第三章 夏祭り、花火の轟音

第47話 日常の日常

 ほとんど、海にいた記憶がなかったが、海から帰ってきた。

 その翌日、何ら変わりない日常……ではないな。夏休みだしな。

 そんなどうでもいいことを考えながら、俺はいつもやっているソーシャルゲームを立ち上げる。

 開発会社のロゴが現れ、ソーシャルゲームのタイトルコールがなされる。

 画面をタップし、ホーム画面を映し出す。溜まっていた石を使い、ガチャを回す。

 五回ほど回し、すべてが爆死で、俺の石がぁぁぁぁ……。などと思いながらも、諦めをつけたあたりで、デイリーミッションをクリアしていく。


 雀の涙ほどの石を入手するも気休めにもならない。

 まあ、完凸とかするし。雑魚も重要だし。などと、自分に言い訳を重ねていくがうまくいかない。

 うまくいかないどころか、すべて裏目に出て、否定的にすらなっていく。


 三度目の正直という心持ちで、ガチャを回すも見事爆死。二度とやらね―こんなクソゲー。などと思いながら、怒りとともにタブを閉じる。


 まだ朝と言っても過言ではない時間帯。もうすこしソーシャルゲームで時間を潰すつもりだったのだが、爆死により全然プレイできていない。そもそも、デイリーミッションを終えた時点でもういいかという心持ちになってしまったのも原因だ。


 俺は手持ち無沙汰になり、Lineを開く。

 友達は沙奈だけである。……もちろん、Lineの話だ。現実の話ではない。断じて。

 メッセージが表示される。よくよく見てみれば、全然連絡取り合ってねえのな。などと思いながら、Lineを閉じる。


 俺はスマホをスリープ状態にし、横に積まれている―――いわゆる積読、約二十冊の中間あたりの物を手に取り、読み進めていく。


 タイトルが面白そうだったので、手に取った作品だが、そこまで面白くない。

 中盤あたりで飽きて、読み進めるのを辞めた。

「あー、微妙」

 そう呟いて、俺は気分転換にでも、と。家を出る。閑静な住宅街を歩いていく。

 そのまま、歩いていくと大通りに出る。

 先程の閑静さは全く姿を見せず、車のモーター駆動音が、ギュンギュン言っている。


 散歩にも飽き、住宅街に戻ろうとする。

 すると、ふと掲示板に目を落とす。なんとなくだが、気になったのだ。

 すると、そこには夏祭り、開催のお知らせなどとと、堅い文字で書かれている張り紙が目に映る。


 なんでも、隣の市で大きな夏祭りがあるらしい。

 俺は、やはり散歩はしてみるべきだな。そう思った。やっぱり散歩だ。

 散歩しか勝たん。俺、散歩と友だちになろうかなと思ったが、やっぱり散歩はつかれるので絶交することにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る