愚才な武人と天才少女たちの魂の伝承 五章南米麻薬組織編から沖縄で突然の出会い

不自由な新自由主義の反乱児

五章  南米麻薬組織編から沖縄で突然の出会い

ユニオンの輸送機で現地に移動している間、作戦の打ち合わせも行われる。

作戦は簡単だがヒロは麻薬を憎むがこのイタチごっこの任務が好きではない。

基本的に大きな懸賞金も出るのでユニオンも参加してはいるが、麻薬がこの世から

減る気配はない。

世界で麻薬を使っている人間は三億人ともいわれている。

世界の人口八十億人のうち三億人もの人間が麻薬を使っているのだ。

それも、増加の一途をたどる。

日本においても二百万人以上と言われる、一億二千万のうちの二百万人

石を投げれば経験者に当たるかも知れない、ご近所にも一人は居る勘定である。

人間は壊れているとしか、ヒロには思えなかった。

今回の作戦の南米の国などは、二十三万ヘクタールもの畑で麻薬の原材料を

栽培している。

1700万トンの麻薬を製造できる規模の麻薬の原材料を一つの国の

畑で栽培しているのだ。

しかも、栽培に関わる人間も販売に関わる人間も、使用する人間も悪びれることが

無く他人に迷惑を掛けてないつもりだ。

使用する人間は人生を終わらせるようなものである。

先進国の多くで、違法にされ取り締まられるほど、高嶺で取引され利益が大きなため無くならない上に、使用するほうも、そこに幸福感を求め使用が止められなくなる。

上げ期の果てに何度も繰り返し最初は執行猶予で終わるが、常用者として裁判で認識され、何度も逮捕される度、刑期も増えて大半を刑務所で過ごし一生が台無しに成る。

それだけならまだしも、内臓や血管がボロボロになり、人生を終わらせてしまう。

国によって麻薬は終身刑の重罪の国もあるが、そんな国でさえ麻薬は無くなる気配は

無い。

本来は麻薬中毒者を更生するプログラムの充実と進化が必要なのだが、こちらにお金を注ぐことが、どの国も少ない、日本など特にそうだ

NGO団体なども活動してはいるが、ヒロは正直このNGOなる物に不信感を

抱いている。

何故なら公金を使い、中毒者の生活保護金まで利用しているが、それに見合った結果が出ていると、ヒロには思えないからだ。

また精神科の多くの医師は薬での治療で医療費を楽に稼ぐシステムでやっている、

保険制度のポイントの関係も有るのかもしれない。

その上、心理療養も先進国のアメリカやヨーロッパに比べるとかなり遅れている。

しかしユニオンとて、そんなことに労力を割くより、アメリカでは麻薬犯罪の

阻止には、大きな懸賞金や費用が動くので、ユニオンのビジネスの一つとして

参加しているのだ。


ユニオンは懸賞金と共に、広大な地域の使用権を購入して、新たな作物を作って

輸出し更に、医療に役立つ薬品を作り、ビジネス繋げる方針でそれを地域の政府に

了承をもらい、地域の農民や人を雇用して、立ち上げる計画も立てている。

平和と人々の共存には、お金と言う武器が一番必要となってくる。

それはお金の有る階層から、搾取するためのビジネスが必要と考えているのだ。

ヒロ達のチームを含め、各地でユニオンのメンバーも参加して、南米の作戦は

行われる。

しかしイタチごっこで、薬に快楽を委ねる人が、居ない社会作りをしなければ

解決しないとヒロは感じている。

まず予め、輸出ルートとされる海上ルートを捜査して、輸出してる組織を捕獲する。

コカイン約3トンが押収され、その価値は壱億ドル近い。

そこから魔導士会の人間が尋問しその組織のルートや工場を突き詰めヒロのような

戦闘部隊のエージェント達が工場を攻撃したり焼き払っていくのだ。

アリサが【どうして麻薬に頼る人が多いの?】と言うとヒロに質問する。

ヒロが【解らないけど、孤独と不安とか言っている人間がいたな、覚せい剤は

高揚感が高く、コンプレックからの逃避や自己肯定感とか中にはSEXの快感が

忘れなくなるぐらい凄いと言う奴もいたな】と言う

アリサが、SEXと聞いて、【なにその人死ねば良いのに。そんなの愛じゃない】と

拒否反応をしめす。

ヒロが【そうだな、死ななくても良いけど、可哀そうな奴ではあるな】と言い。

【もしかしたら、本当に好きな人を愛したことが無いのかもしれない

俺も愛については、お前にレクチャー出来るほど考察出来ないけどな

幸い俺には口うるさい兄弟や、うざったい師兄弟や仲間がいたからな

アリサにもこれからもっと、大切な仲間が増えてくる、武はそのために有ると俺は

信じている】と言う。

アリサが【アカデミーの皆や先生と出会えて良かった、世の中の人が皆そんな仲間と繋がれれば、麻薬も戦争も無くなるのに】と言うと。

ヒロは【そんな日が来ることがユニオンの目標さ、果てしなく遠い道のりだけど】と

と答えると、アリサが【私も、もっと強くなって、頑張る】と微笑む。

ヒロはその時、胸が熱くなる位の幸福感を感じた。

南米で任務が終わり宿泊した場所で、二人は夜空を見ると、日本より綺麗に

星が映る。

中でも南十字星や天の川がはっきりと、目に映るのだ。

アリサが【先生、綺麗】と指さして見て【あの星のどこかに、同じように人が住んでいるんでしょ?先生や父様たちは、その人たちとも戦ったんでしょ?】と尋ねる。


ヒロが【誰に聞いたんだ?そんな話】と聞くと。

【小さい頃、母様が話してくれた】とアリサが答える。

ヒロは人差し指を自分の口に近づけ【それは秘密事項だから外で言っちゃダメな

ことだぞ】笑顔で言う。

この宇宙のどこかに友歌が生きている事を、姉のヒトミから聞いている。

天の川を渡ればもしかすると友歌に会えるかもとふと考えた。

戦いを収めるため、自分の自由を犠牲にしたとも聞いて、再びユニオンに、

身を置く決心をした。

そんな情けない自分にも弟子が出来た。

きっと魂とは、生きているときに、周囲やこの世にその人が与えた影響の事を

言うのだろうと、ヒロは思えた。

南米から帰り、年を越すとヒロは沖縄に修行の為の合宿と称して、行くことにした。

勿論修行は行うのだが、遊びも兼ねる、ナンチャッテ合宿だ。

それに妹のユウも、沖縄のユニオンの病院に出張と称して、一緒にて来ることに。

沖縄にはユニオンが経営する病院も有れば、コンドミニアムもホテルもある。

収益を設備や事業に変えて収益を得る。

今の資本主義は金を株に変えて、更に配当と言う収益に換えるが主流になって、

金が人に向かわない、流れないことが貧富の二極化を作っている理由の一つだが

ユニオンは金を利用して、人を育てそれが収益に繋がる、サイクルを取ることに

している。

金を人や事業の成長に直接使い、その成長が更に、収益を産むようにプロジェクトを

計画する手法である。

そのため全て自己資金で運営する。

余剰資金は金やドル、ユーロや資源で蓄え安定を図る。

ユニオンのメンバーにも市場金利より、わずか良い金利で、共済積み立てや年金に

加入させ、その資金も有効に活用する。

アメリカで投資銀行を経営したりして、資金を有効に活用している。

その元になったのは、マリアの魔導士会が持っていた、莫大な資金であった。

ヒロは度々、任務の間を縫い沖縄に出かける。

沖縄に多くの知人も居る。ヒロ達がユニオンのもつ、コンドミニアムに到着すると、

地域の海人(ウミンチュ)らが顔を出してきた。

彼らはヒロの子供のころからの知人でもある上、ユニオンとも取引のある

漁師たちで有る。

元々、沖縄にはヒロの祖父源三と交流のある武術家がいた。

沖縄の古流の空手は日本の空手の源流でもある。


ヒロの祖父は多くの武術家と親交を持つことで、そのエッセンスを自分の武術に

取り入れたのだ。

そんな中で沖縄の人たちとも親交を深めた。

太平洋戦争での沖縄の悲劇のなか、命を落とした先人も居れば空手をやっていた

お陰で命を繋いだ武術家もいる。

その時代、源三は中国にいて活動をしていた。

戦後沖縄がアメリカの時代、沖縄を度々訪ねて源三は、沖縄の武術家と

親交を持って行った。

沖縄が日本に返還される前に、本土では基地反対運動が広まり、日本中の米軍基地が

移動して沖縄に集中していった。

沖縄が基地反対を叫ぶのを、金の為と言うが、元々は本土が基地反対をして沖縄に

基地が増えたのだ。

そんな事実も源三はヒロに肌で学んで欲しかったのだ。

その縁も有り、大人に成っても、度々、沖縄に行き沖縄の文化を心から好きに

成った。

大学時代も春休みの課題の、レポート作成と称して、沖縄でバイトしながら、沖縄民謡を習い、挙句の果てに、沖縄民謡の教師の免許まで取る始末だ。

ヒロ達は夕方に、なじみの店、いまいゆ(鮮魚)に集まり宴会をすることになった。

沖縄の食材は豊富で、海鮮も肉類野菜も独特の文化でヒロは大好きである。

今日はミーパイ(ハタ科)の刺身と煮つけ、ヤコウ貝の刺身、ニシキ海老の刺身と、沖縄おでん(てぃびち、豚足)ゴーヤチャンプル、ヒージャー(ヤギ汁)と多彩な料理と沖縄の泡盛の古酒やオリオンビールなどを楽しんだ。

妹のユウも沖縄はヒロと何度も来ている。

アリサは初めての沖縄料理を楽しんでいる。

沖縄料理を楽しんでいると、ヒロの民謡の師匠のミーコが店に訪れた。

ミーコがヒロに【沖縄に来たなら、何で私に連絡しないかね?

師匠に対して水臭いと思わないね】と言う。

ヒロは【ミーコネーネーは世界の歌姫やからさー、忙しいと思ったさー】と

ウチナーグチ(沖縄の方言)で返す。

ミーコは沖縄の音楽ファンの間では知らない人間が居ないほど有名人である。

ミーコはヒロの妹ユウには【ユウちゃん、久しぶりに見たらチュラカーギー

(美人)に成って、良い人でも出来たね?】と挨拶する。

ユウは【嫌だネーネー、そんな人居ませんよ】と答えると、ヒロが

【ユウ、お世辞を言われて照れるな、こっちが恥ずかしい】と皮肉を言う。

すると、若い海人が【彼氏が居ないんなら、俺と付き合ってください、 

お願いします】と言うと。


ヒロが若い海人に【絶対やめておけ、一生を台無しにされるくらい、

我がまま女だから】と釘を刺す。

ミーコが【イナグー(女)は、わがままな位が可愛いんだよ、アンタはそんなことも

解らないからモテないのさ、ところで隣の美童(美少女)は初めてだね】と聞くと。

ヒロは【友人の娘さんで俺の行ってる学校の生徒なんさ】と答える。

ミーコは【こんな綺麗な娘は沖縄にも居ないヨ、歌を教えて歌手に育てたら人気者になれるよ】と言う。

ヒロは【この娘は可愛いけど、きっと音痴だから歌者は無理、そんな簡単に歌者に

成れるなら、俺が歌者に成っている】と答える。

するとミーコが【アンタは顔が歌者向きでは無いから】とヒロに返す。

ユウが【ミーコにネーネーの唄を久しぶりに聞かせて】とせがむと

ミーコが【ヒロ、久しぶりに一緒に唄おう、ちゃんと練習してるか?】と言う。

ミーコがヒロにサンシンを渡し、ヒロがチンダミ(調弦)をしだした。

ヒロは、海のチンポラーと言う民謡の前奏をサンシンで弾き始め、

子弟の唄サンシンが始まる。

この唄は沖縄の遊郭で唄われた曲で、海のチンポラーと言う、巻貝を女性に例えて

若者に対して女や遊郭について唄った曲である。

歌詞は、海ぬちんぼーらーぐゎー さかなやい たてぃば ふぃさぬ さちざち   あぶなさやー

(意味:海の巻貝のチンボーラちゃんが逆さまに立っているので、

踏んだら足の先が危ないよ〜)

海ぬさし草や  あん美らさ なびく 我身ん里前に うちなびく

(海のセンダン草は 美しくなびくよ、私も愛しいあなたにうちなびくよ)

海のチンボーラーぐぁ 恋する夜や辻の姉小達ん恋すらど

(海のチンボーラーが恋をする夜は辻の遊女も恋しているってよ)

深く意味を知れば女が怖くなるヒロであった。

その他ミーコが、月のかいしゃ、国頭サバクイ(クンジャンサバクイ)

サーサー節、ヒロがカジャデ風などを唄って、八重泉や瑞泉などの古酒も楽しんだ。

翌日は朝はゆっくりした後、買い物で食材や、日常品などを揃えた。

午後からはヒロとアリサは修行もこなす。

沖縄は歳が明けると野球選手なども自主トレを沖縄でしたり、修行するにも

良い気候である。

ロードワークやインターバルで心肺機能を高めたり。

浜辺で足腰の鍛錬をしたり、筋トレのGYMで筋力の強化を組み合わせて、

プログラムをヒロが組んでトレーニングと修行を行う。

食事は基本ヒロが自炊で作る。

ユニオンの自宅でも、ヒロが居る時は家事はヒロの担当である。

ユウは予定通り、沖縄のユニオンの病院で臨時医師として日中は働く。

ユウは内科医で総合診療医師、外科医の姉のヒトミのように、不規則な勤務は

少ない。

ヒロは常々、ユウに楽な仕事で高い給料を貰って、と皮肉を言っている。

正直、日本の外科医も内科医も玉石混合と言えるとヒロは思っている。

患者の生活や体質、すべてを把握して治療方針を患者と話し合い、患者の気持ちや

治療の効果を確認しながら治療を進める医師とバカのように厚労省のマニュアルや

薬品会社の言う効果を鵜吞みにして患者を診ているのではなく、カルテと検査数値で

マニュアル治療をする。

アホなマニュアル医師だと治療費も国費もドブに捨てている、とヒロは思う。

ユニオンは、金持ちには高額な自由診療で、ビックリする位の利益をだし、その利益で保険医療の人にも、出来る範囲で丁寧な医療を行う。

高額医療制度や出来る方策を患者と話し合うことで、多くの患者を出来る限り、 

平等に治療する方針を立てる、ユニオンの言う平等とは、富む者から利益を稼ぎ、

貧しい人にも幸福権を与える事だ。

当然アメリカの病院はユニオンのドル箱でもある。

金を気にせず、医療で患者に貢献し、治療をしたいと言うのは、まともな志を

持って、医師に成った者ならば思うことで有るだろう、しかし、金のため儲けの

為とか、家が病院だからと言う理由の医師がいる事も事実である。

妹のユウは姉のヒトミやヒロの元嫁の友歌に憧れ、小さい頃から医師を

目指していて、姉の勧めで総合診療の道を歩んだ。

総合診療は、実は最初の段階で患者の病気の原因を正確に把握する、非常に重要な

部門で、ここが違えば全ての治療が間違う可能性がある。

手遅れや誤診、医療過誤の原因に成りかねない、重要な部門である。

このような、システムをユニオンで構築したのは姉のヒトミと魔導士のマリアで、

ビジネスであれ、医療のシステムであれ、特に魔導士会の力なしに成し得る事は

出来なかった。

魔導士会は一説によると、アーサー王伝説に出てくる、マーリンを祖とする集団とも言われている。

色んな政権を操ったり、滅ぼしたとも言われる謎の集団ある。

ヨーロッパ、アメリカ、各国に財団持ち、その力は計り知れない。

ただマリアが人類の進化と共存を願い動いている事はユニオンのメンバーは疑う

余地がない。

ヒロは過去に色んな場面でマリアの力の一部を見てきて、世界一恐ろしい女と

思っている。


しかしながら、仲間としてはこれ程、頼もしい人間も居ない。

何よりマリアの唱える目的や目標を信頼している。

沖縄を楽しみながら修行しているヒロに、マリアから連絡が入った。

どうせ、新しい任務の話だろうと思うヒロに、今度の任務から一緒に仕事をする

魔導士の仲間を沖縄に向かわせている、合流して顔あわせするように、と言う

話であった。

午後一時、空港に迎えに行くと、一人の少女が待ち合わせの場所に待っていた。

アリサと同じくらいの少女である。

黒のモノトーンのワンピースに黒髪で、フランス人形のような面持ちに感じる少女。

アリサはそのあまりの可愛さに【可愛すぎる】と興奮する。

ヒロは逆に、その若さで、その落ち着きに、ただ者でない雰囲気を感じた。

宿舎に戻る途中に買い物によることを告げ、彼女に夕食に何が食べたいか聞くと、

チーズとパンとミルクが有れば良いと言う。

ヒロはそれに合わせ、シーザーサラダの野菜とゴーヤ、沖縄豆腐と

沖縄牛のステーキ肉、次の朝作るオムレツの材料で卵とポーク缶を買った。

マリに合わせて、洋風の沖縄メニューを作ることにした。

アリサはマリの可愛さに目が釘付けであるが、コンドミニアムに帰り荷物を置くと、

マリがヒロに話が有ると言うので、アリサを別の部屋に行かせ、二人になりヒロが紅茶を入れる。

マリは自分の母親は友歌だとヒロに告白する。

友歌がマリを身ごもり、マリアの所でマリを産んだこと、ヒロとの子供マリを

守るためヒロのもとを離れ、マリアの所でマリを産んだ後、自分の星に帰ったこと。

あえて、マリの安全のためマリをマリアの下で育ててもらう決意をした事などを

ヒロに話しをした。

そしてマリアの元を離れる時、もう一通の友歌のヒロへの手紙をヒロに渡した。

【愛するヒロ、突然消えた私をさぞ、恨んでいることでしょう、純粋な貴方を

傷付けたことは、憎まれて当然だと思っています、貴方の元を離れなくてはいけなく

成ったことは、私に取っても、大きな苦しみでした。

貴方と一緒に過ごした時間は私に取って、今までに無いほど、幸せな時間だった。

そして貴方と二人の間に授かったこの宝物の娘、この子の名をマリと名付けました。

この子を守るため、ヒトミさんとマリアさんに相談して、マリアさんに託すことに

決めたのです。

どうかこの娘、マリーが幸運に恵まれ、幸せな人生を歩むように力を貸して下さい。

私が初めて愛したヒロに最後のお願いの手紙です。

遠い星から貴方とこの娘の幸せを心より、願っています。

友歌より、心からの思い】と締めくくっていた。


ヒロはようやく、マリの目に友歌の面影を重ね、涙が溢れて来た。

自分の愚かさ、友歌の苦しみに気付くことが出来なかった事、

そして何よりも自分が弱いためマリの母、友歌を守れなかった事をマリに謝る。

ヒロの涙を見て、マリは笑顔で

【パパが謝ることでは無いのよ、これは決まっていた定めだった。

パパとママが結ばれたことで私が産まれた。

その定めの中で私は自分の道を生きて行く。

マリアママに育てられた事で私は魔導士として歩いていく。

そしてユニオンでパパと一緒に歩んで行ける。

パパが私の思った通りのパパで私は幸せよ。

パパとの繋がりでアリサちゃんとも出会えた。

また新しい私に成れる。

パパ、沖縄の海は素晴らしいと聞いたわ。

明日海に連れて行って、私、海は初めてなの】とヒロに言った。

ヒロは【海に皆で行こう、北部の山原の海、辺野古の海、美ら海水族館にも

行こう】と答えた。

翌日、四人は車で北部に出かけた。

古宇利島(コウリジマ)瀬底島(セソコジマ)北部の海は景色が美しい。

そして辺野古の海も見せた、辺野古も美しい海で有った、しかし工事で

その景色は興醒めするほど悲惨である。

勿論、防衛は必要悪だろう、しかし沖縄北部である必要は有るのか?

普天間が街中で危険、嘉手納も結構な町である。

もしも近隣国が上陸作戦をするにしても、空と海の防衛線を超えるのは実にコストや戦力が膨大でとても採算が合うとは思えない。

攻めるならまず、攻略しやすい離島を選ぶであろう。

隣国が準備する間、空母や空の防衛戦略を構築すれば良い。

ミサイル防衛は辺野古の必要はないし、空母の停泊や給油はいくらでも方法は有る。

アメリカの要望と言うより金がらみであるとヒロは現在の状況を分析している。

現実、海兵隊の多くをグアムに移転しているではないか。

そして、多くの日本人には他人事で沖縄の負担や自然などどうでも良いとの思考が

日本人を支配している。

ヒロは日本の文化を愛しているが、日本人のそのような部分が本当に嫌いである。

先進国では類を見ない低俗な思考だと感じるのである。

アリサが沖縄の海を見て感動し【こんな綺麗な海初めて見ました】とヒロに言う。

マリが【素晴らしいわ。パパこの海を守らないと日本人は恥ずかしい】と訴える。


ヒロは【正直難しいだろう、日本人はバカだから、金でしか価値を考えられなく

なった、低俗国家に成ったのさ、美しい景色や自然、文化、人間性なんか、

金では買い戻すことが、出来ないことを知らない無知な人間に成り下がったのさ】

と嘆く。

其の後、美ら海水族館に行きジンベイザメ、熱帯魚、イルカ、マナティ、海の生物を見学した。

帰りにスーパーに寄って帰ると、夕方に海人のゲンが酒とメバチマグロの刺身を

持ってやってきた。

ヒロは田芋とアグー(沖縄豚)で汁を作り、ニンジンシリシリ、車エビの刺身

娘たちのためにフルーツパパイヤを用意した。

若い海人はユウが目当てでやって来ていて、沖縄ジェラートを土産に

買ってきたようだ。

マリはこのような賑やかな集まりは初めてでヒロに笑顔を見せて。

【パパはお友達が沢山居るのね】と言う。

ヒロは【任務が殺伐としているから、沖縄とかではせめて、楽しくして

居たいんだよ】と答える。

その日、アリサとマリは気が合うのか一緒の部屋で休み、女子トークをしながら休む

ことに成った。

アリサとヒロの子弟として過ごした時間のこと、マリとマリアが魔導士の森で

過ごした日々のことなど二人で語り合い親交を深めるのであった。

沖縄での生活は4人に取っても楽しい時間であったが、ヒロに取っていくつか困ったこともあった。

女子3人でヒロに色んな悪戯を仕掛けてくる。

また、マリやアリサがヒロと友歌の恋愛や結婚生活に興味を持ち色々聞いて

来ることだ。

勿論ヒロに取って、友歌との時間は素晴らしい時間では有ったが、娘や弟子に話す

ことは恥ずかしくて、避けたい。

無難に一緒に食べた料理の事や、当時の戦いの話でごまかす。

沖縄での楽しい時間が過ぎ、東京のユニオンに4人で帰ることになった。

東京では、マリもヒトミの家に一緒に住むことに成った。

ヒトミはマリに対面するといきなりマリを抱きしめハグをする。

そして【貴方のママと私は戦友で親友だったの。貴女に会えると聞いて本当に

嬉しかったわ】と言う。

マリは【マリアママから聞いています、ヒトミ叔母様が居なければ、

今のユニオンは無いと】と答える。



ヒトミは【そんな事は無いのよ、マリアさんと、貴女のママの友歌先生がユニオンや私達の恩人なの。科学や人間の真実、本質的な知を与えてくれたから、私たちは

生き残ることが出来たの、マリアさんや友歌さんが居なければ、貴女のパパは死んでお墓に入って居たのよ】と答える。

ヒロは【早速、俺の悪口はやめてくれよ、姉ちゃん】と苦情を訴えると。

ヒトミはそれを無視して、マリに【今日は貴女のママが好きだった私の得意料理を

ご馳走するわ。貴女のママがどんなに聡明で素晴らしい人だったか、色々話して

あげる】と言う。

ヒロは普段料理をしないヒトミが作ることに驚くが,黙って、任せることに。

ヒトミの料理はたいてい洋風の料理である。ヒロはそれを洋風かぶれと文句を

言うが、マリのためにヒトミが作ると言うので、受け入れて食べることにした。今日の料理は魚貝類、伊勢海老や車エビ、ムール貝、スルメイカ、タラなどを使った

ブイヤベースである。

ヒトミは魚をさばくことは出来ないため、スーパーの鮮魚で予め捌いて貰っているのだろう。

カモ肉のローストやチーズ生ハムのサラダも作ったようだ。

夕食の席で友歌との出会い、友歌が争いを嫌い、ユニオンに訪れたこと。

平和の実現について二人で語り合ったこと。

そしてヒロでさえ、あまり持ってない当時の友歌との写真などをマリに見せて

話をした。

ユニオンに理念と夢について語り合った事もマリに話をした。

ユニオンの理念の一つは人間の進化である。

そのために必要なのが子供たちの教育である。

色んな国で争いや貧困で、親を失った子供たちを育てることを、ユニオンでは

広げようとしている。

その子供たちの教育は未来ヘの投資であり、希望だと。

その子供たちの中で優秀な子供を医療、科学、経営、農業、漁業、建築、の多くの

分野で将来のために育てる事をしたいと考えている。

そのためには、お金も人材も更に必要である。

マリやアリサにはその志を継いで欲しいとヒトミは訴えた。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

愚才な武人と天才少女たちの魂の伝承 五章南米麻薬組織編から沖縄で突然の出会い 不自由な新自由主義の反乱児 @tbwku42263

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る