第8話
さて、バシリオは明け方に、国境近くのダクニア領軍に10人の部下を引き連つれて出発をしてしまった。
そうとは知らないリュラは、ベットで目を覚ました。
「ん?今日は布団が落ちてない、俺の寝相もよくなったんだな、はーーさて、顔を洗ったらバシリオの様子でも……っわっ!!」
バシリオに付けていた隠密が、ベットの脇に立っていて、リュラは、ベットの上で跳び跳ねた。
「お、お前、無言でそんなとこに、恐いだろ!!」
「申し訳ございません、しかしながら、バシリオのことでお話が」
「なんだ、どうした?怪我でもしたのか?」
「いえ、これからするかもしれませんが、まだ、その様な知らせは来ておりません、バシリオ殿は今朝国境近くのダクニア領軍に10人の部下を引き連れて向かいました」
「は?国境近くって、え?危なくないか?」
「はい、他国との争いが勃発している地域です」
「何でそんなとこへ」
「武勲を立てて、位を上げるためです」
「……そうか、位を、上げるために、危ない国境付近へ……今朝?え?」
リュラは、ベットから転げ落ちそうになりながら這い出た。
「そ、そ、そんな、そんな危ない所へ行くなんて聞いてないぞ!!パッキラ将軍は何を考えてるんだ、あいつは、だって、掃除が取り柄の、暴力を嫌う優しい男なんだぞ」
あわあわと、室内を歩き回って、リュラは、ばっと、扉を開けて、寝ま着のまま、近衛騎士の執務室へ走った。重厚な扉をバーーンと開けて、飛び込むと、驚いているパッキラ将軍に詰めよった。
「バシリオが、国境付近へ行ったって本当か?」
「は、はい、リュラ様が、武勲を上げるように命令したのではないですか?」
「したけど、春の武術大会とかでいいだろ!!なにも、本気で戦場に行けなんて誰が言ったよ」
まじで信じられない、あんな初心者を戦場に出すなんて、死にに行けと言うようなものだ。
「お前、もしもバシリオに何かあったら、極刑にしてやるからな!!」
「そ、そんな」
「今すぐ連れ戻してこい」
「畏まりました」
パッキラ将軍と、カイル兵長は、執務室からバタバタと出ていった。隠密も、どうしようかな?みたいな雰囲気をだしていたので、お前も行けと命令した。
戦場に出て、もしも万が一バシリオに何かあったら、俺は俺を許せない。安易に武勲を立ててこいなんて言って追い出したことを、激しく公開した。
あんなに、暴力を振るうのをいやがっていたのに、そんな男が剣で人を殺すなんてできるわけない。逆に、人を殺すバシリオなんて一欠片も想像できない。
可哀想なことをした。あいつは、俺のそばでいつも優しく微笑んで、せっせと掃除をして、俺の為に茶を入れて、服を着せたり、食事を運んだり、布団をきちんとのせてくれたりするための、いや、そんなことができなくても構わない。いるだけでよかった。
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