13話:夜話、ユニエの陰にあるものは
ユニエとのトレーニングを終えて、夜。
フォスタ家の夕食をご馳走になりました。
恐らくは冷蔵庫がないのか、肉は塩気がキツい!
ので、サラダやスープと一緒に食べるのが主流みたいだ。
こうやって食べれば全然イケる。
「あのぉ~、異国の方と聞いておりましたが、お口に合いましたでしょうか~」
フォスタ家のメイドであるネネネさんが、ゆるゆるの笑顔で聞いてくる。
ユニエは私の事を異国の友人と説明してくれていたようだ。
「美味しいです。というか、泊まる場所だけでなく食事まで貰っておいて味にどうこうは言えませんよ」
「いえいえそんな、お気になさらず〜。ユニエ様はお味のほど、いかがでしょう〜」
「……」
おや?とユニエの顔を見ると、どことなく寂しげな顔でボヤッとしている。
「ユニエ様〜?」
「えっああっえぅとななな何でしょう!?」
「いえ、料理のお味はどうだったかな、と〜。特にスープはいい出来だと思うのですが〜」
「あ、スープ。そうですね、美味しいです。ネネネさんの作る料理はいつも美味しいですよ」
「ありがとうございます〜」
今のユニエの台詞の『スープ』と『そうですね』の間に一瞬、寂しげな顔が映ったのが、妙に目に焼きついてしまった。
おそらくはネネネさんにも見えたのだろう。
頭を下げた彼女の表情にも暗い何かがほんの少し見えた。
夕食を終え、入浴と寝る前の支度 (だいぶいっぱいあった、貴族って大変だあ)を終え、いざ就寝。
「では、おやすみなさい。マト様」
「おやすみ、また明日」
挨拶をしてユニエが寝室へ行くのを見届けた。
ユニエの後ろ姿が、黄色い照明の光から隠れるのを見たら、あくびが出てきた。
さ、寝ますか。
と、自分の寝る部屋に行くために来た道を戻ろうとすると、人がいた。
フォスタ夫人……ユニエのお母さんだ。
「マトさん」
「夫人」
私に声をかけてくる夫人。
一瞬、つい身構えてしまった。
「緊張なさらずとも結構ですよ」
フォスタ夫人がクスクスと口元を手で隠しながら笑う。
「あ…失礼しました、その……」
「どの様な事情があるかは分かりませんが、私は貴方を信じますよ。
「夫人……ありがとうございます」
私はグッと深く礼をした。
「声をかけたのは、貴方にお願いがあっての事です」
「お願い?」
「どうかユニエを、助けてあげてくださいませんか」
夫人はふっ、と暗い顔をして、そう切り出した。
「助ける、とは……何があるんですか」
「それが分からないのです」
「分からない?」
何を助けて欲しいのか、分からないのに助けを求める。
そんなことある?
「ユニエは、親である私や夫には隠している部分があります」
悪事を隠してる、とかではなく、思い詰めている部分がある、という意味だろうか。
「マトさんも、ユニエと一緒に行動していて、行動や
「……無かったとは、確かに言い切れません」
夫人が静かにうなづく。
「きっとその挙動の原因たる思いは、私が問い詰めても
「夫人……」
「そういう子です、ユニエは」
「きっとそれを知れるのは、貴方の様な、ユニエの横に立てる人だと思うのです」
廊下照明の光が、夫人の瞳の中でゆらめく。
「暴けと言うわけではありません。ユニエの心の歪な部分が、あの子自身を苦しめた時、できれば助けになってあげてほしいと、それだけなのです」
「……助けられると約束はできません」
「!」
「でも、ユニエさんには恩があります。だから、私に出来る事は、ちゃんとやるつもりです」
夫人の苦しげな顔がほっと緩む。
「それで、充分です。よろしくお願いします」
「はい」
「では、おやすみなさい、マトさん」
「おやすみなさいませ、夫人」
フォスタ夫人もまた、廊下の先へと消えていった。
家族と言えどどこまでも首を突っ込めないし、突っ込まれたくない。か。
この辺は、異世界も貴族も変わらないらしい。
ついでに言えば、イビりだの暴虐だの、も。
いや、貴族の場合は
好きなことだけやって過ごせる訳じゃなさそうだ、貴族。
とにかく、私はユニエの事を助けてあげよう。
彼女が、助けを求めてきたら。
そしてララフェイドとの試合当日。
私はリングの中央に、浮遊する発光体を見たんだ!!!
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