の中に入っていた魔石が砕けて、大きな光がその体を包み込んでいく。
こうしてイブリーズは、この世界から別次元に存在している『日本』という国に魂を転生させるのであった。
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