第三章 ダクネスのプレゼント

 クリスマスパーティーの準備が進む中、ダクネスはカズマにとって特別なプレゼントを用意していた。彼女は自分の重厚な鎧を手に取り、それをカズマに渡そうと決心していた。彼女の表情には少し緊張と興奮が混じっている。


「カズマ、ちょっといいかしら?」ダクネスがカズマのもとに近づき、大きな箱を彼の前に置いた。


 カズマは驚いた顔で箱を見た。「これは何だ? ダクネスからのクリスマスプレゼントか?」


 ダクネスは頷き、「ええ、そうよ。開けてみて。私からの特別な贈り物だから。」彼女の声にはわずかな震えがあったが、それは彼女のプレゼントへの自信と期待を表していた。


 カズマがそっと箱の蓋を開けると、中から見事に磨かれた重厚な鎧が現れた。その鎧はダクネス自身が戦いで使っていたもので、彼女の冒険の記憶が詰まっていた。


「これは、お前の鎧だろ? なんで、こんな大事なものを。」カズマは言葉を失い、鎧をそっと撫でた。


 ダクネスは照れくさそうに笑いながら言った。「私の鎧をあなたに使ってほしいの。私たちが共に過ごした冒険の証として。そして、これがあれば、あなたも私のように強くなれるわよ。」


 カズマはその深い意味に心を打たれ、「ありがとう、ダクネス。こんなすごいプレゼントをもらって、本当に嬉しいよ。」と感謝の言葉を述べた。


 しかし、カズマが鎧を試着すると、その重さに圧倒されてしまい、ぎこちなく動くことしかできなかった。ダクネスはそれを見て、少し楽しそうに笑いながら、さらに彼を励ました。


「大丈夫、慣れればそれほどでもないわ。私がいつもどおり訓練をつけてあげる。」ダクネスの目には期待が輝いていた。


 このやり取りを見ていた他のメンバーも笑いながら、カズマが新しい鎧に慣れる様子を楽しんだ。カズマとダクネスの間の特別な絆が、このプレゼントを通じてさらに深まる一幕であった。


 カズマがダクネスからの重厚な鎧を身につけてみると、その重さにすぐさま圧倒された。彼は一歩も動くことができず、まるで地面に釘付けにされたように立ち尽くしてしまった。


「うーん、これはちょっと、動けないよ。」カズマが苦笑いを浮かべながら言った。彼は鎧を身に着けているが、その重さと硬さに全く慣れていなかった。


 ダクネスはそれを見て、興奮を隠せない様子で近づき、「ほら、見て! カズマが私の鎧を着ている姿は、とても似合ってるわ!」彼女はカズマの動けない様子を見ても、なぜか満足げだった。


 カズマは苦労して少し身体を動かそうとしたが、鎧の重さに押しつぶされそうになり、「ダクネス、これはいくらなんでも重すぎるよ。どうやって毎日こんなのを着て戦ってるんだ?」と彼女に尋ねた。


 ダクネスは嬉しそうに答えた、「私にとってはこれが普通よ。カズマも慣れれば大丈夫。私がしっかり訓練してあげるからね!」彼女はカズマがこの鎧に慣れることを楽しみにしているようだった。


 その場にいた他のギルドメンバーもカズマの様子を見ては笑い、楽しんでいた。アクアは「カズマ、その鎧、ちょっと動きづらそうね。でも、ダクネスの気持ち、嬉しいでしょ?」とニコニコしながら言った。


 カズマは「うん、ダクネスからのプレゼント、すごくありがたいよ。ただ、もう少し軽かったらなぁ。」と返しつつ、何とか立ち上がろうと努力していた。


 このやりとりは、ギルド内で小さな笑いと温かい雰囲気を生んでおり、クリスマスの準備の中での一コマとして、みんなの記憶に残ることになった。


 カズマが重たい鎧に身動き一つ取れない状態で困っていると、ダクネスの目には興奮の光が宿った。彼女はカズマの無力な姿にドキドキしながら、さらに彼をからかうことを思いついた。


「カズマ、これであなたも私のようなクルセイダーの苦労が理解できるでしょう?」ダクネスが近づきながら言った。彼女の声にはわずかな期待が混じっていて、カズマの反応を楽しみにしている様子だった。


 カズマは鎧の重さでほとんど動けず、「うん、確かにこれは大変だね。でも、ちょっと重すぎるよ、ダクネス。助けてくれる?」と半ば冗談めかして助けを求めた。


 しかし、ダクネスはその様子にさらに心を躍らせ、「ああ、でもこの状況、ちょっと楽しいかもしれないわ。カズマがこんなにも頼りないなんて、珍しいものね。」彼女は少し考えた後、さらに「もう少し、この重さに耐えてみたい? 私がもう少し鎧を固めてあげるわよ。」と提案した。


 カズマはその提案に少し焦った表情を見せ、「いや、それは勘弁してくれ。もう充分重たいから。」と即座に返答。彼の声には真剣な拒否の意志が含まれていた。


 このやりとりを聞いていた周囲のギルドメンバーは、ダクネスのドMな性格とカズマの困った様子に笑いを隠せず、さらにクリスマスの楽しい雰囲気が高まった。


 そんな中、クリスが静かに近づき、事態を察して、「ここで私が介入するね。カズマ、ちょっと待ってて。」と言いながら、彼女の軽量化魔法を準備し始めた。クリスの魔法はすぐに効果を発揮し、カズマの鎧が驚くほど軽くなっていった。


 カズマは感謝の気持ちを込めて、「ありがとう、クリス。本当に助かったよ。」と笑顔で言った。ダクネスも彼が楽に動けるようになったのを見て、少し残念そうながらもほっとした表情を浮かべた。


 クリスが魔法を使い、カズマの重い鎧を軽くした瞬間、ギルド全体から安堵のため息が漏れた。カズマはすぐに体を軽く感じ、大きく深呼吸をした後、自由に動けることに感謝の言葉を述べた。


「クリス、本当にありがとう。もう動ける!これならクリスマスパーティーを楽しめるね。」カズマが笑顔で言い、クリスに向かって頭を下げた。


 クリスは微笑んで、「大丈夫、カズマ。みんなが楽しめるように手伝うのが私の役目だから。」と答えた。彼女の言葉にはいつもの優しさが含まれており、ギルドのメンバーたちは彼女の存在に感謝していた。


 ダクネスは少し肩を落としながらも、カズマが楽になったことを喜んでいた。「カズマ、本当にごめんなさい。あんなに重い鎧を着せてしまって。でも、クリスのおかげで解決して、本当に良かったわ。」


 カズマはダクネスに向かってニコリと笑い、「大丈夫だよ、ダクネス。君の気持ちは嬉しかったからね。それに、今はすっかり軽くなったし、問題ないよ。」と応えた。


 この一件が解決すると、ギルドの雰囲気はさらに和やかになり、クリスマスの準備を進める活動が再び活発化した。メンバーたちは飾り付けをしたり、料理の準備をしたりして、お互いに協力しながらパーティーの準備を楽しんでいた。


 アクアもこの和気藹々とした雰囲気を楽しみながら、「皆、クリスマスパーティーが楽しみね! クリスマスにはみんなで美味しいご飯を食べて、素敵な時間を過ごしましょう!」と元気よく宣言した。


 クリスの行動は、ギルドの中で彼女の役割がいかに重要であるかを改めて示すものであり、彼女の周りの人々からの信頼と尊敬を確固たるものにした。この日、クリスマスパーティーへの期待は高まるばかりで、ギルド全体が一層の絆で結ばれていた。

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