カンガルーがはなしてくれない

くぼたひかる

カンガルーがはなしてくれない

ムキムキのカンガルーに捕まった。


ギュッと抑えつけられ、身動きが取れない。


なんでもカンガルーは、約450キログラムのキック力があるらしい。

プロボクサーの数倍だ。迂闊に動けるはずもない。


さて困ったぞ。

カンガルーに、話は通じるのだろうか。


試しに話しかけてみることにした。


「カンガルーよ、なぜ俺を捕まえたんだい?」


幸運なことに、カンガルーは答えてくれた。


「いいかい、人間よ。それは、君がエアーズロックから飛び降りようとしているからだよ。」


そうだった。

俺は、エアーズロックから飛び降りようとしていたのだった。


「わかったよ、もう飛び降りないから離しておくれ。」


カンガルーに問いかけるも、まだギュギュッと離してはくれない。


さて、どうしたものか。


「カンガルーよ。街のスターバックスで一杯奢るから、離してくれないか?」


カンガルーは少し考えて、こう答えた。


「いいよ。一杯奢ってくれたらね。君も話してくれ。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

カンガルーがはなしてくれない くぼたひかる @hikarukubota

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画