第6話

バシリオの体たらくを怒って部屋から飛び出したものの、確かに自分はこの計画をバシリオに話していないし、バシリオが戸惑うのもしかたないかと、溜め息をはいた。


それにしたって、バシリオの気持ちがわからない。あいつは、俺のことを好きなはずなのに、俺が他のやつと結婚しても良いのかよ。


イライラする。幼い時から四六時中一緒にいて俺だけの為に生きてきたくせに、今さら俺を他のやつに取られて嫌だとかいう気持ちがないのか?


俺はもしバシリオが急にそこら辺のやつと結婚するなんて言い出したら、氷浸けの刑にでもして頭を冷やせと激怒するのに。てか、そんなの絶対認めてやらない。あいつが俺以外を大事にするなんて絶対嫌だ。


乳兄弟で従者の癖に、なんでこんなに俺を振り回すんだよ。バシリオめ、なんて腹が立つ男なんだ。


でも、もしも、俺が結婚するってなった時、平気な顔で従者として付いてきたらどうしよう。あいつが逐一俺の前をウロウロして、目には入るのに、他のやつを愛するとかできるのかな。無理だろ、そんな器用なこと俺にはできない。


それに、結婚したら色々しなきゃなんないし、それをバシリオに知られるとか嫌だし。だめだ、もしも、結婚する時は絶対バシリオは連れていけない。


連れていけなかったら、もう、会えないってことだ。バシリオと会えないまま一生を終えるのか?この俺が?


考えただけで、寂しくて目尻にじわりと涙が。俺がこんなに寂しくて死にそうに思うのに、あいつは、平気なんだろうか。


悔しい、あいつに、もっと後悔させたい。俺を失って絶望して死ぬくらいの気持ちでいてくれなきゃ嫌だ。平然と生きるなんて許せない。


憤怒していると、バシリオ監視のために隠密行動をさせてた男が、バシリオが近衛騎士団へ戻ったと知らせをもってきた。


「なんだって?ほんとに?あのバシリオが?自分から?」

「はい、先ほど、パッキラ将軍の所へ赴き許しを乞うておりました」

「そうか、うん、そうか!!」


あいつめ、とうとう気づいたんだな。俺と離れない為には自分が努力をするしかないって。なんだよ、やればできるじゃないか。


今すぐにでも抱きついて頭をグリグリして褒めてやりたい気持ちになったが、そこはぐっと我慢した。せっかくあの無気力なバシリオが、やる気をだしているのだから、ここは黙って応援してやるのも愛だ。


早く頭角を表して、俺を華々しく迎えに来るがいい。そうしたら、俺はお前を抱き締めて、頑張ったなって褒めて、まるでロマンティックな物語みたいに、褒賞に俺を与えてやるんだ。


手と手を取り合って、駆けていく俺とバシリオの姿が目蓋に浮かんで、俺は感動でジンッとする胸を押さえた。









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