【悲しい】シャーペンに転生してしまいました

まめでんきゅう–ねこ

1章 旅を描く

第1話 人間終了

ある高校生が文房具を買った帰りに交通事故に遭ってしまった。

そして異世界転生…。


これだけ聞けば、まぁよくある話だよなぁと思う事でしょう。



しかしこの高校生は、なんと生物としてではなく無生物…シャーペンとして異世界に転生してしまったのだぁ!!


「どこだ…ここは」


先ほどまでいた日本の交差点なんてものは存在せず、どこを見ても草草草草草草…山山山山山山山山…ザ・田舎であった。

日本の田舎ではない。ヨーロッパというか…まさに異世界。


の知識が無駄にあったシャーペンは、棒のように倒れて絶望した。


「なんで人間じゃなくてシャーペンとして異世界に転生しちゃったんだ!!」


シャーペンでは何もできない。まず歩く事は可能なのか?

彼は歩いてみた。


ピョンピョンピョンピョンピョンピョンピョンピョンピョンピョンピョンピョン



普通に跳ねて歩けた。


では魔法とかは?無理なん?


彼は体に力を入れた。





スパァァァァァァァン


なんと、ペン先からシャー芯が銃弾のように放たれ、そこら辺にいた鳥をブッ刺してしまった!


「え、何これ…シャー芯?これだけ?」


また絶望するシャーペン。



「(マジか…結構 俺 前世で徳を積んだと思ったけど、どうやら転生先はシャーペンらしい。

もう何を楽しみに過ごせば良いんだよ。ダメだ…おしまいだ)」



「なんだこれ…」


青いマントを着てデカい帽子を被った者が不思議そうにシャーペンを拾い上げる。

多分この世界にシャーペンなんてものは存在しない。


シャーペンはビックリしたが、そっと本物のシャーペンのように動きを止めた。

彼を拾い上げたのは、年若い魔女であった。


ちょっと興奮するシャーペン。


「(ロリ、ジト目、短髪…三銃士の揃った魔女だ!この人の魔法道具として俺は生きていこう)」


「魔法道具の類いですかね?初めて見ました。危なそうなので捨てておきましょう…」


「は⁉︎」


捨てられそうになったシャーペンはウネウネと動き出してアピールする。

魔女はビビった。


「ファ⁉︎な、なんですか気持ち悪い!新種の魔物ですかね⁉︎」


「ち、違いますよ!俺はシャーペンというものです!あなたの魔法道具として生きたいです!」


内心焦るシャーペン。


「(やべ、あんまり人前で動き回らない方が良かったのでは⁉︎絶対怖がられてる…)」


「チッ」


舌打ちしながら杖を構えた魔女を見て、シャーペンは踊り回った。


「あのー!僕はシャーペンというもので、全く危なくないんですよ!なので助けて、許して、お願いしますぅぅぅぅ!」


ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド



杖から放たれる無数の青い光。それら全てが一斉にシャーペンに直撃した。

周りの地面や岩を抉り、黒い煙が立つ。


魔女は驚愕した。

なんとシャーペンは壊れるどころか、傷すらついていなかった。とてつもなく頑丈だ。


「こ、壊れていない…?」


「俺はシャーペンなんですよ(n回目)。助けてください、一応…元々は人間だったので」


「に、人間?元々?」


「はい、目を覚ましたらこんな姿に…助けてください」


「助けたくても…どう助ければ良いのか、わからないのですが」


「えぇ………あ、そうだ、あなたの旅に同行させていただけませんか?」


「え、何言ってるんですか…」


シャーペンと魔女の旅が始まるかもしれない。

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