ボスキャラだって暇してる〜幼馴染四人、異世界で四天王やってますけど勇者が全然来ないので王都の魔導学校行ってみます〜

硝華 零

プロローグ 四天王と言っても暇だしね


「我らが魔王様の御成である!」


魔王。


その名の通り、魔を統べる王の事。

人を堕落させ、欲望を糧に貪る悪魔達の長でもある。

この世界は、魔王の手によって混沌をもたらされていた。

無力な人々は為す術もなく魔王とその軍勢に蹂躙され、破滅の一途をたどっていた…


しかし、人類の脅威はそれだけでは無い。


荒くれ者の妖怪達を率いり、欲しいものは全て力で奪いさる。

血で盃を満たし、酒と共に飲み干す酒呑童子。

常に強者を探しており、それとの戦いを至上の喜びと感じる。

百戦錬磨の妖大将アヤカシダイショウ



人間を憎み、龍の隠れ里を今の尚守り続ける、龍の守護者ドランワーデント

あらゆる魔法を会得し、全ての魔性を打ち砕くとされる龍の宝玉を所持している。

近付く者は、人間ならば勇者だろうが全て排除する。



冒険者達を誘い込み全てを飲み込む、世界最大の大迷宮『深紅の大迷宮スカーレットラビリンス

迷宮の宝と謎の為、奥へと進んだ者は多けれど最奥へは誰も踏み入る事は出来ない。

混沌の創造主ダンジョンマスターは、踏破せんとする勇者を待っている。


この存在等を、いつしか人はこう呼んだ。


《四天王》と。


哀れな人々は、勇者の目覚めを待っている。


……



「おい、なんで今日こんなに皆ピリついてるんだ…?」


1人の従者悪魔が隣の悪魔にそう問いかける。

今日は、周りの従者悪魔達が異様にピリピリしているというか、緊張状態なのだ。


「なっ…バカお前!

今日はあの日だろ!」


信じられないという顔で答えるもう1人の従者悪魔。


「あの日……?

……!あの日か!」


そう、あの日。


《四天王》会合の日である。


頻度はそう多くは無いが、《四天王》同士で話し合いを行う会議があるのだ。

今回は、魔界にある魔王城で行われるため、空気が張り詰めている。

粗相なんて起こそうものなら、たちまち打首どころか関係者全員鏖殺なんて有り得る話だ。


「……時間だ」


魔王がそう、静かに言葉を告げると悪魔達は王の為道を開ける。

コツ、コツとブーツの踵がなる音だけが響き、異様な空気をかもしだしていた。


……そして、会議室。


扉越しからでも分かる、とてつもなく重たいオーラ。

この先に何かとんでもない存在がいるというのが嫌でもわかってしまう。

これが仕事でなければ、今すぐにでも泣いて逃げ出したいところだ。


「……下がれ。

お前達は不要だ」


冷たい視線で、従者達へと告げる魔王。

まるで、雑魚は場違いだとでも言うような目だ。

従者悪魔達は、会議室へと歩を進める王の背中を見届ける。

ギィィ…といつもよりも重たい音を放つ扉が、魔王の姿を部屋の中へと消すように閉じた。


「……押し潰されるかと思った…」


見届けた従者悪魔が、汗を拭いながらそう告げる。


「さすが魔王様だ…貫禄が違う」


「他の四天王様と、どのような議論を…」


ザワザワと疑問を口に出す悪魔達。

しかし、そこに1人の悪魔が言い放った。


「そんなもの、我々が考えるだけ無駄さ。

きっと、想像もよらない計画か何かをしているに違いない…!

いずれ来る勇者相手のな…!」


…………


「お、時間ピッタじゃん」


「お疲れ〜」


「あ、このマフィンモドキみたいなの美味ぇ」


……先程の張り詰めた雰囲気とは全く噛み合っていない会議室の中の様子がこれだ。

1人はゲームをしながら机に足を乗せ、1人はのんびりまったりお茶を啜り、1人はテーブルの上の茶菓子を1人で貪り食っている。

もはやただ友達の家に遊びに来た様子と言っても過言では無いだろう。


…とても、四天王の会合とは思えない。


「お前らさぁ……外に俺の部下居んだからもうちょいシャキッとしろやぁ…

チラッと見られただけで大変だぞマジで」


呆れながら椅子を引き、マントを掛ける魔王。


「へーきへーき。

聡明な魔王様(笑)と同じ四天王だからっていつも通りなんか解釈してくれんだろ」


テーブルに乗せた足で、ギコギコと椅子を揺らす。

喋っているこの青年が、混沌の創造主ダンジョンマスターと呼ばれる四天王の一角だ。

本名、和田莱夏。

まるでマジシャンのような白いスーツと小さめのシルクハットを身に付け、帽子からは小さな角の飾りが着いている。

迷宮ダンジョンの主だとかなんだとか言われているが、まぁ実際は管理をしているだけの引きこもりなのである。

本人的にはゲーム作り感覚であの迷宮ダンジョンを運営しているとかなんとか。

迷宮ダンジョンの難易度を高くしすぎて誰も来なくならないように、優しめに設定しているらしい。


「俺はちゃんとしてた。

コイツらと一緒にしないで欲しい」


お茶をコトリと机に置く。

彼が、龍の守護者ドランワーデントと呼ばれる四天王だ。

本名、遠沢洋和。

ローブを身にまとい、民族衣装のような服を中に着ている。

人間を憎んでいるとか言われているが、別に全然そんなことは無い。

というか、四天王の噂とか伝承の空気を読んであまり人間と話さないだけなのである。

排除する、なんて言われているのは、出会った人間全てに記憶消去と書き換えの魔法を使っているからで、四天王の中だと割と人間に配慮している方なのだ。


「おかわりない?マフィンモドキ」


空の茶菓子入れを魔王に見せつける。


最後の彼は、お察しの通り妖大将アヤカシダイショウと呼ばれる四天王だ。

本名、江嶋快夢。

頭から鬼のような角が生え、真っ赤な和服を身に付けている。

一番、伝承や噂と違う人物だ。

酒は好きだが、血とか戦いとかまぁ別にそうでも無い。

皆で何かゲームをする方が好きだし、宴会とかご飯食べるとかの方がずっと好きだ。

なんなら、四天王のムードメーカーとして立ち回ってくれている。

明るくいつも笑顔で、率先的にギャグを披露してくれるめちゃくちゃ良い人だ。


「お前らなぁ…はぁ……

あとそれはマフィンじゃねぇフィナンシェだ。

全然違うからな」


「焼き菓子とか小麦粉混ぜて焼いただけだからほぼ一緒だろ」


「お前次から小麦粉だけ食えよ」


かと言う、魔王と呼ばれる彼も中身は違う。

本名、黒田大樹。

マントや黒い衣装で、いかにも魔王ですという雰囲気を出しているが、本人的にはそれは頑張って印象を作っているだけなのである。

指揮や魔界の統治なんかは慣れてきたが、全然威厳も何もかもめんどくさいと思っている。

たまには休みも欲しいし、漫画とか読みたいと思っている普通の青少年だ。

最近の悩みは、魚介類の流通を盛んにして刺身が食べられないからしい。


……そう、彼らは皆元人間の日本人だ。


何故こうなったのか、説明をしておこう。


彼らは、幼稚園からの幼馴染だ。

小学校も、中学校も、高校も、全て一緒だった。

就職した先こそ違うが、皆地元に住み続けていた為、よく集まっては遊んでいたのだ。


カッコつけたがりだがリーダー気質の大樹。

頭が良く物知りで冷静な洋和。

明るくムードメーカーで人気者の快夢。

手先が器用でゲームも得意な莱夏。


それぞれ好みも性格も違うが、幼い頃からの親友たちだ。

時には共に出かけ、時には家でゲームをし……そんな時間を共に過ごし育ってきた幼馴染同士。


そして、問題のある日……

クリスマス当日、予定もなにも無かった彼らは、待ち合わせをして聖夜をカラオケで過ごそうと決めたのだ。

決して彼女が居ないという傷を埋めるためでは無い、決して。

そして、遅刻した者も居つつ向かったその時……


バリン


空間そのものに、謎の裂け目のようなものが現れた。

まるでガスが割れたかのように出現したそれは、瞬きも驚く間もなく四人を呑み込んだ。


…………


「ってて……」


「う……な、何??

なんかの事故…?」


「痛っ、膝打った!」


「おい足どけろや快夢」


たどり着いた先は、真っ白な何も無い空間。

そこに放り出された4人は、わちゃわちゃと体制を立て直す。

なにかの事故や、ドッキリだと考えている為、あまりそこまでの動揺は無い。

さすが現代っ子というところか。


「こういう時は……大体莱夏!」


そう言って、莱夏に指を指す快夢

大抵サプライズやドッキリを用意するのは莱夏の仕業だ。

パーティーやお祭り事が好きらしく、場を盛り上げるために準備をしていたりすることが多い。


「ざんねーん、今回は俺じゃありませーん」


今回は、ということは前科があるということなのだが。

軽く、自身の仕業ではないと否定する、


「なら……大樹?」


莱夏程では無いが、大樹もたまに軽いドッキリを仕掛けていたりする。

今の状況下だと、とても軽いとは思えないが。


「んなわけ」


これも否定。


「……なら、マジでこれ何?」


快夢に続いて、皆が少し不安になりだす。

段々、何かに巻き込まれたという実感が湧いてきたらしい。

その時、眩い光に包まれる。

四人ともが、眩しく腕で目を覆うと…いつの間にか目の前に白い布で包まれた人物が現れた。

頭には天使の輪のようなものもあり、神秘的な光を放っていた。


「……迷える人間達よ…なんと嘆かわしい…」


そう告げると、目から涙を零す。

四人は状況がうまく飲み込めていない。


「おいなんか嘆かれたぞ」


「誰じゃお前」


「カラオケの時間もうすぐだ」


「ちくわ大明神!」


「おい今の誰だ」


各々が喋り出すせいでぐちゃぐちゃである。

もう少し統率能力を持っていて欲しい。

喋り出した四人を見て、口を開く。


「……私は、貴方達人間で言うところの神にあたる存在。

貴女達は、次元の狭間に飲み込まれ、既に死亡しています」


……


「「「「な、なんだってーッ!!!?」」」」


見事にハモる四人。

言ってる場合ではないような気がするが、そのような意見は一旦置いておく。


「へ!?死んでんの俺ら!?」


「出オチにも程がある」


「俺らただクリスマスの寂しさをカラオケで埋めようとしてただけなのに!?」


「死後の世界ってこんな感じなんだなー」


死んだと告げられ、焦ったり、冷静に分析したり、現実逃避したり……

それもそのはずだ、さっきまで普通に歩いていただけなのに、いきなり死んだだなんて。


「突発的に起こってしまった時空の狭間……

運悪く、それに巻き込まれてしまったのです。

あぁ、可哀想に…」


「時空の狭間ってなんです?」


一番冷静な洋和が、神に向かって疑問を口にする。


「まず、私達はこの世界だけではなく、無限に溢れる別世界などもそれぞれ管理しているのです。

時空の狭間とは、そのあらゆる世界の繋ぎ目に現れる出入口のようなもの、私達がその世界へと足を運ぶ際に使うワープホールだとでも思ってください」


「なるほど…」


興味深そうに聞いている洋和。

こんな状況で聞ける胆力は見上げたものである。


「私達のような存在ならいざ知らず、人間には狭間のめちゃくちゃな引力にはとても耐えられません。

なので、巻き込まれた貴方達は死……」


「え、てことはさ」




「お前がミスって、そのワープホール開いたから俺ら死んだんじゃね?」


……



沈黙。

皆が思ったが、口にしてらならない言葉を大樹が口に出してしまった。

お前ってそういうところあるよな、という顔で大樹を観る幼馴染達。


「……そのような…」


「え?だって話聞く限りそうだろ?

お前ら神のワープホールなんだよな

お前じゃないにしろ、神側の不手際だろ」


「……」


「……違うか?」


「……チッ」


瞬間、舌打ちが聞こえる。

それは、神の口から聞こえたものだった。

先程とは裏腹に、神の顔が歪む。


「おいこいつ舌打ちしたぞ」


「確信犯じゃねーかふざけんな」


口々に文句を言い出す四人。

まぁ、当然の不満だろう。


「あーはいはい、すいませんねぇ。

こっちの不手際ですよ〜?

ちょっと開いたら簡単に死にやがって雑魚人類め」


打って変わって態度が急変し出す神。

小指で耳を掻きだすほど態度が悪い。


「んだとお前」


「てかさぁ、少しは悪いな〜って思ってるからこうやって魂だけ隔離してやってんだけど?

ありがたいと思ってくんない?」


溜息をつきながらそう告げる。

どうやら、今四人は魂だけの状態で、存在が消えてしまわないようにこの空間に連れて来たらしい。

面倒だと言いたげな顔をしているが、そちらのせいだ。


「んで、お前ら死んだんだけどさ。

このままだと他の奴らに叱られんの。

だから、うちの管理してる世界でまた生きさせてやろうって訳」


そこから、少し話を聞く。

この神は他にも世界を管理しているようで、そこは物語に出てくるような、文明発展はそこまでだが魔法が存在するファンタジー的な世界なんだとか。

そこでなら、また生きる事が可能らしい。

ただ、もし生きる場合は少し頼みがあるという。


「お前のせいなのに頼みってなんだよ」


「変わらん変わらん、まぁ聞け人類。

この世界はちょっと今面倒な課題があってな、それは人類の壁が無い事だ。」


人類の壁。


話によると、人類への脅威を作ることによって文明の発展を促す、神からの試練らしい。

それによる《勇者》の発現を望んでいるんだとか。

《勇者》が現れると、それに呼応するように力を持った者たちが誕生し、それによって後の遺伝子が優秀になるという。

そして、強敵に立ち向かう程覚醒し、さらに力を増すのだそうだ。

《勇者》を迎え撃ち、人類への貢献をして欲しいと言うのだ。


「……つまるところ、ゲームで言うボスキャラになれってことか?

そんでもって、その勇者とやらの礎になれと。」


莱夏がそう発言する。


「ま、好きな様に捉えろ。

でも、多少なら力を融通してやってもいい。

強くなってもらないとこちらとしても困るからな」


……小説で死ぬほど読んだ展開みたいだ。

死んで、強い力を持って転生して…

想像していたものより、全然雰囲気が違うが。

いきなり死んだと言われて、家族や他の友達ともお別れで……そ

そんな選択を決められるわけ…


「ならそれで」


「まぁそれでいいかな」


「ヨシ!」


「おk」


あった。

彼らはまぁ、それほど前の世界に執着はなかった。

一人暮らしを初めて割と長いため、まぁ別にいいかなと。

というか、幼馴染のイツメンが揃っているため、寂しさはあまり感じていないのだ。

むしろ、少し楽しみでもあった。


「……驚いたな、断られると思っていたのだが。

まぁ、拒否権なんて元から…」


「……と、その前に」


神の言葉を遮るように、大樹が喋り出す。


「お前の言う通り、そのボスキャラになってやってもいいがな」


……


「……俺たちの好きにやらせてもらう、後悔すんなよ?」


そう、不敵な笑みを浮かべる。

そっちが好き勝手そう決めるのだ、こちらだって好き勝手してやるさ。

その勇者を、どうしたって後悔するなよ。


「……まぁ、いいけどな。

お前達程度でどうにか出来るものではないさ。

……さて、誰が何になる?

それぐらいは決めさせてやる」


そこから、誰がどんなボスキャラになるか話し合い…

最終的にジャンケンで決める事になった


……


そして、今に至るのだ。


「あーぁあ、魔王かっこいいと思ったんだがなぁ。

存外忙しくて萎えるわ」


魔王が1番人気で、最初にジャンケンに勝った大樹が魔王役になったのだ。

しかし、意外とちゃんと魔界の運営が大変で毎日忙しいらしい。


「文句言うなよ。

こっちは毎日孤独で迷宮ダンジョンのデバッグだぞ?

やんなっちまうよ……ホント」


ジャンケンのビリは莱夏だ。

誰も取りたがらなかった、迷宮の主……もとい、混沌の創造主ダンジョンマスターになった。

元の名前は、ダサいと莱夏が改名をした。

というか、大体の役職名は莱夏が命名したものである。

面倒だなんだと言うが、迷宮ダンジョンのモンスター達を我が子のように可愛がっている。


「俺はフツーかなぁ。

妖連中と飲むの楽しくて好き〜」


妖大将アヤカシダイショウになった快夢、桜が咲き誇る妖の里で、仲間達と飲んだり騒いだりするのが日課だ。

一応、大樹の魔界と友好関係を築いていたりする。

国王、程堅苦しいものではないが、それなりに里の長として頑張っているらしい。


「こっちも、龍達と日々を過ごすのは長閑でいいよ。」


龍の守護者ドランワーデントを選んだ洋和は、のんびりと龍達のお世話をしている。

国絡みや土地の管理など、あまり面倒な事がない役だ。

その事がわかっていたから、2番目に勝った洋和はこれを選んだのだろう。

現代の暮らしとはかけ離れているが、住めば都というものである。


それぞれ、四天王としての役割をきちんとこなしていた。

あのクリスマスの日からもう何百年も経過し、神とはそれ以来会ってすらいない。

人間だった四人も、生まれ変わる際に種族が変わったのだ。

実力だってその名に相応しい程、いやそれ以上である。

……ただ、1つ問題がある。


……勇者が現れないのだ。


そう、当初の目的はボスキャラとして勇者を待つこと。

しかし、いつまで経っても勇者が現れない。

冒険者や強者が向かってきたことはあるが、敗北した事はないし、何より勇者を名乗る者が一向に現れない。

最初は、まだ産まれてないだけかな?と思っていたのだが、もう何百年も経っているのだからいい加減出てきてもらいたい。


「勇者来ねぇな〜」


「本当にな……

あの日からもうかなり経つんだけど」


「つまらーん」


「……なぁ、あのさ」


大樹が問いかける。



「…ぶっちゃけ暇じゃね?」


魔界の運営が、龍の世話が、妖怪達の宴会が、迷宮の管理が……

…まぁ、忙しいのは忙しいのだが。

……暇なのだ。

もう何百年も待っている為、楽しみがあまりない。

神も何も言ってこないし、誰も戦いにすら来ない。

正直、とても退屈している四天王達なのだった。


「…それ思った」


「と言ってもなぁ、する事ある?」


「ん〜、旅行とか行く?」


莱夏と洋和の後に、快夢がそう提案する。

この四人で旅行なんて、もう何年も行っていない。

元の世界では、よく皆で計画して旅行に出かけたものだ。

あぁ……あの頃が懐かしい。


「あー、旅行いいな。

行く?」


「ん〜、旅行に気軽に行ける国?」


「あるかなぁ…」


「……少し気になってる所あんだけど」


大樹のその発言に、皆がピキーンと反応する。

面白そうな話の予感だ。


「……王都のさ、ほら、あるじゃん?

あのー……魔導学校」


人間界の方の王都に、王立魔導学校と呼ばれる所が存在するのだ。

入れるのは貴族や王族、魔道士の血筋など、高貴な者や優れた才能を持つ者だけ。

しかもその上位10%しか入ることが許されないと言われている、エリート中のエリート学校だ。


「あー、なんかあるなぁ。

なんの縁もないから聞いた事だけだけど」


「その魔導学校がどうかした?」


「戦争すんの?」


予想外の単語が出てきたため、疑問まみれの3人。


「いや、そういうんじゃないんだけどさ…」



「…王都の魔導学校とか行ってみね?」



長い沈黙。

莱夏は目を開き、洋和は固まり、快夢はピタリと動きを止めた。


「…アリだな」


「学校か〜!考えたことも無かったな」


「行こぜ行こうぜ!

久しぶりに楽しめそ〜!!」


「だろ!?だろ!

楽しそうだろ!」


何百年もの間、暇をしていた四天王達のテンションが高まっていく。

考えてもいなかった、自分達が再び学生になるなんて。

国の運営や管理や世話なんて二の次だ!

早速準備に取り掛かる。

ステータスもとっくに強くなりすぎたし、覚える魔法も無いけれど。

勇者も来ないし、青春をもう一度味わいに行こう。


最強の四天王達が、王都の魔導学校へ行ってみるようです。

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