第2話 麻雀
そもそも、麻雀を始めたのは、刺し子をしている充希の姿を見たくて充希が見える場所に座り、充希の姿を眺めながら、賭け事をするのが楽しくなったからだ。
それまでは、デイケアのつまらないプログラムに参加して、昼めし食って、一人の部屋に帰る毎日だった。
それが、作業所に入ってからもデイケアにくるときは麻雀仲間ができて、麻雀をするようになった。
でも、恭平の好きなタイプは麻雀をするような女じゃない。
充希のように黙々と手芸をする女らしいタイプが好みだった。
充希の針を持つ手を見るのが好きだ。
充希が刺し子をしている時、ショートカットからうなじが見えるのがたまらなかった。
「とんちゃんまた麻雀やってんの?」
赤坂真美がやってきた。
ギャーギャーうるさい奴だが、味方につけとけば何かと便利だ。
「あらー、充希ちゃん、作業所どうしたの?」
「休職中です」
「どっか悪いの?」
「肺です」
「あっそ、お大事にね。とんちゃん、四川飯店に昼ごはん食べに行こうよー」
「あ、恭平君と付き合ってるんですか?」
「まあね」
「違うよ。行かないよ」
「ほれ、行くって言ったじゃん。ついて来いよ。社長には麻雀していること内緒にしているんだからな」
真美は同じ作業所でなんでもしゃべってしまう。
頭が上がらないところも確かだ。
「じゃあ、あたしたち食べに行くから、充希ちゃんお大事に」
「じゃあね」
せっかくの充希を眺められる麻雀の時間が台無しだ。
充希が帰ってきて、また麻雀している時見つめられる至福な時間を無駄にしたくなかった。
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