【二次創作】哀川さんはアリエナイ正月を過ごしたい

殉教@公共の不利益

第1章 春木くんはアリエナイ初夢を見ていたい?

第0話 元旦と鎖と、頼んでもいない「お年玉」と。

 注:0〜4話(第一章)は、原作崩壊レベルの惨状となっております。

  崩壊耐性に自信のない方はスキップして、第5話(第二章)から読み始めることを奨励します。

 ーーー…★


「・・・・・ハッ!!!」


 大晦日の翌朝、唐突に目を覚ました俺は。

 覚醒後の風景が、いつもと「ちょっと違う」と気づく。

 ベッドの上に寝転んで見るはずの、天井は目に映らず。代わりに、バイクレーサーのポスターを貼った壁が写っている。

 初日の出が射しているはずの部屋は、カーテンで閉ざされたままだ。


「おかしい・・昨夜はベッドで寝たはず。今の俺は・・椅子に座っている・・何故?

(ガチャガチャ)・・・うわっ、何だこれは!」


 寝間着の長Tシャツと、ジャージ下を着用中。

 そして後ろ手にされて、金属鎖で繋がれている。これじゃ立ち上がれもしない。

 どうして? 俺に覚えはない。誰がこんな事を? 昨夜はどうしたっけ?


「ええと、1日中大掃除をして。入浴して、哀川さんを家に招いて。

 年越しそば食べて、0時に新年の挨拶をして。

 俺はこの部屋、哀川さんは客間で就寝。ここまではいつも通りだよな。」


 黒く艷やかなミディアムヘア、氷の眼を持った彼女ー哀川美羽あいかわみう

 いつもはクールな顔を崩して、俺をからかってくる様子を思い出す。

 数ヶ月前。哀川さんが泊まる事が多くなって来たから、物置を客間に模様替えしたんだよな。彼女が宿泊する度に、毎回床で寝ていたけど・・寝不足になるわ、体が痛むわ・・多くのものを捨てることになったが、安眠が手に入ったので良しとしよう。


 ・・・でだ、この鎖は哀川さんが仕掛けたのか?

 外部からの犯行ではない場合、必然的にそうなるのだが・・・

 

「(コンコン)ハルキ君、起きてる? お年玉を届けに来たわよ。」

「春木センパイ、わたしはお年賀ですっ。1日に渡すのはマナー違反だそうですが・・

 哀川センパイに、遅れを取るわけにはいきませんので!」


 げ。哀川さんはともかく、ツインテ子犬系後輩の小桜こざくらゆにちゃんまで!?

 何でもいい。まずはこの鎖を外して貰わないと。

「入って」と呼び掛けると、ドアが開け放たれ、二人の姿が・・・


「・・・ブバアァァアッ!! ちょ、何て格好してるのさ!??」


 頭が???で埋め尽くされるも、目を閉じて見ないようにする。

 そりゃそうだろう。

 二人の装備品が「紅白水引きと【ご祝儀】がデザインされた、バスタオル1枚」だけなのだから!

 哀川さんの立派な胸部装甲は、あの日の甘苦い記憶を呼び起こし。

 ゆにちゃんの華奢な肢体にも、痛烈に「女性」を意識してしまう。


 「それは・・ハルキ君が悪いのよ。私だって、キミの力になりたいのに。

 いつまでも、を受け取ってくれないんだから。」


「私もですっ。夏恋かれんセンパイの『金城鉄壁の壁』があろうと、春木センパイが『答え』を出そうと。

 こんな事で諦めるなら・・最初から、好きになってなんていませんからぁ!」


 二人の憂いを帯びた表情と言葉に、俺は何も言えなくなってしまう。

 哀川さんを拾ったあの夜から、みんなと多くの時を重ねて。

 自分なりの答えは出したけど・・まだ、完全な決着は着いていないんだ。

 ・・・暴走特急な幼馴染、桐崎夏恋きりさきかれんも含めて。


「それに・・お互いに、になる程、スキンシップを重ねてきたじゃないの。今更、カマトトぶってもだめ。

 ゆにちゃんを正面から打ち負かすことが出来たら・・私はもっと強くなれる。

 自信を持って、ハルキ君の隣を歩いていけるわ。」


「そーですっ。もし、この戦いに負けたなら・・・わたしは、ちゃんとケジメをつけますから。哀川センパイにも、そうして参戦許可を貰ったんですっ。

 それに・・初バトルの相手は、どんな結果になろうと! 春木センパイしか考えられません!」


 初バトルに参戦て・・いや一体、何の競技で戦うつもりなんだ(現実逃避)。

 彼女らにされるがままじゃ、絶対にマズイ方向に行く!

 理性さん、理性さん、応答せよ。幾度となく危機を救ってきた(?)相棒よっ!


『謹賀新年

 旧年中は、ブラック企業ばりの激務を強いて頂き、厚くお礼申し上げます。

 本年度は労働条件の改善を、どうかお願い申し上げます。

 なお新年は、1月4日から営業させていただきます。』


 デスヨネー。

 俺は乾いた笑みを浮かべ、諦念と共に天井を仰ぐ。

 哀川さんがゆうわく上手だから・・・理性さんも、年始休みくらい欲しくなるよなあ。

 ゴメンよ理性さん。

 葉ーセよーせの十戒『本編最終盤まで、爾、姦淫するなかれ』が解けたら。

 そのときは、永遠の安息を与えてあげるからね。


「ハルキくん、もう無駄な抵抗はやめて。

 この厨房が、私とゆにちゃんの、最終決着の地。

 さあ、調理道具の準備はいいかしら?」


「ですです・・・種目は『おせち料理バトル』なのですっ!

 春木センパイも含め、三つ巴で料理しあって。

 一番上手に作れましたー。という、仁義なき決戦をしましょう!」


 良かったー。料理バトルなら健全で、平和的だもんな。

 でも、ここは普通の部屋であって、台所じゃないんだけど。


 ・・・ちょっと二人とも、目が怖いよ?

 獲物に齧り付く前の、アムール虎(ネコ科)とハイイロ狼(イヌ科)っぽいよ?


「そうねえ。まずはハルキくんに、やる気を出して貰わないと。

 バトルの流れを確認する為にも、わかりやすい料理がいいわ。」

「ですですっ。第一種目は『ゴボウのたたき』『甘酒』でどうでしょうか?」


「受けたわ。敢えてあなたと同じ土俵で、完全勝利してみせるっ・・・」

「では、まずは食材の皮むきからです。ここは協力していきましょう。」

「まあ、ここは仕方ないか。じゃあハルキくん・・調理開始はじめっ!!」


 いや、料理するんだよね?

 そんなににじり寄られても・・・

 ぎゃー、そ、そんな乱暴な皮むきはヤメテえええええっ!!

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