鋼打ちの守り神

栗岡志百

序章 魂だってくれてやる

序章 魂だってくれてやる

 無骨な日本刀だった。

 刃の長さは短めなのに、刀身の幅が広くて厚みもあるから、どっしりして見える。

 さらに特徴的なのは柄の部分だった。

 時代劇でよく観る柄糸つかいとが巻かれていない剥き出しの柄は、太くて長い。刀身と柄を固定するするために、鉄の輪と楔で補強する仕様になっているから、これでさらに重くなっていた。

 試し斬りのひとつで、巻藁や青竹ではなく、鉄板や甲冑を斬る荒試あらだめしのために用意されていた刀だった。

 小柄なサラが使うには、この日本刀は重すぎる。

 しかし、お姉ちゃんを助けるためには、お姉ちゃんが打った、この刀を使うしかない。

 さらに、サラの身体は腐敗がはじまっていた。

 時間がない。サラは心奥で導いてくる声のまま、闇の中に足を踏み出した。

 お姉ちゃんを助ける力を貸してくれるというなら誰でもいい。代償に魂を喰わせろといわれても受け入れられる。

 助けるためなら、なんだってやれる。

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