第7話 すれ違いの叫び
そろりそろりとバレないように、レイリー様とフルールを尾行したのが成功し、無事に図書室に着いた。
図書室の前に立っていたメイドにもバレる前にさっと木陰に隠れたため、大丈夫だった。
レイリー様はメイドに何かを伝えると、頷いたメイドが一人で図書室へ入って行った。
もしかしたら、推しを迎えに行ったのだろうか…
レイリー様が本を探しにきたから一旦出て外で待っていろとでも命令して…?だとしたら腹が立つ。
勝手にあれやこれやと考えているうちに突如心臓がドクンっと鳴り、体が一瞬震えたのを感じた。
(これが…魔力の共鳴?)
自分よりも明らかに魔力が高い人を教えるための設定なんだろう。と、いうことは、だ。
(大魔法使い様に、会える…?)
そう思ったが、メイドだけが中から出てきただけで、大魔法使い様は現れずレイリー様とフルールは図書室へと入った。
(どういうこと?たしかに共鳴したのに!)
納得のいかない私は、はやる気持ちに押されて魔力を使った。
《ごめんなさい》
(!?)
この声は…ショートムービーで聴いたことのある、変声期前の甘くて高い、この美しい声は…!まさに…!
《愛されたい》
ゾクっと背筋が震えた。
大魔法使い様だ…!
いる、たしかにここに…
私は目を閉じて必死に命の叫びに耳を澄ました。
《期待に応えたい》
《がんばる》
(ああ!いちいち可愛い)
場所特定に集中したいのに、胸がドキドキうるさい。
《愛されたい》
《誰か僕に気付いて》
(!?)
私は図書室のドアの横に視線をやった。
メイドがいる右ではなく、左の方だ。
ゆらゆら揺れる青葉の影があるだけで、何もない、誰もいないが手を伸ばしてみる。
《気付かれた?》
(やっぱりここだった!?)
涙が出そうになる。
ここに、焦がれていた推しが、いる!?
《逃げなきゃ》
えっ…
途端に風が強く吹いて葉っぱが飛んできて思わず目を閉じる。
(だめ!せっかく会えるのに!行かないで!)
「待って!」
目を閉じながら両手を伸ばしたがー…
「公女様?」
後ろからしたレイリーの声に我に帰った。
そっと手を下ろす。
「なにか、いましたか?」
怪訝そうな顔で聞かれたので
「いえ…風が吹いて髪留めが飛んでいったように思ったんですが、ここにひっかかっていました」
わたしったらと恥ずかしそうに笑いながら、ストレートヘアーをハーフアップにして止めていた青いリボンを抑えて言った。
レイリーはそんな偽天然エピソードを疑うこともなく、ビジューの顔にポーッとみとれると
《女神様のよう》
と心で叫ぶのだった。
(大丈夫そうね…それよりも)
推しとの初対面イベントを諦めきれない私は自分自身の命の叫びを魔力にのせて飛ばした。
《会いたい》
それが推しに届いたかどうかはわからない。
まだ感知するほどの魔力がなかったからだ。
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